驚愕の事実と現実
お読み頂き有り難う御座います。
ヒロインは悪役令嬢にすがりつき中です。ざまあ現場では御座いません。
「迷惑そうな顔も美人で素敵ですねお友達になってええええ!!不破さんーーー!!」
……ヒロインに縋りつかれる悪役令嬢、と言うと……あまり宜しくないEDへ向かう最中な気が致しますね。いえ、少し現実逃避をしたくなりました。
「あの……」
「頼んますうううう!!共に琴子の恐ろしさから戦おう!?」
「……三和さんは貴女のサポートキャラでは……」
「そうだけどね!?
琴子は知らんのですよこのゲームの事を!!
だからサポートなんて出来るか!?って怒られたんだよおおおお!!」
……た、確かに。
砂場に蹴り倒した、とご本人の三和さんも言われてましたしね……。
ですが……悪役令嬢はヒロインと仲良くしても宜しいのでしょうか。システム的に、歪みが出てきたりはしないのでしょうか。
……三和琴子が男子生徒で有る時点で、もう破綻しているようなものですけれど。
そう言えばあの方、何故女装なんでしょう。気になりますが怖くて聞きに行きたく有りませんね。
「ねえ、誰が推しなの!?絶対私、その人に近寄らないよ!!
油断禁物!!距離を保って安心安全恋愛!!」
工事現場みたいな事を言いだされていますね……。乙女ゲームのスローガンにしては、少し、いえ大分違うように思います。
「誰と言われましても……私、そもそもこのゲームだけやっておりませんし」
「ほおい!?」
……ヒロインの変顔って許されるんでしょうか。
顎が外れそうな位口が………空いてしまっています。いえ、ヒロインの価値は顔だけではないんでしょうけれど。
「てことは、全然何にもかんにも知らないんすか!?
マジかよ!ツツかなきゃ酒池肉林ゲヘヘウハウハが待っていた!?」
……頬を染めて此方に向けられた目が、余計大きく向かれておられます。顔芸は許されるんでしょうか。
よ、欲望に満ちていますね。大丈夫なんでしょうか、この方。
「い、いえ、発売前の雑誌知識くらいですが……」
「おおうおおおお!!そっかそっか!!やだ!早まらないで良かった私ィ!うん、強欲いくない!!
距離を保って安全第一危険排除!人様のモノは人のモノ!!」
頬を両手でバシバシと叩かれる姿は……うん、やっぱり変な方ですね。
「………あの、轟さん。仰る通り距離を保ちましょうか。
友達のご要請は残念ですが」
「調子乗ってスミマセンでしたーーー!!
情報の共有を行おう!!あの電波お姉も居るんだよ私!!
どうか哀れなる轟メアリにお慈悲ーーー!」
「いえお慈悲も何も、私、若君のお世話が……」
「学校の空き時間に語り合ってくれたらいいのよおおお!!
ミズハたんとお邪麿ぼったんの邪魔なんか、バッド一直線じゃん!
出来ないよおおお!!」
「は!?オジャ……マロ!?って何なんですか!?
幼児向けアニメみたいなタイトルですね!?」
私の言葉に、また轟さんは顔芸……失礼、驚愕した顔を私に向けてこられました。
ですが、この冗談みたいな名前は……聞き捨てなりません。
オジャマロ、は兎も角。その、ぼったんは=坊っちゃんではなく……牡丹の渾名呼びなのでは!?
それにしても冗談みたいな渾名ですが……まさか公式名称なんでしょうか。昨日三和さんから伺った攻略対象の二つ名もとんでもなくふざけてましたが。僭越ながらシンバルが気になります。
「えっ、ミズハたんてば、隠しキャラ知らないの!?
