表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SF!?異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
中央大陸の旅
10/100

何かみつけた?

 普通、異世界に行く物語といえば騎乗動物だったり徒歩、あるいは辻馬車のようなもので旅するのかもしれない。

 だけど、俺に託された旅は遠く、道のりは長い。

 よくわからない国々がひしめく、日本人どころか地球人すらいない世界を、しかも大陸をいくつも越えて、はるかな旅をしなくちゃならないわけで。

 しかも、悪意ある追跡者がくるかもしれない。

 ならば。

 とにかく今は、テンポよく旅を進めたいんだよね。

 

 昼間、砂漠のハイウェイ。

 今日も今日とて、俺は南にむけて愛車を走らせていた。

 日本ならかろうじてセンターラインがありそうな広さだけど、妙にきれいな道。

 砂漠の大地を地平の彼方まで続いていて、俺はその上を走り続けている。

 それにしても。

「……はぁ、さすがに砂漠も見飽きてきたわ……これが何日だっけ?」

 さすがに日本の高速みたいに飛ばせないし、夜間は走ってないし無理もしてない。

 一応、ナビによると、残り1000kmくらいで砂漠を出そうなんだけど、それでもシャリアーゼまでは1500kmはあるだろう。

 

 しかし。

「ここまでお気楽なのは、車内風景のせいでもあるよな」

 なんせ内装は、乗り慣れた愛車そのものだからね。

 これのせいで、どこかまだ「日本のまま」な気分が抜けないんだろう。

 ハハハ……まぁ、さすがに襲撃されて怪我でもさせられたら、さすがに印象かわるだろうけどね。

 

 俺はドライブ好きの家に生まれ、子供の頃は家族でしょっちゅうおでかけしてた。

 大人になり、一人暮らしするようになってからは、ひとりででかけた。

 そんな俺なんで、こうして運転してるってのは日常の風景なんだよ。

 そして今、運転している俺の愛車……いや、正しくは生前の愛車そのまんまなわけだろ?

 計器類とかインテリアとか、目に飛び込んでくる映像的には、ほとんど元のまま。

 貼り付けたシールや細かい汚れまで記憶そのまま。

 なんとも芸の細かいこった。

 

 だがもちろん、窓の外の景色は大砂漠なわけで。

 中と外のギャップ、すげえよな。

 

 この中央大陸の砂漠は、たまに岩ばかりのとこもあるけど、多くの場所は砂ばかりらしい。

 どういうことかというと、日本人が砂漠と聞いて連想する、見渡す限りの砂の砂漠そのままなんだよ。

 その中に、まるで雲海に浮かぶように敷設され、続いている広く長い舗装道路。

 まわりが砂だらけなのに砂に埋もれず、また年月の中、逆に侵食されもしていない。

 きわめて自然に、そして、とんでもなく不自然。

 まぁあれだ……ほっといても砂に埋もれたり荒廃しない仕掛けがあって、まだ生きてるんだろう。

 俺にはよくわからないが。

(マザーの話だと、よくわからないエネルギーみたいなものが道を埋もれさせないようにしてるんだっけ?)

 超技術の塊であるマザーすら、よくわからない技術。

 いやほんと、たしかに「進化しすぎた技術は魔法と区別がつかない」そのものだよな。

 しかも、この星には本物の『魔法』すらもあるらしいので、さらに話がややこしい。

 ほんとにこれ、マザーの力で解析しきれるもんなんかね?

 

「……」

 窓の外は、ぎらつく灼熱の太陽。

 そして、地平の彼方まで続く、とんでもない大砂漠。

「見慣れたっちゃ見慣れたけど……すげえもんはすげえよな」

 これで月夜にラクダでも歩いていたら、車止めて写真撮りまくるわ絶対。

 少なくとも、俺みたいな日本のサンデードライバーが愛車の車窓から見る光景じゃないよな。

 だけど、そんなスゲー風景が映っているのは、まぎれもない愛車からの景色。

 そんで、見てるのは俺だけ。

 

 ん?

 なんか今、カーナビの画面の隅で何か動いたぞ。

 裏でマザーが何かしたかな?

