第103話 邪精霊の合成魔獣
精霊の森の最奥へと辿りついたアイリス達はそこでソレイユを発見する。説得を試みるが彼女の心は固く閉じたままだった。更にソレイユの想いに『刻印』が暴走し、周囲の精霊達を邪精霊へと変化させ取り込んだことで『邪精霊の合成魔獣』が生まれてしまう。
「邪精霊が合成魔獣になるなんて……刻印の力がどんどん強くなってる気がする」
「ぴぃ、ぴぴぃ!」
「確かに、カセドケプルで見たものよりヤバそうなのはわかるな……!」
アイリスは光の羽弓を左手に、ジークは聖剣マーナガルムを右手にそれぞれ構え、戦う準備をしている。
「ソレイユを探さなきゃいけないのに、こんな奴に時間をとられてられないわよ!」
ディーナもやる気十分のようだ。
「オオオオオ!!」
大きな巨躯と腕を持つエレメンタル・キマイラがアイリス達を敵と認識したようで叫び声をあげながら突進してくる。
「キッド、お願い!」
「わかりました!」
アイリスの合図でキッドが一番先頭に出て大盾ヴァリアントを構える。合成魔獣から右腕を大きく振りかぶる攻撃が繰り出される。
「ウゴオオオ!」
―ガキィィィン!―
「んぐぅ!!!」
小さい身体から溢れる力を大盾に思い切り込める。以前のオーガ・キマイラよりは力は低いようで何とか受け止め切れた。だが、弾き返すほどの余力はない。
「すいませんっ! 受け止めるだけで精一杯です!! お願いします、兄貴!」
「十分だ、キッド! オレが行く!」
キッドの肩を借りて後方からジークが飛び出す。エレメンタル・キマイラも邪精霊と同様、直接攻撃が効かないと踏み、最初から『祝福』の力を発現させた氷の剣で臨む。
「『氷狼咬斬』!!」
―ギィィィィン!―
首にあたる部分を氷の剣で切りつけるが、弾かれる感覚をジークは覚えた。
「なんだ、今の感触……?」
「ジーク、あれを見て!」
アイリスが、今さっきジークが攻撃を当てた部分を指さす。その部分には赤・水、緑、黄の淀んだ色が集まっていた。
「なんだよ、あれ!」
「多分、アイツは4つの属性の力を身体の中に取り込んでる。それをあの透明な身体のどこにでも持ってこれるのよ。言うなれば『障壁』ってところかしら……っ」
「それでオレの氷の力を弱めたってことか……ただでさえ直接攻撃が効かないっていうのに厄介だぜ」
剣を構え直しながら、ジークを愚痴のように言葉を吐く。
「なら、魔法の同時攻撃行ってみましょうか!」
「わかったわ、タイミング合わせてよねキッド」
「合点承知です!」
今度はキッドとディーナが魔法による攻撃を試みる。
「アングリーロック!」
「ウィンドシーカー!」
地、風属性の魔法を詠唱しエレメンタル・キマイラに放つ。するとキッドの大岩がぶつかる場所に黄色の障壁が、ディーナの放った風の刃が当たる場所には緑色の障壁がそれぞれ透明な身体を移動してくる。
―シュウゥゥゥゥン―
障壁によってそれぞれの魔法の威力が下がったようで、エレメンタル・キマイラにはあまりダメージを与えられていないようだった。
「魔法の攻撃にも反応するなんて、嫌らしいわねっ」
「効果あんまりないみたいですね」
ディーナは悔しそうな表情を浮かべ、キッドは目を細めながら口を開く。だがジークが何か思いついたように声をあげる。
「待てよ……! 確かに障壁によって属性の力は弱まるのはわかったけど……こっちにはアイリスの『神聖魔法』があるんだぜ!」
「確かに、聖女の神聖魔法なら障壁の効果を打ち消せるかも!」
「お嬢、やっちゃってください!」
三人の期待の眼差しがアイリスに向けられる。
「うん、やってみる!」
「ぴぃぴぃ」
左手に光の羽弓を構え、右手の花の紋章の光を矢として射る態勢をアイリスが取る。
「ウゴオオオ!」
後は右手を放せば目標に直撃するのだが、突然エレメンタル・キマイラの身体の表面から何かが浮き上がってきたのだった。
「あれって……!」
「何!?」
「はわわ……!」
「ソレイユ!?」
アイリス達はその光景を見て、驚きの声をあげる。それもそのはず。浮き上がってきたのは両手を縛りつけられたような状態のソレイユだったのだ。
「……」
ぐったりとして俯いているソレイユにはこちらの声は届いていないようだ。だが、このまま光の矢を射れば確実に彼女に当たってしまう。
「アイリス!」
「! わかってる!」
ジークの声を受けて、アイリスが光の羽弓を射る態勢を崩す。するとソレイユはエレメンタル・キマイラの中に溶け込むように消えていく。
「まさか、アイツの中にソレイユさんが取り込まれてたなんて……!」
「効果のあるアイリスの攻撃の時にソレイユを盾にする気かよ!?」
「ソレイユ……!」
キッド、ジーク、ディーナがそれぞれ険しそうな表情を浮かべる。
「そんな……一体どうすればいいの……っ」
不測の事態にアイリスの顔には暗い影が落ちるのだった。
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