↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SF!?異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
精霊と旅と子犬
95/100

魔獣の子供

 逃げているのは、どう見たって可愛い子犬だった。

 ……ただし、なんと首が3つある不思議な犬だった。

 おい、なんだこれ?

 絶句していたらリンが先に反応した。

「ケルベロスじゃないか!なんでこんなとこに?」

「ケルベロス?この子が?」

 その名前は俺でも知ってる……ゲームでだけどな。

 なるほど3つ首なのはそういう事か。

 だけどこの惑星の魔物・魔獣っていうのは元々普通の動物だったんだろ?

 いったいどうすれば首が3つなんてのが生まれるんだ?

 

 いや、今のそれどころじゃないか。

 先に確認する事がある。

「追いかけてるのは関係者か?」

「それはない」

 明快にリンが否定した。

「ケルベロスはドワーフと魔族が作った人造魔獣だ。

 こんなところで車に追われて逃げるなんてありえないんだ!」

「ああなるほど」

 人造なのか。

 それで首が3つなんて生物がありうるワケか、なるほどな。

「わたしたち魔族はケルベロスをかわいがり、そして頼りにしている。

 個体が他種族の手に渡らぬよう厳しく管理している。

 しかもケルベロスは魔力の弱いものには決して懐かないんだ」

 ああなるほど。

「少なくとも飼い主と楽しくおいかけっこしてるわけじゃないんだな?」

「ああ」

「わかった」

 それで、とりあえずアイリスたちを見回した。

「俺は介入したいと思うが、皆の意見を聞かせてくれ」

「いいよ」

「イイ」

「もちろん問題ない」

 即答かよ。

「追いかけてるのが権力者だと面倒事になる可能性もあるんだぞ?」

「パパのお願いが第一!」

「問題ナシ」

「何かあれば全力でサポートしよう」

「お……オーケーわかった、ありがとう」

 しかし。

 アイリスはともかく、なんでムギやリンまでノリノリなんですかね?

 しかも、ヤバそうな案件にわざわざ首をつっこむなんて。

「……なんつーか、異世界もののテンプレみたいだよな」

「パパ、パパ」

「ん?」

「ここ、パパからみたら異世界だよ?」

「……たしかにそうだった」

 だよな、ここ異世界だよな。

 なんつーか。

 こうして車の中にいるといまいち現実感がないんだよなぁ。

 愛車の中って不思議だよね。

 なんとなく人をホッとさせるようなものがある。

 日本全国の車好きの皆さん、そう思いませんか?ねえ?

 

 

 俺たちはスピードをあげた。

 今、俺たちがいるのはカジヤン族の集落から伸びる枝道だ。

 彼らは峠に向かうハイウェイを走っているわけで、遅くなるとスレ違いかねない。

 せめて元のハイウェイにさっさと合流したい。

 だから急いでいた。

「ハチ、ケルベロスが速度をあげた」

「え?」

「こちらに気づいたようだ」

「なんで、どういうことだ?」

「たぶんだけど君に気づいたんじゃないかな?」

「俺?なんで?」

「すまない」

 突然に謝ってくるリン……わけがわからない。

「どうした?なんで謝る?」

「君に魔力の使い方を教えているのに、魔力の抑え方をまだ教えてなかった。

 たぶんそのせいだと思うからだよ」

「あ、そういうこと?」

「ああ」

 あらら。

「君の魔力は急激に高まっている。

 元々、ある程度の強さになったら制御を教えるつもりだったが……まさかここまでの早さで成長するとは思ってなかったんだ。

 だからすまない、これは完全にわたしの認識の甘さが原因だ」

「そういうことかぁ」

 むむむ。

「ケルベロスは強い魔力が好きなんだっけ?」

「少し違うけど、まぁその理解で間違いない。

 おそらくだが、必死で逃げる幼獣にとり君の魔力は、まさに天の助けにも見えるだろう」

「そして残る力を振り絞り、俺に向かって全力疾走ってか?」

「だねえ」

「……責任重大じゃねえか!」

 頭が痛くなってきたよオイ。

「と、とにかくだ。

 その『魔力を抑える』訓練ってのは後でよろしく頼む。

 それより今は、その子を何とか助けないとな!」

「え、助けて……くれるのか?」

 ん?

 ミラーごしに見えるリンの顔は、何か信じられないものを見る目だった。

「どうしたんだ?」

「いや、もしかしてハチ、状況が理解できてないのかねえ?

 繰り返すけど、魔族にとってケルベロスは可愛いペットで同時に守護聖獣みたいなものだ。

 当然、幼獣だってその強さは半端なものではない。

 それが脇目も振らず全力で逃げているんだぞ?」

「うむ、だから責任重大だろ」

「……」

「まぁ難易度の高いタスクってのは理解した。

 だから俺も安全第一で行くよ。

 ごめんな、必ず助けるって言えなくて」

「……いいのか?

 相手の強さが未知数なんだ、これは本当に危険だぞ?」

 あーうん、それはわかるよ。

 どこか余裕があり、自信にあふれているような態度のリンが今は弱々しいし。

 でも。

「なぁリン、おまえ自分の顔を鏡で見てみ?」

「え?」

「そんな泣きそうな顔して何いってんだよ」

「……え?」

「あのなぁ。

 おまえの顔に、この子を助けてって書いてあるだろうがよ!

 そんな顔見せといて何もするなってか?

 その方がきついわバカ!!」

「!?」

 リンがハッとした顔になった。

 ははは、全然気づいてなかったのかよ。

「アイリス、あと最悪の場合はマザーも頼む。

 悪いけどムギも協力してくれるか?

 とにかく、やれるだけの事はやる。

 ケルベロスの子を助けるぞ!」

「パパ、追手はどうする?」

「どうするって──」

 

 そんなの迷うまでもない。

 

 俺は勇者どころか戦士ですらない。

 そんな俺が誰かを助けようっていうんなら、できる事はひとつだけだ。

 話し合い?バカいってんじゃねえよ。

 そんな平和ボケな事してる場合かよ。

 

「ケルベロスの子の確保を最優先とする。

 ベストは回収後、即座に逃げる事だ。

 最悪なら犠牲を覚悟の上で戦う事になるが……」

「とらえて情報を吐かせないの?」

「今回はやめとこう」

 俺はかぶりをふった。

「わざわざ言わんでもわかってると思うけど、殺さず無力化って殺すよりずっと難しいだろ?

 とにかく逃げろ。

 そんで逃げ切るのが無理なら、無力化なんか考えずにがっつり殺せ。

 絶対無理すんな、『いのちだいじに』だ。

 何かやって問題が出るなら、責任は全部俺がとる、いいな?」

「わかった!」

 やはりアイリスたちはわかっていたようで、俺の言葉に大きくうなずいた。

「パパ近いよ!」

「脇道入ったか?」

「まだ!」

「間に合うか?」

「ぎりぎり」

 よし、何とかなりそうだ。

「ぶちかますぞ!」

「了解!」

「ん」

「うむ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] お、今回もラウラちゃん?と邂逅か? ヒャッハー!弱いもの虐めするクソ野郎は消毒だー!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。