 俺はナビのメニューボタンを押して、出てきた電話マークをつっついた。

 日本と違う呼び出し音がして、そして向こうが出た。

 映像に、今やすっかり見慣れた老婆の映像が出てきた。

「マザー」

『おや、どうしたね?』

「それは俺のセリフだ。

 よくわからないけど、俺を呼び出そうとしていたんじゃないか?」

『どうやってそれを感知したのかね……まったく人間ってのは。

 ま、それはいい。たしかに呼び出そうとしていたからね。

 実は試験用の船の製作がおわったんで、本番の輸送船を作るんだよ。

 ついては完成予想図をみせて、あんたに意見をもらおうと思ってね』

「お、新型つくるの?」

『新型というより改造品だけどね、何しろ未知の分野だからねえ』

 そういうことか。

「まあわかった、俺が見ていいもんなら見るぜ」

『悪いねえ』

 

 ちょっと説明しよう。

 実はマザー、なんでもできるみたいなイメージがあるんだが、とんでもない欠点をもつ事がわかった。

 つまり、工業デザインってやつが全然ダメなんである。

 センスがないというより、何かこう根本的にズレてる。

 微妙に洗練されてないというか、アレな意味で昭和的というか。

 それを一度、がっつり指摘したら、なんか前にも言われた事があるらしくて。

 それから「ちょっと見ておくれ」と意見を求められるようになったってわけ。

 

 まったく、王道ヒロインのメシマズみたいな、変な属性もってるよなぁ。

 でもまぁ、そういう人間くささが彼女に、いわゆる「マザーコンピュータっぽさ」を感じさせないんだろうな。

 さて。

 

「うお、なんじゃこりゃあ!」

『試験機のひとつさね。

 あんたを運び、なおかつ大型動物にも対応できる護衛艦を作ってみたんだけど……どうかね?』

「いや、どうかねって」

 

 なんだこの、昔の戦艦大和っぽい船?

 

 よく大和の映像に使われる横からとられた写真だけど、あの白黒写真を選んだ人は天才だと思う。

 実にかっこいいもんな。

 で、あきらかにそのシルエットを元にしたんだろうなーってデザインではあるんだけど……。

「なんでまた、こんなごつい船を?

 いや、試作品だし、大きい船の方が安全とかなのかもだけどさ」

『そりゃあ、対人目的さね』

「対人?」

『まず、この手の船は威圧感があるから抑止力に使える。

 次に、本物の古い戦艦と違っても見た目だけで、中身はあくまで実験船でしかない。

 最後に、船体には現時点で判明している、例のエネルギーやそれによる現象を防ぐ仕掛けをしてある。

 つまり、戦いにならなかったとしても、魔法とやらでこの船は沈められないのさ』

「おー」

 もう、そんなとこまで研究進んだのか!

 

「ん?」

 よくみると……なんだこれ、艦の後ろに巨大な出っ張りがあるぞ。

 まるでフェリーの車両積み込み部みたいだが……でも、妙にでかいな。

「なにあれ?」

『ああ、上陸用舟艇(じょうりくようしゅうてい)ゲートだネ』

「……なにそれ?」

『なにいってんだい。

 あんたの車を船に積むとして、どうやって積んだりおろしたりするんだい?

 特に東大陸の向こうは、どうなってるのか全然わからないんだよ?』

「……たしかに」

 なるほど、そのための上陸用の船か。

『いちいち積み替えなんてやってたら危険だからね。その船ごと本体に収容して、それから乗り降りするのさ』

「なるほど!」

 よく考えてんだなぁ。

 

 

 そんな会話をしていたら、唐突にマザーがムッと眉を寄せた。

 なんだ?

「どうした?」

『それがね……ここから遠くないところで、誰かが殺されたようだよ』

「……なんだって?」

 どういうことだそれ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 宇宙戦艦の方でないと単艦でどうにかするなんてできないんじゃw 転送装置のついてるエンタープライズなら探査しやすいかな
[一言] 戦艦大和キタコレ! ヤマトはロマンだよねー。 と、いきなり殺人事件? マザーが眉を顰めるとは何が起きたのやら……。 ちなみに前回のセルジ達の予想しているハチたちの戦力 アリア→自分達が勝て…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