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頑張るアカネ

リアルが忙しくなってきて投稿遅れました。申し訳ありません。

プロットだけは進んでいるので、完結させるまでは失踪はしません。そこは安心してください。

 洞窟へ着くと、初めのダンジョンなだけあって大勢のプレイヤーで賑わっている。その中には2人のような初期装備のプレイヤーもいるが、それもかなりの少数だ。いたとしても間違ってきただけで、ここを探索しようと思っている人はいない。この洞窟の推奨レベルは36だ。初心者が来ても勝てるわけがない。そんななか初期装備で洞窟へ向かっていくものだから、憐みの目線を多少向けられることになった。


「本当に洞窟で戦うの? 確かにユイのレベル的には適正ぐらいだろうけど」

「大丈夫だってー いつもここで戦ってるんだから! ユイ様に任せるといい!」


 ゲームでアカネに勝てることが無かったユイは、アカネにマウントをとれてご満悦である。


「任せるしかないんだよな~ 私のレベル3だし。それよりも周りの視線が気になって仕方がないよ……」


 そりゃ、初期装備で初期武器のあからさまな初心者2人がダンジョンへ嬉々として向かっていくというのだから、無知による悲劇がこれから起こると考えるのが普通だからだ。

 しかし、この視線にさらされつつもここで狩りを続けてきたユイはその程度で動じることはなかった。ダンジョンのことを知っているアカネは、視線を向けたくなる気持ちもわかるが、出来れば放っておいてほしいと思っていた。


「そこのお2人さん。この洞窟に行くのはやめといたほうがいい。ここは初心者が来るような場所ではないからね」


 放っておいてはくれなかったようだ。ユイは突然後ろから声を掛けられててんぱってしまっている。アカネが声をかけてきた男の人に溜息を吐きつつ答える。


「何でしょう? 私たちに何の用でしょうか? ナンパならお断りですよ。あと、ゲームではやらないほうがいいですよ」

「あー… いや、すまない。そういうつもりで声をかけたわけではないんだ。ただ、初期装備で洞窟に挑むのは危険だからね。一応伝えたほうが良いかと思ってね。レベルの合わないダンジョンに行って理不尽さを感じてこのゲームから離れてしまうのはもったいないからね」


 アカネの後ろで落ち着きを取り戻したユイはこっそりとアカネの耳元で言う。


「この人ただ親切な人みたいだよ?」

「そうみたいね」


「変な疑いをしてしまってごめんなさい! あと、心配してくれてありがとうございます! でも大丈夫です。この子、こう見えてもレベル高いので!」

「そうだったのか。いらない心配だったみたいだね。こちらこそごめんね。でも、防具ぐらいは揃えたほうがいいと思うよ」


 男の人は最後に、呼び止めてしまって申し訳ないっというと、洞窟へと入っていった。

 ユイはアカネの横に並ぶと言った。


「やっぱり防具は買ったほうがいいのかな……?」


 ユイは、変態のように変わったトレードマークを持ちたいなら別だがなっという言葉が気になってしまっていた。


「ユイの好きにプレイすればいいと思うけどね。でも、なんでまだ初期の防具なのかは私も気になるところかな~」


 それほどレベ上げできてるならドロップ品なり探索で集まった品を換金すればそこそこの金額は手に入る。なんならドロップ品で防具が出ることだって珍しいことじゃない。それゆえに防具が全て初期装備ということは、故意にやらなければほぼあり得ないのだ。


「それは私の戦い方を見てからのお楽しみ!」


 ユイはニッコニコの笑顔で先に歩いて行ってしまった。今のユイはアカネをとびっきり驚かせられると思ってうっきうきだった。


「こんなに楽しんでいるなんて、このゲームに誘ってよかったかもね!」


 気が付けば周りからの視線は可愛い動物を見ているかのようなものに変わっていた。かわいい女の子のプレイヤーが、ゲームに理不尽さを感じてしまうという心配がなくなってしまえば、残る感情は尊い・見守っていたいという感情だけだった。



