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攻略対象はこんな感じだそうです

お読み頂き有難う御座います。ルビを振ってみました。

ヒロインに縋りつかれ、仲良くなりたいと懇願された上……連絡先をヒロインとサポートキャラに知られてしまった悪役令嬢で御座います。

 斬新です。こんな展開見た事御座いません。私が知らないだけで、巷には溢れていたりするのでしょうか?

  結局父にアプリ使用の許可は取れなかったのですが、メールが届いておりました。

……轟さんからの方には、仲良くしてね!!と物凄いハートマークがついております。送られる相手を間違えておいでですね。是非とも攻略対象者にお願いします。


「どないしたんミズハ」

「友人になった方から先程メールが届いたようです」


若君が読まれていた本から視線を外し、此方を見ておられます。

そう言えば若君も攻略対象者なんでした。……お顔は綺麗ですものね。性格は……ゲームをやっていたとしたら、後回しにしそうな気が致しますね。

 ……ええ、きっと身近だからでしょうね。色々知って知られておりますし。


「へえー。ミズハの友達ってどんなんや。上司的な立場としてご挨拶しとかにゃあかんね」

「いえ、どうぞお構い無く」


若君がこの事態に絡まれてはなりません。余計に困った事態に陥りそうなことは、流石に私でも分かります。面白がられているのが丸分かりで御座いますし。


「まあ、ツルんでるとこに勝手に乱入するしええけど」

「若君………」

「それよりこの黄緑の着物、芸人はんみたいやない?僕のリクエストのジャージはどないしたん」

「若葉色だそうですよ。よくお似合いです、若君」


 お髪が赤みがかった茶色ですしね。殿方には派手めですが、華やかな色合いがよくお似合い御座います。そして何時からジャージから離れていただけるのでしょう。


「山葵も青緑着てたやん。山葵に青緑で、僕が黄緑。並んでたらギャグやで」

「落語家はコンビを組まれることは少ないと思います」

「ジャージー。ジャージやったらこんな頓痴気な色合いでも我慢するけどなあ。大体男子高校生が着物やなんてジジムサイねん!スタイリッシュにダラダラすんねん!!」

「ジャージもスタイリッシュに着こなすのは難しいかと……」

「僕が運動音痴やから似合わんて!?酷いわ、ミズハかて運動音痴やん!あっ、そうや!侍従のお前とペアでジャージ着たらええやん!」

「流石に怒られますのでご勘弁下さい!」


 ………若君はジャージを忘れて頂けませんでしょうか。

頭の痛いことで御座います。主従ペアでジャージで彷徨くってどういう名家なんでしょう……。

特に名家の誇りが父が煩いので、私が煩く言う気は御座いませんが、流石にそれは無いでしょう……。




 次の日。轟さんが話しかけて来られました。


「あ、お早う!昨日はメールありがとね!ミズハさんって、お邪麿ぼったん……うほわっ!?

あっ、いやいやいや、山茶花坂君といつも一緒に居ないんだね!!えへへ!!」


 ……しまった、轟さんがビビっておられますね。つい、目つきが鋭くなってしまったんでしょうか。バックステップで仰け反られるとは……運動神経が良いですね。私なら頭から転んでしまう事でしょう。


「お早う御座います、轟さん。今日は普通の喋り方なんですね」

「……えっ!?あ、うん、流石にね。結構ドン引かれてるの分かったから、普通っぽいのを心掛けて……と言うか、元々のお姉ちゃんに勧められなかったらオタゲーマーにならなかったし、うん」


 少々未だ早口ですが、昨日のような勢いは有りません。この分なら気圧されずにお話出来そうです。

それにしても、ピンクと茶色のグラデーションの髪がおさげに結われていて、目はよく見ると綺麗な緑色。背は小柄で、白くて小さくてか弱い小動物の様です。

 ……やっぱり可愛らしい方ですね。将来どの方を選ばれるのか分かりませんが、この容姿は、実に男子が守ってあげたいタイプです。


「お姉さんが居られるんですか」

「あ、うん。こっちの電波お姉とは違って……いや、どーだったかな。仲は良かったと思うよ」


 力無く笑われる轟さんは、何故か少々疲れておいでのようです。家庭内で何か有ったんでしょうか?


「……そう言えばこの間も電波お姉と言われていましたね。電波……と言うと、エキセントリックなお姉さんがおいでなんでしょうか?」

「あはー、ちょっとね……。ガチ家庭崩壊しそーなレベルで……。って会ったばっかで重いよね!