そもそも、ミズハたんがガチの悪役なお嬢爆誕!になる覇道エピソードも知らない!?」
「は、覇道!?存じ上げません!!」
「ふっはっ!教えて欲しければ私のお友達に!!隙間時間でもなって!!お頼みしたい!」
気になる単語の羅列に、私は悩みました。
果たして轟さんの申し出に頷いて良いものか。ですが、若君……山茶花坂牡丹に関係あるとしたら、見捨てる訳にもいかないようです。弟君だけでは無かったのですね。確かにお顔は宜しいですけれど……。
それに、私が悪役令嬢になるエピソードとは!?……考えれば考える程可能性は無さそうで御座います。
ですが……私は………。
「何でお前らツルんでるんです?」
「お友達になって貰ったんだい!
へへへん!いいでしょ琴子!」
逃げられませんでした。
いえ、一応後退りしたんですが、轟さんは足がとてもお早いようでして……。
逃げようとしたら、前方から三和さんがいらっしゃいましたよ!?
「琴子もミズハたんが気になってたんでしゃっろ!?ねえねえミズハたんゲット羨ましかろ?」
「やだあメアリちゃんったら………。
身の程知らずはゴキッとクビリ殺されちゃいますよ?」
「そんな野蛮なコト、お、女のコが言う科白じゃナイんだゾっ!」
言い回しは古いですが、流石ヒロインは顎の下に両手を添えるポーズが似合いますね……。
只今、誰も誘惑する対象がおられないので、何故そんなことされたのか分からないシチュエーションで御座いますが。
「お前の科白もリアクションも、古い少女漫画みたいなんですよね。
ヒロインを学びたいのは解りますけど、身の程知らず過ぎ。
偉大なる先人の彼女らとは雲泥の差ですよ、マジでサムイ。
ミズハ、逃げんな」
「……申し訳御座いません」
…………うう!!こっそり動いた筈ですのに!!何故アッサリと退路を塞がれるのでしょう!?
「俺が目ェ付けてたってのに」
「………」
底知れぬ春の空色の瞳が私を見つめます。………三和さんは私に一体何を求めておいでなのでしょう。
特に悪役令嬢覚醒する予定は無いのですか。それとも覚醒すれば、人智を越えた力が手に入ったりするのでしょうか。
………異能力モノでない現代モノで……今更それはキツイですね。すっかり慣れてしまいましたので、世界観チェンジはちょっとお控え頂きたく存じます。ファンタジーも素敵ですが、今から変えるのはよく無いと思います。希望で御座いますけれど!
「せめて3か4であれば……」
「えっ!3と4知ってるの?
ミズハたんどのキャラ推し!?」
「そうですね、3ならショーン王子で、4ならティミー王子でしょうか」
「プリンスいいよね!!私、3はレルミンで4はニック!ニックにサポートキャラして貰いたくて救いに」
「………………」
「えとー、こ、琴子も怖いけど頼りにして」
「チッ」
…………し、舌打ちされてしまいました。
笑顔なのに、舌打ち……。
「お前の主人のお邪麿ぼったんが探してましたよ。」
「!!」
「待って不破さんDOKINのID交換してーーー!!」
「は?ドキン?土足禁止ですか?」
「世界的メッセージアプリですよ。このバカみたいな恋愛ゲームの攻略にも使うんだそうです」
……成る程、心臓の鼓動的な名前でドキン……。どうしても土足禁止にしか聞こえませんね。
ですが、申し訳ないことに私のスマホは規制だらけなんですよね。
……もしかして、激しい拘束が嫌で、悪役令嬢になってしまったとかでしょうか?
「すみませんが、電話番号とキャリアメールのアドレスで宜しいでしょうか?家中の規則でアプリは禁止されております」
「えっ嘘。………や、闇堕ちしないでねミズハたん……」
「野良ブス煩い。俺とも交換しますよ」
「えっ」
「何か文句有るの?ミズハちゃんったら………」
…………その瞳の強さと、恐ろしさに……私のアドレス帳には、キッチリとふたり増えていました。
若君が隠しキャラだったようですね。二つ名が変なのは仕様です。