 ○



「アカネちゃんみててー! 私の戦い方を見せてあげるよ!」


 洞窟へと意気揚々と入っていったユイは、早速大きなネズミと対峙していた。いつも通り斧槍を担ぎ、三点支持の姿勢になってから武器スキルを発動させた。全身に赤黒い靄を纏い、這いつくばるような姿勢でふらふらと、ゆっくりと敵のテリトリーを侵食していくような動きで迫っていく。

 ネズミはこちらに気づくと、その大きな図体相応の牙で噛みつこうとしてくる。

 その攻撃に合わせてユイは勢いよく半身を反らしてから勢いよく振り抜こうと力を込めた。

 ネズミはユイが体を反らしたときに無防備にさらされたお腹に嚙みついた。しかしその瞬間にはネズミの背中には斧槍が刺さって塵となっていた。

 ユイはお腹を嚙みちぎられ抉れてしまっていたが、瞬く間に再生されていった。


「どう!」


 少し離れた場所から見ていたアカネに呼びかける。


「どう………か……」


 街で後回しにすることにした意味不明さが再びアカネの思考を蹂躙した。何故赤黒い靄を纏っているのか。何故そんなにもホラーチックな有り様なのか。何故大きなネズミ相手に微動だにしないほどの度胸があるのか。何故ダンジョンの敵を一撃で倒せるのか。なぜなぜなぜ……むしろ街で聞いた時よりも疑問がより多く、より深くなっていた。

 戦いが終わって武器スキルを解除したユイは、満面の笑みでゆらゆらと揺れていた。アカネの口から誉め言葉が出てくることを期待ているまなざしだ。こんな状況でなければアカネもユイの頭をわしゃわしゃと撫でまわしやるところだったが、アカネはそんなことを考える余裕もなく、ユイの顔色が戻るまでアカネは頭を抱えることになった。



 ○



「ユイ!」

「ハイ!」


 アカネが全く反応を見せず、ユイの顔から不安の色があらわれてきたところにアカネから急に呼びかけられ、ユイは直立不動になってしまう。


 もしかして何か間違えてた? 街でもアカネちゃん驚いて固まってたし、良くないことでもしちゃったかな……? 私、オンラインゲームのマナーとか分かってないし……


「ユイ…… すごく…… いい!!」

「え?」

「めっちゃカッコいいじゃん! 何その中二心をくすぐる雰囲気! 凄く楽しそう!」


 よくよく考えれば凄くいいことじゃん! 親友が誰も知らないスキルを使いこなしているとかラッキー誰よりも最先端の開拓してんじゃん! 私も負けないように何か凄そうなスキルを手に入れなければ!


「ユイはどうやってそのスキル達を習得したの?」

「ん? 普通に森行って洞窟行っただけだよ? 倒したのもトレントと狼と鼠ぐらいかな?」


 そういえばそうだった。街でも森と洞窟行っただけって言ってた気がする。普通に狩っててそんなスキルが手に入るはずがないし、まず森から洞窟へと行けるはずもない。あれ? 前にもそんなこと考えてた気がする。ユイちゃんはいったい何をしていたんだ……?


「どうやって狩りをしていたか具体的に聞いてみたいな! 私も少し参考にしたいし」

「私を参考に?」


 ゲームのことで参考にしてもらえると分かると、ユイは再び満面の笑みを浮かべた。


「いいだろー 私がアカネちゃんに教えてあげる! ……でも本当に普通に戦ってただけなんだよ? アカネちゃんと前回一緒にプレイした時のスキルポイントを全部『斧槍』に振って、ステータスは全部『力』に振って、それから森で大きなトレントを倒したんだよね。それから……」

