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SF!?異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
峠(2)
77/100

峠に向かう

 釣り場から戻って朝食になった。

「これ食べて片付けたら車の方に戻って撤収して、それで出発にしよう」

「パパ、もしかして急いでる?」

「あわてるつもりはないけど、温泉に行ってみたいかな」

「あ、そうだねえ」

「温泉……」

 ムギはちょっと複雑そうな顔をしていたが、アイリスは興味しんしんだった。

 

 

「よし、しゅっぱーつ!」

「はーい」

「うっす」

『はいよ』

 一時間半ほどして俺たちは出発した。

 ……ただし、実は座席に座っているのは俺とアイリス、ムギだけだ。

 今日から参加のはずのリンは何をしているのかというと。

『わたしは公園の調査を続ける。

 どのみち座席も足りないのだろう?』

「うちの車は四人がけだよ?」

『ムギ嬢は演奏家だろう?

 ならば後部座席は彼女ひとりでいっぱいのはずだ、違うかい?』

 う。

 それはたしかにその通りだった。

『ま、非常時には演奏もできないだろうし、その時には座らせてもらうよ。

 それと念のため、通信回線をあけっぱにしておくよ』

「……いいんだけどさ。

 なんで普通にカーナビから声が聞こえてくるのかね?」

『いやー通信機能ってのは便利だねえ。

 システムと常時接続してみたが、まったくすばらしい!』

 もしかして。

「まさかこれ、普通に通信してるんじゃないってこと?」

「パパ」

「ん?」

「回線に割り込みかかってる。

 カメラ映像にハッキングして外の景色も常時取り込んでるみたい」

「……やりたい放題だな」

 どこのハッカーだよ。

 元の学者先生にはハッキングの知識なんかないはずだよな?

 アイリスやムギとは別の意味で多芸だなオイ。

 

 しかしアイリスもムギも、そんでリンもか。

 なんか皆さん有能すぎませんかね?

 もしかして……俺が一番ショボいの?

 

 いやいや、今は気にしても仕方ないか。

 

「よくわかった、けど食事や休憩の時には呼ぶけどいいか?」

『了解』

 そういうと音声が切れた。

 

「リンちゃん仕事熱心だねえ」

 アイリスは彼女を『ちゃんづけ』にしたのか。

「オルガ博士は、自分のデータと引き換えに技術情報を求めたそうだからね。

 ならば、リンにとってデータを送るのは大切な仕事だろう」

 問題のある内容だったらマザーが拒否したはずだ。

 ならば危険なものではないし、変な意味での注意はいらないだろう。

 

 

 そんなこんなを飲み込んで、俺たちは再び旅の空。

 風景はますます、どこかの過酷な山岳道路……まわりもすべて荒れ地。

 そんな日本人のドライバーは、よほどのドライブ好きでもあまり見ない風景。

 うむ、よい旅の空だ。

「……」

 そして賑やかになった車内空間。

 いつもどおりのエンジン音だけど、そこにある生活音は以前と異なっていた。

「はい、ムギちゃん」

「ん」

 演奏中の演奏家(ムギ)の口に、助手席からアイリスがお菓子をいれた。

 うんうん。

 ムギ、演奏自体もうまいんだけど、誰かに聞かせるのに慣れてるようでもあるな。

 今は練習曲らしいのをやってるわけだけど……。

 練習曲は文字通り練習のためのものなんで、似たようなフレーズを繰り返したりするもので、聴衆にとっては飽きてしまうようなものもある。

 俺も一応、楽器経験者だからわかる……ムギはきちんと『聴かせる』技術を持って実践してる。

 ムギに演奏を教え込んだ人……何者だったんだろうな。

 まぁ。

 ネコミミメイドの姿を学ばせた変態野郎とこの演奏技術を教え込んだ音楽家……できれば別人であってほしいと思うのは俺のワガママかな?

 なんとなくだけども。

 

 そんなことを考えていたんだけど。

「お」

「どうしたの?」

「どうやら、峠とやらが見えてきたぞ」

「え、どこどこ」

「あれだよ。

 ムギもちょっと見てみな、おもしろいぜ!」

「……」

 ムギも演奏をとめて、じっと前の風景に見入った。

「なにあれ?看板?」

「ああ、看板だろうな……おもしろいだろ?」

「なんであんな、いっぱいなの?」

「俺はなんとなく予想ついてるけどな。

 ほれ、そこに停車場がある。とめてみようぜ?」

「ウンわかった。

 リンちゃんにも知らせる?」

「もちろん頼む」

「リンちゃん、リンちゃーん聞いてる?」

『……ああすまない、ちょっと水に潜ってた』

 結局潜ったんかい。

 しかも水音までこっちに聞こえてるし。

 ナビから響いてきた通信音声にちょっと苦笑した。

「峠についたけど、看板いっぱいの面白い風景でな。

 ま、ちょっと早いけどお茶がてら休憩しないか?」

『わかった、いこう。

 着替えて行くから少しかかる』

「了解」


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― 新着の感想 ―
[一言] 峠の看板 ダメだ釜めししか出てこねぇw
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