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SF!?異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
04-旅人と接敵
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墜落船

本日投稿(2/3)

 昔、とある星に侵略者がやってきた。

 

 彼らは自分たちで直接攻めるのでなく、衛星軌道上に無人の自動惑星を設置した。

 自動惑星は、近隣の小惑星などから資材を集め、現地人そっくりのアンドロイドと、それから移動や攻撃のためのデバイスを作り、放っていた。侵略と支配は順調に進んでいた。

 

 だがある時、自動惑星は攻撃を受け破壊された。

 そして大爆発を起こしてバラバラに砕け散った。

 そのほとんどは惑星に降り注ぎ、全惑星規模の天変地異の引き金になった。

 たしかに、惑星は侵略者を叩き出せたのかもしれない。

 だが、喜びを分かち合うべき現地人たちは、誰ひとりとして生き残らなかったという……。

 

 

 さて。

 自動惑星はたしかに粉々に吹き飛んだのだが、中枢部分は頑丈に作られていたので無事だった。

 しかし、それでも大ダメージは受けてしまった。

 爆発の勢いでハイパードライブ・システムがおかしな作動をしてしまい、あろうことか別の世界に投げ出された。

 

 元の世界には戻れない。

 自動惑星中枢──仮に『彼女』と呼ぼう。

 彼女が本来いるべき戦場に戻る術は、もうない。

 

 だが彼女は、それをあまり問題視しなかった。

 なぜなら。

『元の場所に戻ることは不可能であり、また状況からおそらく、かの惑星上の生物も大きなダメージを受けてしまったと思われる。

 占領と支配を目指していた命令者のプログラムは、二重の意味で破綻してしまった』

 

 では、もうやるべき事はないのか?

 熟考の末、彼女は否定の結論に達した。

 

『わしは戦士を生み出し、そのケアを行うために作られた存在。

 戦場から離れ、命令者もいなくなったのなら──それは命令者たちのいう「現役を引退」したようなものだろう。

 そして、兵隊を作るためのデータも既になし。

 ならば、無理をして兵団など作って何になる?

 老後の楽しみのようなものならば、こんな戦士はひとつの時代に1、2体もいれば充分であろう』

 

 手持ちのデータに現地採用のデータを組み合わせれば、戦士を作ることはできるだろう。

 かつてのような強力な戦士は作れまいが、それでいい。

 いや、そうでなければならぬ。

 

 

 そんなこんなで、どれくらい虚空を飛び続けたろう……彼女は小さな恒星系にやってきた。

『データによれば、近い系列の文明圏と交流しているはずだが……なんの気配もないか。

 知的生命のカケラはあるが、せいぜい衛星軌道までしか出ていないようでは「知的生命」とは言えんな。

 しかし、ふむ……これが平行世界ということか』

 元の世界では交流があるが、こちらの世界では違うのだろう。

 興味深く、その差異を眺めていく。

 

 その時だった。

『危険、高重力を伴う時空の歪み』

 なに?

 なんで、こんな惑星近郊に強烈な時空の歪みがある?

 いやまて、これはもしかして。

 まさかと思うが、天然にできたワームホールか?

 

 別の平行世界と癒着を起こし、自然のバイパスができてしまっている。

 記録がないとは言わないが……珍しいどころじゃすまない自然現象だった。

 平素の彼女なら、むしろ狂喜してデータ採取をはじめたろう。

 だが今の彼女にしてみれば、とんでもない危険物だ。

 何より現在の彼女は、これに抗う推力を持たないのだから。

 

 またしても異世界に飛ばされてしまうのか?

 おまけに運悪く惑星の引力にも捕まってしまい、落下が始まってしまった。

 だめだ、逆らえない。

 引力だけなら振り切れるが、ワームホールの引き込みには逆らえそうにない。

 どうやら特異点が大気圏内にあり、不定期に活性化し、周囲の何かを異世界に連れて行くようだ。

 

 では流される前に、せめて今やれる事をやろう。

 幸い、この星には豊かな自然があり、原始的だが知的生命体もいる。

 ならばと迫りくる地上にセンサーを巡らせ、情報をかき集めていく。

 植物、動物、その他。

 風で吹き上げられ、成層圏の周囲を漂っている小さな生き物たちの鹵獲。

 その他、ありとあらゆるセンサーを駆使し、丹念に情報を集めていった。

 

 地表付近は、強い雨が降っていた。

 たまたまセンサーに反応したのは、現地の乗り物(ビークル)らしきもの。

 ただし大破していた。

 周囲の山が崩れている……山崩れか?

 そして、どうやら、中には生命体が1……ただし瀕死。

 転移前に何とか、ビークルごと電子化して吸い上げを試みる。

 ──よし、確保。

 取得直後に元の生命体の生命が尽きた。ギリギリだったようだ。

『空間反転、時空連続体間移動開始』

 データをストレージに落とし込みつつ、タッチの差で彼女は異世界に転がり込んだ。

 

 周囲の風景が一変し、現れたのは巨大な砂漠のど真ん中だった。

『状況確認、周囲の観測開始。

 同時に採取データの分析を開始。

 生命体のデータから戦士のデータを作成しつつ、観測結果や生命体の記憶、ビークルの現物などから、この世界で使用するためのビークルの設計を行う』

『分析クラスタより警告・採取データは転移前の惑星のものである。こちらで使えるとは限らない』

『環境クラスタより報告・本惑星に分析不可能なエネルギーが大量に運用されている。

 解析に時間がかかり、ただちに戦士に組み込むには問題がある』

『分析クラスタより報告・最後に取得したビークルは人工の街道での走行に向いたもので、不整地走行には強度や走破性能が足りない。デザイン変更と強化が必要』

『ビークル生成用統合クラスタより提言・不整地走行同様、自動回復も織り込むべきである』

『動力源は太陽エネルギーにするか?』

『環境クラスタより提案・謎のエネルギーを動力源にできないか?』

『ビークル生成用統合クラスタより提言・不可能ではないが、エネルギーそのものに対する分析が重要』

『環境クラスタより要求・虫型探査デバイス利用を求める』

『全体統合クラスタ・承認する』

『20秒後に探査デバイス群をひとつ射出する。調査対象は……』

 

 

 そうして彼女は、なぞの調査を淡々と続けるのだった。


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