人類凋落記念日
おはこんばんにちは、ふたる と申します。
つい我慢できず本作を投稿してしまいました。
書き溜めも何もなく、更新も不定期になる想定です。
作者が頭の中で妄想を繰り広げている作品の前日譚、、、に至るまでの序文みたいな物語になります。
人類がヒマラヤ山脈以東に追い込まれるまでの戦いを思いつきベースで書いていきたいと考えております。
(前書きは何も考えずに書いています)
2035年5月、地上の支配者だった人類の凋落が始まった。
◆◆◆◆◆◆
場所はアメリカ合衆国カリフォルニア州サンノゼの西にある山間の一角、時は2035年5月24日(木)の明朝。
それは、善良な市民にとってはいつもと変わらない日常の中で突如として発生した。
最初はか細い光の柱が山間から空へと伸びていた。あまりにもか細すぎて気づくものはほとんどおらず、気づいたとしてなにかの見間違いだろうと気にもとめないほどのもの。
次第に光の柱の太さは増して行き、輝きも強くなってくる。次第に気づくものも増え、カメラを構える者、警察へ電話するものも出てきた。
それは静かにゆっくりと、しかして確かな速度を持って広がっていきサンノゼの街をも飲み込んだ。
圧倒的な光量と大きさを持った光の柱は北米大陸の東海岸からも見えるほどであり、アメリカという国を混乱へと落とすには十分であった。
光の柱がサンノゼを飲み込み10分もたった頃であろうか。カリフォルニア州軍が動き出し始めたその只中だった。
光の柱は発生と同様に突如として消え去った。消えた場所にあったのは光に呑まれる前と然程変わらない街の風景と戸惑う人々、そして……
その日、その時、街の住民達が、いや遠く離れた者たちですら、光の柱が発生した山脈にそれらを見た。
――― 其れは大蛇。その身を幾重に折り重ねてもなお山脈を覆うほどの大蛇
――― 其れは巨人。頭は雲を突き抜け霞み純白の体躯を誇る巨人
――― 其れは要塞。巨人のはるか頭上に浮かび尚も空の一角を占めるほどの要塞
人智の及ばない威容を誇る3体はそれぞれが動き始めた。
大蛇は身をくねらせ西に進み、太平洋へと潜っていった。
要塞は徐々に色が変わっていき、空に溶け込み消えた。
そして巨人は東へと、街に向かって歩を進めた。
◆◆◆◆◆◆
巨人が街に迫る。ただただ見ているだけだった市民たちはパニックになり走り出した。
ただただ街の外へ逃げるもの、自宅に帰るもの、警察署へ駆け込むもの。それぞれがそれぞれの思いを胸に駆け出し、それは無秩序となり、阿鼻叫喚の地獄絵図を描いた。
巨人の歩みはその巨体の割には静かなものであった。本来であれば一歩を踏みしめるごとに隕石の墜落ほどの轟音と振動を撒き散らすであろうに、実際には振動は無く、青銅の鐘を打ち鳴らすがごとき重低音が静かに響くのみであった。
一歩一歩はゆっくりで、スローモーション映像を見ているかの様であった。しかしその巨体が踏み出す一歩は遥かに大きく、街から十数キロはあった距離を1時間も掛けること無く踏破したのであった。
あと幾ばくもせずに巨人が街に足を踏み入れるかと思われた時、巨人をいくつもの爆炎が包み込む。サンノゼの北西90kmほどにあるトラビスから来た戦闘機4台、それらが放ったミサイルであった。
煙に包まれる巨人を切り裂くがごとく空を翔け抜ける姿が民衆を勇気づける。
――― 助けが来た。
――― これでもう安心だ。
間に合った助けに安堵の気配が満ちていき、混乱が徐々に落ち着いき……
――― 鐘の音が響き渡る。
煙を突き破り巨人が現れる。その姿は先ほどと寸分たがわぬ威容を誇り、煤汚れすらも見受けられなかった。
◆◆◆◆◆◆
戦車砲がその身に突き立つ。
重機関砲が織りなす光の帯がその身をなぞる。
ミサイルの爆炎がその身を包む。
その全てを意に介さず巨人は歩みをすすめる。ただただ東に、歩みを緩めること無く。あらゆる攻撃を意に介すこと無く。
歩みを進め、サンノゼの中心街に足を踏み入れた時、巨人は歩みを止めた。
ただ右手を天にかざす。その右手に光が集い、巨人の握りこぶしほどの光球となる。
光球が弾けて無数の光の粒が巨人の周囲に降り注ぐ。光の粒が地面に触れたその瞬間、光の粒は膨れ上がり形を変貌させて行く。
あるものは醜悪な鬼に、あるものは翼を広げた竜に、あるものは巨躯を誇る四足の獣に。それらは理性無く目につくものに襲いかかった。
それは分け隔てなく平等に、放置された車に、オフィスビルに、街路樹に、同じ光より生まれたモノに、そして逃げ惑う人々に。
――― 地獄が此処に顕現した。
巨人はただただ佇んでいた。
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再び巨人がその手を、今度は両の手を天にかざす。その手にあらゆる火線が集中する。右手をかざしただけでこの惨状、それが両手ともなればどれほどの悲劇が起こされるか考えるだけで恐ろしい。そんな思いが溢れ出したかのように火線の厚みは増し、その腕を落とさんと集中する。
しかしその努力を意に介すことなく、そのかざした両手に光が集う。その量たるや先のそれを遥かに上回り、遥か上空にあるにも関わらずサンノゼの空を覆い尽くしていた。
光球が弾ける。先とは違い光の粒とはならず、今度は光の膜となり空へと広がっていく。その膜は薄っすらと光りを帯び、アメリカをユーラシアを世界のすべての飲み込んだ。
やがて膜から光の粒が舞い降りる。すべての大地を包み込む光の膜から、雪が降るように。
その光景を実際に目にした者は不幸である。人類社会が地獄へと飲み込まれる様を目の当たりにしたのだから。
その光景を実際に目にしなかった者は不幸である。突然の悲劇に巻き込まれ、なんの抵抗もできずに命を散らしていったのだから。
しかして、この時を生き残った者たちが幸運かというと・・・
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これは人類が一縷の光を掴むまでの、凋落の物語である。
お読みいただきありがとうございます。
本当はむくつけき男たちがウィットに富んだ小粋なジョークを喋りつつ生き残りをかけた戦いに挑むような場面や、健気な少年少女達が仲間のためにその生命を燃やしていく話が書きたいのですが最初の場面では人間なんて床に溜まった塵みたいな状況になってしまったのでクローズアップできませんでした。
これからはもっと人間を軸に書いていければと思っています。
作者はファフナーやゆゆゆ等が好きです