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第8話 巡礼の旅

「巡礼の旅ってどんなものなんだろうね」

「どこかを巡るってことじゃないのか?」

「試練の話もあったもんね」


 アーニャの話を聞いて、アイリス達が小声で会話をする。

 その様子をアーニャが笑みを浮かべながら見ていた。


「巡礼の旅とな。それと先ほど話に出た聖女と聖騎士への試練、どのように繋がるのだ?」


 王もアーニャのいう『試練』と『巡礼の旅』という言葉の繋がりがいまいち、見えてきていない様子だった。


「アイリスとジークにはまず、この王都ロークテルから旅立ってもらいスペルビア王国と氏族連合フライハイトの中間地点である城塞都市カセドケプルを目指してもらいます」


 城塞都市カセドケプルとは北と南に大きな山脈地帯が広がる場所に位置しており、60年前の『人魔戦争』以降、人間族と魔族の領土の境として建造された都市である。


「そしてそこから5つの氏族の領域を巡り、試練を受けてもらいます」


 アーニャの話に出てきた『氏族の領域』について宰相のトーラスが補足する。

 氏族の領域とはフライハイトをそれぞれの氏族が管理する領域に細分化したものである。


「氏族の領域とは『妖精の都ティフィクス』、『狼の庭ウルフォード』、『獅子の砦ヴィクトリオン』、『魔の谷シルヴァナイン』、『竜の聖域ドラゴマルク』の5つですね」


 ウルフォードの言葉が出てきた時にジークがバツの悪そうな表情になったのは言うまでもない。ジークの生まれ故郷だからだ。


「しかし、その試練だけでアルカディアの民全てが彼女達を認めるかというと……」

「なかなか、難しい話ではないのですか?」


 大臣のビルゴ、エアリーズが納得するためにはまだ足りない様子だった。

 アーニャはそれも承知のようで更に話を続ける。


「巡礼の旅の最終目的地は『最果ての丘』です」


 その言葉が出た途端、ビルゴとエアリーズの顔色が変わる。

 同じように王もその隣にいた宰相、アイリス達の近くにいたプルート神官長も同様の反応を示した。


「最果ての丘……?」


 アイリスはどこかで聞いたような気はしたが、思い出せなかった。

 ジークは心当たりがあるようだ。


 王はアーニャの提案の検討がついたようで、軽く笑みを浮かべた。


「なるほどな」


 アーニャが続けて話し出した。


「はい、陛下。アイリスとジークに課す巡礼の旅とは5つの氏族の試練を超え、最果ての丘にある『アルカディアの水鏡』を手に入れてもらうというものです」


 大臣達がまた騒めく。

 ガーライルだけは微動だにせずアーニャ達のことを見守っていた。

 宰相は把握できていないアイリスの為に補足の説明をする。


「最果ての丘とはフライハイトの最奥、このアルカディアの大陸の一番果てにあると言われる聖地です」


 アイリスは昔読んだ聖女と聖騎士の本の中にその言葉があったことを思い出す。

 その後の説明は王がしてくれた。


「アルカディアの水鏡とは、歴代の聖女に継承されているといわれる秘宝のことだ」


 王はアーニャの顔を見る。するとアーニャが口を開いた。


「60年前の戦争が終息した際に私が最果ての丘へアルカディアの水鏡を祀ってまいりました。試練を越えた証を5つ集めた聖女だけが最果ての丘に立ち入ることが出来るのです。それがこの『巡礼の旅』の目的です」


「なるほど。先代聖女の課した試練を越え、最果ての丘に辿り着き、アルカディアの水鏡を持って凱旋をする……これほどにアルカディアの民の信用を得るものはないというわけだな」


「はい、その通りです陛下」


 そこまで言われると先ほどまで苦言を漏らしていた大臣達もこれ以上は何も言えない様子だった。


「皆、納得したようだな」


 ならば、と王が右手を掲げ、口を開いた。


「先代聖女アーニャの提案をスペルビア王国、国王クラージュが認める!」



数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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