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ヒロインはお友達が欲しいそうです。

お読み頂き有難う御座います。

弟のお年頃ナルシスト山葵ちゃんが攻略対象ですが、若君もまあまあ濃いですね。

 雷が落ちております。それも立て続けのサンダーストームで御座い居ます。

ええ、勿論比喩です。空はオレンジとピンクに彩られた美しい夕焼けですので。本物の雷は鳴りを潜めております。

 そんな美しい夕焼けをバックに……10畳の大部屋を貸し切った、我が実の父によるマンツーマンなリサイタル説教で御座います。


 若君だけなら何とか御許可を頂けるんですが、このお役目大事の頑固親父と来ましたら……おっと、心の声が漏れだしてしまいそうです。


「工事現場みたいに煩いわあ。離れ迄届きそうやねえ。ミズハ、時計知らへん?」

「わ、若君!コレは失礼を致しました」


 父は声が通る上に大きいですからね……。物臭な若君が足を運ばれる程煩かったんでしょう。未だお着替えをされておられなかったらしく、制服の上に藍の丹前を羽織っておられます。

 ……?昨日のジャージに足袋よりはマシな格好でしょうか。子供の頃から碌な恰好をされなくて有名でしたが、……おひとりだと碌な恰好をされませんね。弟君の山葵様は無駄に派手、いえ、エキセントリックいえ、洒落者……?な恰好ですけれど。

 ピンクの和装って、乙女ゲーの攻略対象っぽいですよね。あ、山葵様は攻略対象者でした。


「叱るにしても長々言うんはパワハラゆーんやで。親子やったら虐待に繋がんで」

「ですが!!」

「怒るにゃったら建設的に怒り。おんなじこと長々煩いねん。芸があらへん」

「しかし若君!!侍従が付き添いを放棄して長々と遊びになど!!」

「山葵とその侍従はふーらふらしとんのに、何で僕やらミズハはあかんの?お説教なん?

言うとくけど、僕らに何か有ったらのスペアなんやろ?えー加減自覚持たせたらどないや?ミズハ、時計探してんか」

「お待ちください若君!!此れから許嫁の選定が……」

「いーややこややー。おジイはんのお世話やろ?そんなら摘まんで棄てといてんか」


 ……どうやら、内容を聞いていなかった私に繰り返し同じことを繰り返していたようです。どうも父の話は長いのでスルーする癖がついております。余計にそれで激怒されるんですけれどね。

 しかし主家筋に言われては父も引き下がる他無いようで、形だけ慇懃に下がっていきました。


「別にええやんね。同い年と茶ぁしばいたくらいでガタガタ煩う言わんでも」


 茶ぁしばく……。えっと、お茶するでいいんでしょうね。若君って同い年の割に、死語……いえ、少し前に流行りのお言葉が多い気が致します。


「若君、僭越ながら言い回しが古めかしくありませんでしょうか」

「えーそうなん?せやけど何なん、助けたったのに。あ、もしかしたらアレなん?後で怒られる感じなん?」

「いえ、一応叱責はその場だけで済みます。それに、父とは家で顔を合わせませんし」


 他の勤め人を纏める立場でもあり、責任者の父は帰りは夜中過ぎです。戻ってこない事も有りますしね。それが災いして、母は私が高校へ入学する前の日に家を出てしまいました。気付いた父が深酒をして泣いて寝込んでしまったのは……アレが初めてではないでしょうか。今も時々深酒をして、幼い頃からのお付き合いであるご当主様の前で慰められて泣いているようです。

 母には……常々家中でも口煩いのを煙たがられていたので、個人的には自業自得だと思います。プライベートと仕事は分けないとな、とご当主様が仰る通りで御座います。

 因みに母は此方で通いでお勤めしており、私との仲は拗れておりません。勿論今でも父とは顔を合わせず冷戦状態です。別居中1年と少し、と言う奴で御座います。


「他人んちまで巻き込んで、ほんま歪んどるよねえ。まあ、それはそーと」


 肩をぐるぐると回された若君は、私を見下ろして首を傾げておられます。


「ミズハってお取り巻きだけやのーて、お友達おったんやねえ」

「……えっと、それなりに」


 傍から聞かずとも失礼な科白ですが、結果的に若君のお陰で父の叱責から逃れられたのは事実なのでこれ以上口答えは申せません。


「それで若君、時計は」

「せやねん、教室に忘れてんやろか」

「いえ、制服のポケットから腕時計らしきベルトが覗いております」

「……マジやね」


 紛れも無く、あの擦り切れた黄色のバンドは若君の時計のベルトですね。若君は平地でも転ばれる程ドン臭い……いえ、少し平衡感覚が不自由でいらっしゃるので、恐らく壁で擦られたんでしょう。


「では、お着替えをお持ち致します」

「ジャージがええわあ。ジャージ生地で縫うたらええやん」


 攻略対象者の兄という、イケメンの部類に入られる筈のお顔ですが、若君はこよなくジャージを愛しておられます。キャーキャー言われている同級生に知られたら幻滅されそうですね。


「確かに乾きやすそうですね。洗い張りも必要なさそうですし」

「合わせは面倒やし帯ものおて、丸首で二部式にして、下衣は作務衣みたいにして腹にゴム入れてえや」

「それはもうジャージで御座いますね。

そう言えばお見合いって何の話何でしょう。聞いておりませんでしたが」

「さっき聞いたやろ。離れのおジイがどっかの金持ちのどっかのを娶せよーゆープランを立てとるんよ」

「旧家らしいですね」

「侍従のお前がそんなんやし忘れがちやけど、僕、旧家のボンやねん。せやし、ベタに家に反抗しとる最中なんよ」

「左様ですか。お着替えをお持ちします」


私の主は若君なので、主の意に添わぬことへの強要は出来ないので御座います。

多分この人のお嫁さんになりたい方は、先ずこのエキセントリック加減さにへ突っ込める剛の者か、スルーして受け入れるような器の方で無いと無理でしょうね。純粋培養で蝶よ花よとお育ちになったお嬢様では無理そうだと愚行致します。


……それにしても、今日は散々で御座いました。

三和琴子は怖かった上に、男子生徒だなんて……秘密を勝手に吹き込まれて!!