「ちょっと待って、大きなトレント?」

「そう。森の木々よりも高めの木のお化けだったね」

「それ多分エルダートレントじゃない? 森のボス敵なんだけど、確か推奨パーティレベルが30だったはず。木の実落としてくる攻撃とかしてこなかった?」

「してこなかったよ? あんまり攻撃パターン見る前に倒しちゃったし、もしかしたらそのエンダートレント?だったのかもしれないね」

「エルダーね。そっかぁーユイの攻撃力ならすぐに倒しちゃうのか。………ん?」


 ここまで情報を共有していてアカネは一つの疑問が思い浮かんだ。ひょっとしてユイちゃんは一人でここまでプレイしてきたのだろうか、と。


「一人でプレイしてきたよ。アカネちゃん以外の人とやるのは少し不安でねー」

「どうやってここまでプレイしてきたのか本当に不思議だわ……ここまで聞いちゃったし、この際細かく聞かせてもらおうかな!」


 それからアカネは2時間たっぷりとユイの日常を聞き出した。だいぶ普段の生活のことや合宿などの話にそれてはいたが、2人とも満足げな表情で話していた。


「ユイのスキルとステータスのシナジーが凄くあったってことは分かった。そのおかげでここまで強くなってるのも理解できた。でもなんで初期装備なの? 今日男の人にも言われたけど、防具ぐらい買ってもいいと思うよ。体力を200以上から一気に致死量のダメージを食らうために防具は揃えないとしても、初期防具と同じ防御力の見た目がいい装備とかもあるし、買い替えればいいのに。ユイも年頃の女の子なんだし、ちゃんとファッションには気を使わないと!」


 2人の会話がひと段落した時、アカネは常日頃気になっていた気持ちがあふれてくる。


 ユイは現実でも必要なものを必要な時にしか買わない性格なんだよな~ この前ユイの部屋にお邪魔したときなんて、これが女子高生の部屋だなんて信じられなかったよ。今時女子高生がシンプルなモダンな内装の部屋に住んでいるなんて! 清潔感があっていいとも言われるかもしれないが、女の子らしい化粧品とか推しのアイテムとかお洒落とかが見当たらないのは流石にどうかと思うよ!

 服装は制服以外ほとんど持ってないんじゃないかって思ってる。結ママからデパートにユイを連れて行ってあげてと言われた時はびっくりしたね。そんな服装に無頓着な結のために私が服を選んであげているのだ。


 アカネはそんなことを考えつつ、自分の部屋もゲームのパッケージやフィギュアや特典であふれかえっているのを思い返して、人のことを言えたもんじゃないと思ったりもしたが、自分のことは棚に上げることにした。


 ……なにを考えてたんだっけ?


「そろそろ狩りを再開する?」

「そうだね、ずっと話し込んでて忘れてたけど、今洞窟の中なんだよねー でも私のレベルだとこの洞窟はきついし、一度帰ろうか」

「まずは森に行く?」

「そうしよっか。よーし、気合入れて狩るぞー!」

「おー!」


 アカネがこぶしを振り上げるのに合わせてユイもこぶしを掲げた。





「あ、鼠」

「え?」


 良い感じに決まったと思っていたアカネは出鼻をくじかれた気分になった。しかし、そもそもダンジョンで2時間も話し込んでいて一度もエンカウントしていないほうが異常だったのだ。

 このゲームが発売されてから少し経ったが、かなりの高評価がされており、多くの有名配信者などもプレイしていることもあってプレイ人口がとんでもなく多い。その関係でモンスターの取り合いが起こりやすいのだ。こうやって話しているだけで積極的に戦おうとしなければモンスターと戦い続けるような状況にはならない。


「ダットラットかー ユイに任せた! さっき見せてくれたようにやっつけちゃって!」


 ユイは一人前へ歩み出るとハルバードを構えた。


「ダットラット? この鼠はダットラットって名前だったんだね。わかった。任せて!」


 ダットラットはユイへと走り近づいてくる。距離2m程まで来ると噛みつき攻撃を繰り出してきた。ユイはいまだに攻撃をしないし、よける気もない。


「え、知らないで戦ってたの?! 名前なんて敵の体力バー見れば分かるのに……」


 とうとうダットラットの牙がユイの柔らかいお腹へと食い込む。

 ユイはやっとハルバードを振り上げると、噛みつくのに必死なダットラットの背中へと勢いよく振り下ろした。


「体力バー?」


 ユイはアカネ会話しつつもダットラットを叩き切った。黒く輝く靄の軌跡が残る。それに紛れて赤色から一気に灰色になった体力バーが見えた。その上にはダットラットという名前が浮かんでいた。