それよりさ、不破さんは本命居る?」

「山茶花坂兄弟は好みでは御座いません。ぐらいでしょうか。他の方は分かりません」

「……ええ!?ミズハさん、あの和風セレブ兄弟の為に火の中水の中進む感じじゃ無いの!?」

「……お仕えしている方ですが、一応無茶は仰らないと思います。私は運動神経が良くありませんので」

「ええ……思ってたんと違う。もっと主従ガガー!!みたいなのじゃないんだ……。そりゃそっか、転生っ子だもんね」


 やっぱ色々違うなあ、と轟さんはひとりごとのように言ってます。


「乙女ゲーが始まっちゃうんだね……」


切なさそうな表情で桜の木を眺める轟さんには何か出会いが有ったんでしょうか。

物凄く乙女ゲームのスチルのようです。いえ、乙女ゲームのヒロインなんですけれど。

だけど何か……何かが足りません。


「……女神学園乙女轟ッ♪好きな奴を狩りに往け!!乱戦っ!ってタイトルなんだけど、知ってた?」

「いえ。相変わらずタイトルの意味が分かりかねますね」


 ら、乱戦、ですか……。

あんまり立ち入りたくない戦場のようですね。その中の登場人物である私は……正直、あまり……いえ、距離を置きたい気が致します。

 ヒロインとサポートキャラだけでもこんなに濃いんですから……。

いえ、ウチの若君と弟君も濃いですね。


「それで、攻略対象なんだけどね……。一応気に入りそうな男子居たら教えてくれるかな!?被らないようにするから!!」

「特に何方かと恋愛したいと今は思いませんが……。被ったら被った時、正々堂々とその人に選んでもらえば宜しいのでは?」

「やだミズハさん、イケメン!!勝てる気がしない!!」

「轟さん……顔が、凄い事になっておられますよ」


 気を抜かれると変顔になってしまわれるようですね……。そしてオーバーリアクション……。

そして、興奮冷めやらぬ轟さんから攻略対象の名前のメモと、概要を頂きました。

最早、彼女がサポートキャラのようでしたね。宜しいのでしょうか。仮にも当方、悪役令嬢の役目の筈ですが。


 今日は若君の習い事が有るので、私に時間が有ります。

宿題を終わらせ、轟さんから頂いたメモを見ました。


 ……バカ大王、と称されているのは、家代風光(えしろ かぜみつ)くん。……何気に私のクラスの男子生徒です。

クラスが一緒になったのが初めてなので、成績がどうかは分かりませんが……確かにバカ騒ぎされる確率が多い気は致しますね。当たり前ですが普通の男子生徒です。古代っぽい独特な髪型でも有りません。何処が大王なんでしょう……。


 シンバル大名と称されたのは、佐梁重治(さやな しげはる)くん。

奇妙な渾名は……さやなが言いにくいからサヤマ。じゃあサザン?→サザンクロス→キリシタン大名→あ、吹奏楽部でパーカッション部門?→シンバル大名だそうです。

途中からの変化球が全く分かりませんが、由来がちゃんと伝わっているのが凄いですね。そういう設定だからなんでしょうか。キャラが全く分かりませんでした。


 ムッツリ瓦版屋、と称されたのは……あら、先輩ですか。3年で放送委員長の浅茅和(あさぢ かず)先輩。

……お昼の放送を主に担当されているとかで、攻略対象の中でも結構な美声だそうです。そして情報通、と言う事で生徒会にも顔が広くていらっしゃる割に人前に出られるのがお嫌だとか……。

特に何かリアクションを起こす気は有りませんが、こんな方とどうやって知り合うんでしょうね。


 そしてウチの若君と弟君……は知っているので飛ばしても宜しいでしょうか。

けだるくも高貴な雰囲気が色っぽいとか、ちょっと厨二入ってるけどナルシストは傷付きやすい心の鎧でとか書いてありますが、理解できない単語が羅列されていますし。

 ……轟さんはウチの若君が好みなんでしょうか。


「……フッ!!青空にも愛される僕は今日も麗しくて罪だ!!」

「ソウデスネー山葵サマー、明日俺帰りに用事が御座いますので別行動でいいですか?」

「ヒモト、もっと鏡を僕の方へ向けろ!この角度では日差しが反射して僕の素晴らしさが損なわれてしまう!そしてフリルだフリルが足りない!!」


 あ、山葵様と父方の従弟のヒモトが何時ものようにじゃれ合いながら、今日も絶好調でこちらに来てしまいましたね。

絡まれると長くなるので、そろそろ若君のお着替えの仕度をしに若君の離れへ戻ろうと思います。

そもそも、山葵様って繊細でしたでしょうか?心の傷を負わせるような出来事って有りましたでしょうか?


「フリル!!フリルだああああああ!!僕はこの地に降り立った高貴なる者として」

「ちょっと山葵様!!しいいいい!!!伯父さんに怒られるの俺なんですよおおおおお!!」


 ……早めに出て来て良かったようです。

しかし、兄はジャージ、弟はフリルって……如何な物なんでしょうね。

彼らを見ていると……恋愛ゲームの中にいる筈なのに、恋がしたいとは全く思えなくなってしまいそうです。



 そして、外の桜も青い葉をふさふさと繁らせた……只今。

そろそろ衣替えのシーズンも近づいた今。

轟さんの不審さも少し鳴りを潜め、不審な手紙もアレから何のリアクションも無く……一応平穏平和な日々が続きそうだった、今!!


「へ!?あああ!」

「ニヤつかれてましたね、あんのスケベヤロウが。ミズハはバカ大王が好みなんです?」

 

 私の両手を……人気のない廊下の壁に押し付けられております。何故!?




弟君でナルシスト関白こと山葵くん、高校ピカピカの一年生ですが、厨二病です。

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