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第101話 ディーナの実力

 ディーナからソレイユとの昔話を聞いたアイリス達は目的地である精霊の森の入り口へと辿りつく。一行は精霊の森へ足を踏み入れるのだった。


「みんな、迷子にならないでね。道案内はあたしがしてあげる」

「助かるわ、ディーナ」

「ぴぃぴ」


 先頭はディーナとアイリス、その後ろをジークとキッドが武器を構えながら進んでいる。周りを見渡しても普段森の中を飛び回っている精霊達の姿は見えない。


「もっと森の奥に行くにはこの先の道を通れば、近道よ」

「よっし、さっさと進んじゃおうぜ」

「善は急げですね!」


 森の中を進んでいくと、一旦開けた場所に出る。するとそこには魔物化した沢山の『邪精霊』達の姿があった。


「やっぱ簡単には通してくれないかっ!」

「結構いますね……!」

「私達を森の奥に行かせないようにも見えるね」


 それぞれ元の精霊は違うが、ロックバード、ハウンドウルフ、ゴーレム、チャージボア、ハウリングバットと多くの邪精霊がアイリス達を迎え撃つように佇んでいる。ジークとキッドはそれぞれの武器を抜き、アイリスも後方から狙撃できるように光の羽弓を左手に構える。


「それぞれ属性もバラバラね」


 こちらを威嚇している邪精霊達を一通りアイリスが観察する。赤、青、緑、黄色と元の精霊の属性もバラバラで被っている属性の邪精霊もいる。簡単に片づけるのは難しいとすぐ判断出来た。


「オレは『祝福』の力を使わないと攻撃が通らないからな……本当はもう少し温存しておきたい所なんだけど」


「お嬢の力も温存してもらいたいですけど、この中では一番効果ありますからボクが防御に徹してお嬢にトドメをお任せするのがいいですかね?」


「うん、それでも大丈夫よ。ジークも今は防御に徹してくれれば私が射るわ」


 向かってくる邪精霊達を気にしながら各々の意見を照らし合わせての迎撃の布陣が相談されていた。


「アイリスだけに任せるのもしゃくだけど……今はそれしかないかっ」


 少し厳しい顔色でジークが呟く。両耳もピンと立っていて余裕がないのが伺える。尻尾も逆立っている。すると、大きな声があがる。


「ちょっと待ちなさいよ!」


「ディーナ?」

「なんだ?」

「ほえ?」


 突然のディーナの大きな声にアイリス達の口から変な声がでる。


「あなた達が戦い慣れてるのはよーくわかったわ。でも、あたしがその中に入ってないのは頂けないわね」


 むすっとした表情を浮かべながらディーナが腰のあたりに手を当てている。


「お前、戦えるのか?」

「失礼しちゃうわ。詩姫の力がないからって戦力にも入れてもらえないなんて」

「一緒に戦ってくれるんですか?」


 ジークが目を細めながら若干心配そうに尋ねる。キッドは目をキラキラさせながらディーナのことを見ていた。


「もちろんよ。あたしだって戦えるわ」

「ありがとう、ディーナ」

「いいのよ、アイリス。みんなあたし達のためにここまで来てくれてるのに一人だけ見てるなんて、あたしは嫌だしね」


―グウウウウウ!―


 いよいよ、それぞれの間合いまで邪精霊達が近づき声をあげはじめる。


「ここはあたしが何とかするわ!」

「一人で大丈夫なの?」

「まあ、皆見てなさい。あたしの実力ってやつをね!」


 ディーナの背中に畳まれていた髪の色と同じピンク色の羽がぱっと広がり、羽ばたきを見せる。小さめなディーナの身体がふっと宙に浮かぶ。


「いくわよ!」


 まるで鈴の音のような羽音を響かせながらディーナが邪精霊達の元に一直線に向かっていく。最初に向かってきたのは機動力があるロックバードとハウンドウルフ、ハウリングバットだった。


「グエエエエ!」

「グルゥゥゥ!」

「キュルルル!」


 それぞれがくちばしと牙を向いた口、羽から起こす衝撃波でディーナに飛び掛かるが、その攻撃をすれ違いざまにひらりと避け背後をとると彼女は詠唱を始める。


「吹き荒む風よ、今幾重にも重なりて一陣の刃となれ! ウィンドシーカー!」


 両手から風の刃が横一文字に繰り出され、背後をとられたロックバードとハウンドウルフ、ハウリングバットの身体を両断する。


『ギャアアアア!』


 その様子を見ていたジーク達も賞賛の声をあげていた。


「三体まとめて倒すなんて、すごい魔法力だな!」

「すごいですね、ディーナさん!」

「戦っているディーナ、とても綺麗だねピィちゃん」

「ぴぃぴぃ!」


 残るは後から突進してくるチャージボアとゴーレムの二体になった。チャージボアの突進をかわし、続くゴーレムの投げた巨石も羽を羽ばたかせた急加速で回避してみせる。そして二体の頭上に位置取ると同時に詠唱を始める。


「火よ、連なりて悪しき者を払う炎となれ! バーニングフレア!」


 ディーナの両手に出現した火の玉を自分の胸の前で合わせると燃え盛る炎の塊に変化する。それをチャージボア、ゴーレムに向けて撃ち出す。頭上からの攻撃を避けることが出来なかった二体を燃え盛る炎が焼き尽くした。


『グオオオオ!』


 ディーナの魔法を受けた邪精霊達が消えていく。それを見て彼女は消えていく邪精霊達に近づき呟く。


「ごめんね。また精霊として生まれてきたらお話しましょうね」


 魔法の威力にも目を見張るものがあるが、それよりも元は無害な精霊達だったことを忘れないディーナの一言がアイリス達にはとても印象的だった。彼女の表情は悲しげでいて、また慈しみに満ちているように見えたのだった。

数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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