「これかー」

「今まで気が付かなかったの?」

「敵をすぐに倒すか、私がすぐに倒されるかだったから敵の体力とか見たことなかったな」

「そんなことになるのはユイだけだと思うよ……」


 このダットラットというモンスター、実は深手を負わせると距離をとってから逃げ出してしまう仕様がある。なので遠距離攻撃を持っておくか足止め用の何かを持っておくことが普通なのだが、全てを一撃手倒すユイには関係のないことだった。アカネがユイがここを狩場としていると聞いて耳を疑ったのはそういう理由もあったからだ。


「何度見てもこの戦闘風景には慣れそうにないな~」


 ユイは微動だにせずにダットラットに噛みつかれていることから、普段からこの狩り方に慣れていることがわかる。


 ほんと斬新なプレイスタイルだな~ 戦闘風景見れば私も何か特殊なスキルを手に入れるヒントになるかと思ったけど、参考になりそうにないな。唯一分かったことは変なことしてればいいってことぐらいか。私も変人になるしかないのか?!


「それにしても、体力が初期値のおかげでほぼ不死になるなんて、なかなか……凄いね……」


 また今度芹花ちゃんも誘って3人で狩りに行こう。きっと芹花ちゃんもユイちゃんのステータスに驚くに違いない。



 ○



 無事に洞窟から街へと帰ってきた2人は、アイテムを少し買いそろえてから森へと入っていった。


「いや~ 本当に久しぶりに武器を振った気がするよー! やっぱり戦いあってこそのRPGだよね!」


 合宿から帰ってきたのにいまだに一度も剣を鞘から抜くことすらしていなかったアカネは、久々の戦闘を終え、とても満足げに腕を伸ばして伸びをした。


「ところでエルダートレントまだ出てこないのー?」

「多分もう少し深くまで進んだら出てくると思うけど。同じ景色が続いてるから正確には分からないの」

「それは仕方ないねー 私もいくら戦闘が楽しいといっても同じような景色が続いて迷いそうになると不安になるよ。普通初期の村の近くにこんな森のステージを配置するかな?!」


 ユイが一人でエルダートレントを倒したと聞いて、闘争心を搔き立てられたアカネは、私もエルダートレント倒したいと言ってきかず、ユイに道案内をしてもらっていた。その間の戦闘も、アカネが一人で行っている。レベル差のある状態だとお互いに経験値がおいしくないからである。


「あ、居た。あれがエルダートレントだよ!」


 アカネがウルフの胸元を切り裂き、レベル11に上がった。そのタイミングでユイが声を上げた。


「えぇ?! そんなにいきなり出てくるもんなの?! ボス部屋前の準備スペースみたいなのないのかよ!」

「アカネちゃんがんばれー!」


 ユイはアカネの邪魔にならないよう、木の陰に身を隠して応援をしている。


「まだスキルポイントとか割り振ってないんですけど! 流石にムリゲーじゃない?!」


 そうは言いつつもアカネは気合を入れて姿勢を正す。


「エンカウントしてしまったものは仕方ない、気合入れていくとしますか! 負けるのも癪だしね!」


 片手剣についたウルフの血を軽く払うと、エルダートレントへと走り出した。距離はかなりある。ユイは一体どうやってこの距離を詰め寄ったのだろうか。そんな考えが一瞬頭をよぎるが、私は私の戦い方を確立しようと思いその考えを振り払う。


 エルダートレントは距離を詰めようとしてくるアカネにむかって根を鞭のようにして薙ぎ払ってくる。


「そんな攻撃! ジャンプでよければどうってことないよ!」


 アカネのレベルでは一撃当たれば瀕死に追い込まれるであろう攻撃をやすやすとかわしていく。薙ぎ払い、叩くつけ、刺突といった3種の攻撃を織り交ぜてくるが、すべてを見切りよけていく。一度見たモーションはよりギリギリでよけて効率よく間合いを詰めていく。


「よっ! はっ! せいっ!」

「ギギギガガガ!!」


 攻撃が当たらくて焦ったような音をだすエルダートレント。

 エルダートレントとの間合いが3m程まで縮まると、エルダートレントは大きく体を揺らしだした。葉っぱが擦れ、木々のざわめきが辺り一帯に響き渡る。


「ギアアアアアァァァ!!」

「なにごと?!」


 エルダートレントの木の枝に大きな木の実が生成され、それを落としてきた。


「この攻撃か!」


 私がネットで調べているときにネタバレ食らった攻撃だ! 勝手にネタバレ見ただけともいう。せっかく詰めた距離をまた開けるのも嫌だし、どうせまた近寄ればこの攻撃を繰り返してくるに違いない。ならばこのまま攻撃するのみ!

