第102話 暴走する想いと呪い
精霊の森を進むアイリス達の前に魔物化した『邪精霊』達が立ちふさがる。だが、ディーナの並外れた魔法力によって道を切り開いていくのだった。
「このまま一気に森の奥まで進むわ! みんなついて来て!」
綺麗なピンク色の羽を羽ばたかせて進路を妨害しようとする邪精霊の一団にディーナが切り込んでいく。攻撃を避けながらの詠唱が始まる。
「水よ、激しい流れの塊となれ! ウォータープレス!」
凝縮された水の塊が邪精霊の頭上から一気に地面へと押しつぶす。残った数体に向けて再度ディーナが魔法を詠唱する。
「大地よ、硬き拳のごとき一撃を放て! ロックブラスト!」
突き出されたディーナの両手の前方に黄色の魔法陣が出現し、そこから勢いよく回転して威力が増した無数の岩が放たれる。巻き込まれた邪精霊達が大きく吹き飛ばされて消滅していく。
「ディーナ、すごいね!」
「ぴぃ!」
ディーナの後に続いて駆けているアイリスが声をあげる。肩に乗っているピィもとても喜んでいるように見えた。
「本当だな! まさか全属性の魔法を使えるなんて、さすが元詩姫」
「魔法の力もすごいですね! これなら一気に森の奥へ行けそうです!」
後ろに続くジークやキッド達も感心の声をあげる。ディーナの活躍によって三人の力の温存にもなっているのだ。
「そろそろ森の最奥よ!」
アイリス達は林を抜けると森の最奥に辿りついた。そこには黒いモヤが空に向かって立ち上り、中心にはソレイユの姿があった。
「ソレイユ!」
「……ディーナ、どうして追いかけてくるの? どうして私を放っておいてくれないの?」
「あなたのことを助けたいからに決まってるじゃない!」
ソレイユの瞳からは光が消えている。更に胸に刻まれた印からは火花のようなものが出ていた。
「ソレイユの胸の『刻印』、コンサート会場で見た時より大きくなってるっ」
「だんだん広がってるのか!?」
「嫌な感じもしますね」
「アイリス、あなたの聖女の力で何とかならない?!」
宙に浮いているディーナがアイリスに尋ねる。
「触れて力を注げれば、もしかしたら何とか出来るかもしれない」
「なら、早いところ近づいてお嬢にやってもらいましょ!」
「そうだな、アイリス頼むぜ!」
「うん、わかった!」
皆、ソレイユの胸の『刻印』にアイリスの力を注ぐという案に賛成する。近づこうとするアイリス達にソレイユが反応する。
「……私は詩姫でいたいの……邪魔しないで……っ」
ソレイユの感情に反応して身体の周りから黒いモヤが吹き荒む。ディーナが語り掛ける。
「ソレイユ、『刻印』の力に呑み込まれちゃだめよ!」
「私にはこれがないとディーナみたいな詩姫にはなれないの……」
「精霊を無理やり従わせるなんて駄目なのよ! 精霊と私達は仲良く、共生していかなくちゃいけないんだもの」
「……ディーナにはわからないのよ。精霊に愛されていたあなたには私の気持ちはわからない……ううん、わかるわけない……!」
ソレイユの心の動きに合わせて、刻印から出ている火花が大きくなっていく。そして刻印も身体の至る所に根のように広がり始めた。黒いモヤの量も吹き荒む風も激しくなっていく。
「ソレイユ、駄目よ!」
「ディーナ、あんまり近づいたらあぶないわ!」
「でも、ソレイユが!」
それ以上近づこうとするディーナをアイリスが呼び止める。
「あれ、見てください! 精霊達が!」
「一体何が起きてるんだ!?」
キッドが指さした先には沢山の精霊達が黒いモヤの中に導かれるように入っていく。黒いモヤは雷のような光を出しながら膨れ上がっていく。もう中心にいるソレイユの姿は見えなくなっていた。
「呪いが暴走してる……?」
「ソレイユ!」
―キィィィィン―
黒いモヤの中心から金属音のようなものが響く。たまらずアイリス達は耳を塞ぐ。同時に黒いモヤが晴れていく。
「あれ、何ですか!?」
「何だ、あのでかいのは!」
キッドとジークが口を開く。
「オオオオオ!」
中から現れたのは通常の魔物化した『邪精霊』の何倍も大きな身体を持つ大型の魔物だった。今までは存在する何かの魔物の形を模していたが今回は固有の見た目をしていない。透明な身体に取り込んだ精霊の属性である火、水、風、地のそれぞれの色がまざったような見た目をしている。
「まさか合成魔獣……!?」
「精霊達が取り込まれたってことか?!」
「それってつまり、『邪精霊の合成魔獣』ってことですか?!」
カセドケプルで戦った『合成魔獣』と条件などが類似していることをアイリス達は気が付く。
「ソレイユ? どこにいっちゃったの!?」
先程までソレイユがいた場所には『邪精霊の合成魔獣』が佇んでいたのだった。
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