ああああああ!!

そりゃ、確かに色々女の子かな?みたいなところもありましたし、お顔は……誰かに似ている気がしましたけど、美形さんでしたけど!!


「……ミズハ、ジャージ」


あああ!!しまった!!お着替えを早くお持ちしないといけません!!




「あんのおー……」


 そしてとある放課後。

私は可愛らしいのに落ち込んだ声に呼び止められました。

……何でしょうか。聞いた事が有るような。


「あの、えっと……ふ、不破さん。ちょ、ちょっと謝罪させて頂きたいことが……」

「え?」


 謝罪?

私、何方かに何かしましたでしょうか。全く身に覚えが御座いません。

 頭に疑問符を浮かべながらも振り返ってみると……其処には、小動物のようにふるふると震えた……ピンク色と茶色のグラデーションのおさげ頭。

私をあの恐ろしい美少女、いえ、女装男子生徒の前に置き去りにして逃げた、轟メアリ!!


「……!!」

「ひっ!!そ、そんな怯えた目で見ないで!!お、お願い!!あの、謝罪を受け取って下さい!!琴子の前に置き去りにして御免なさい!!だけどあの時去らなければ琴子に超怒られる事に!!」


 そんな引き攣った顔をしていたでしょうか。

つい感情が駄々洩れになってしまったようです。


「……」

「おおおおおお願いします!!わ、私、家では姉は電波だし、琴子以外に友達いないし孤独で!!完璧美人な侍従令嬢不破さんに嫌われてるって思われたら余計に遠巻きにされてハブにされてええええええ!!」

「え、ええっと……」


 完璧美人って……。侍従令嬢って、何ですか。

そもそも、琴子以外に友達がいないって……。えっと、琴子って三和さんの事ですよね。

ヒロインで有られる轟さんって……周りに結構お友達がいられるような、雰囲気では?

少なくとも他のシリーズのヒロインはお友達に囲まれて談笑されているシーンが有りましたよ……?初代ヒロインは失礼ながらもぼっち設定なんでしょうか。


「ああああ貴方が悪役やる気が無いって、琴子から聞いて小躍りしたの!!……わ、私のお友達になって下さい!!イケメンも欲しいけど、お友達欲しい!!琴子怖い!!」

「三和さんが怖いのは同意致しますが……」

「だよねええええ!?でも聞いて!!何故か琴子しか相手にしてくれないの!!誰もお友達になってくんないの!!私の勢いがドン引くって抑え気味にしたら暗いって!!どうしたらいいの!?でも語りたいじゃん!!私の想いを受け取ってくれたのが琴子だけなんだけど、滅茶苦茶乱暴で口悪いし超怖い!!」

「……ち、近いんですが」


 何時の間にかがっしりと肩を掴まれ、抱き着かれるレベルで近いです!!

匂いを嗅がれているので鼻息が掛かるのは勿論、焦点が合わないのですが!!綺麗な緑の目が血走っておられますよ!!


「あっ!ご、御免なさい!!しかしさっすが悪役令嬢!!お肌と髪の毛むっちゃ綺麗を通り越して人外だね!!凄いなあ超いい匂いする!!たっかいお香的な?だ、抱き着いて良いかな!?近くで見ると胸凄いねボタン苦しくない!?同い年なのにこの格差社会酷いねふっかふかだね!!」


 早口のマシンガントークが聞き取れないんですが。

……た、確かにこの方は……惹かれるより引かれるタイプの方かもしれません。

三和さんと致命的に相性がお悪いであろうことも、理解実感致しました。


「お願い不破さん!!私、乙女ゲーにもラノベにも詳しいオタクだけど頭よくないの!!

悪役令嬢ザマアもヒロイン破滅も起こりたく無いし、誰もが破滅見たく無いの!!

本気!!だって、あれってさ程々に距離を取ったら大体幸せになれるパターンだよね!?

語り合わないと不幸だよね!?

頭良くないけど、人のモノに手を出すのいくないの分かるよ!」

「えっと……悪役令嬢ざまあ?が良く分かりませんが」

「あっ、転生者だけど知らない!?転生者でゲームはやったけどラノベは読まない系!?

不破さんのターゲットのイケメンに狙いを定めないと誓いますので、どうか、どうかお友達になってください!!

おススメのザマア系悪役令嬢本貸します!!この世界でも売ってるんだよスッゴイね!!

どうか時に喧嘩しても仲直りできちゃう青春なお付き合いを!!

どうかどうかどうかああああ!!」


 ……ヒロインに拝まれてしまったんですが、どうしたら宜しいんでしょう。

後、轟さんの言っていることが早口すぎて理解がしづらいです。コレも若君のダラダラ科白を年中聞いている弊害でしょうか。

……コレは……私はどうしたら宜しいのでしょう。

私の知っている乙女ゲームの流れでは無いのは、よく分かります。




主人公轟メアリ、孤高の存在に耐え切れず悪役令嬢に救いを求めております。

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