 剣を横に振り払い、エルダートレントの大きな幹を切りつける。


「痛っ!」


 悲鳴が上がる。アカネは頭頂部に思いっきり木の実が落ちてきていた。思わず敵を目の前にして頭を抱えてしまう。

 そこへ太い根っこが迫る。


「ちょっ! くっ……!」


 かろうじて体と根の間に剣を挟み、ダメージを大きく軽減する。しかし距離は最初の状況へとリセットされることになった。


「あっぶないなー…… もう体力が無いよ……」


 視界の端に映る自分の体力はミリ。小指ぶつけたら死にそうな体力だ。


「一回ミスっただけでこのダメージか……鬼畜だね~いいね~燃えるね~!! ゲーマーの血が騒いじゃうよねーー!!」


 アカネは再び距離を縮めるために走る。


「もう一撃だってくらえないなんて、スリリングで楽しいよ!」


 エルダートレントによる多様な根っこの攻撃を先ほどよりも洗礼された動きで捌いていく。今度は一分とかからずに距離を詰めきった。エルダートレントもそれに合わせるように幹を揺らして木の実を生成しだした。その間にアカネはエルダートレントを斬りつける。


「二度目はその隙を許さないよ!」

「ギギギ……」


 しかしあまり効いていないようだ。それもそのはず、レベル差もあるうえにスキルが一つも持っていないとなれば、ダメージがほとんど通らないのは明白である。


「全然聞いてる感じしないじゃん……っと」


 真上を見て落ちてくる木の実を躱す。たまにやってくるアカネを押しのけるような根による攻撃もタイミング合わせて躱す。攻撃の後隙に剣による一撃を与える。


「いつになった倒せるのかね……! 伐採してやろうか?!」


 何分も攻撃を続けているが、いまだに体力は半分以上残っている。


「ほらっ! 流石のボスモンスターでも体を真っ二つにされたらどうしようもないでしょ!」


 アカネは同じ行動を繰り返し、エルダートレントの幹に大きな切れ込みが出来てきた。


「ギギ! キーー!」


 エルダートレントは心なしか焦ったような音を上げる。

 アカネはそこへさらに追撃を与えた。


「これで最後じゃない?!」


 ミシ……ギギギギーーーー……


 エルダートレントの体が徐々に傾いていく。エルダートレントは今も攻撃を繰り出そうとしてくる。


「まだ動けるの?! やっばっ! 避けられない!」


 根による一撃が勝利に油断したアカネに迫る。






「あれ……? 生きてる?」


 エルダートレントの最後の攻撃は当たることはなかった。その前にエルダートレントの体力がなくなっていたのだ。


「やっっったーーーー! 勝てたーーーー!!」


 アカネは両手を振り上げ、ドサッっと音が鳴るぐらい思いっきり寝転んだ。大きく息を吸い込み、勝利に余韻に浸っていた。


「アカネちゃんお疲れ様! 流石アカネちゃんだね、かっこよかったよー」


 ユイがねぎらいの言葉とともに歩いてきた。


「いやー まさか瀕死の状態から勝てるとは。私でも驚きだね! はぁ~……楽しかったーー…」


 アカネはニヤニヤしながらも目を瞑り、足をパタパタさせている。


 ギギ……


「ア、アカネちゃん? 避けたほうが良いかも……?」


 ギギギギギ……


「どうしたのユイちゃん?」


 アカネが目を開くと、そこには幹を斬られ、倒れてくるエルダートレントの胴体が視界いっぱいに広がっていた。


 ギーーーーー


「え、ちょ、まったーーーーー!」


 バターーーン!

感想をいただきました。返信はしていませんが、ありがたく読ませていただいております。とても励みになります。モチベーションにもつながっています。

評価・ブクマもありがとうございます。

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