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悪役令嬢ですが、サポートキャラに連行されております

おおお!お読み頂き有り難う御座います!

令嬢ではないのに悪役令嬢ミズハ、サポートキャラの三和琴子に有無を言わさず連行されました。

「こっちですよ」

「は、はいいいい!!」

「そんなビビらないで貰えます?あ、ここだここだぁ。入りますよ連行ー」


 三和琴子に連れ込まれたのは……学園からふたつ向こうの道に有った、とても可愛らしい喫茶店でした。

 パステルブルーと煉瓦が組み合わさった壁に、観葉植物が飾られ……白木のテーブル席がとても可愛らしい内装で御座います。


 学園のお近くにこんなお店が有ったなんて。あまり出歩かないものですから存じ上げませんでした。

それに、喫茶店なんて、もしかしたら前世ぶりではないでしょうか。

ですが懐かしさよりも大変帰りたい気持ちで溢れております。喫茶店でお茶をするメンタルでは御座いません。

 しかも、あまり混雑しておらず、四人掛けの席に案内されて、私達は向かい合って席に着きました。

あああああ!!とても、帰りたいんですけど……!!この、目の前の儚げで何処かで見たこと有るような女子から、とっても、とっても逃げて帰りたいです!!


 ?見たことある?あれ?雑誌で、ですよね?でも、あれ?いえ、ちょっと違うような気が致します?

ゲーム画面で?いえ、ええと?いえ、目の前の三和琴子に集中しなければ参りませんね。


「ガチで会話するのは初めてでしたっけ?まー、私とあの野良ブスは転入組ですし、クラスも違いますしね」


 そ、そう言えばヒロインとサポートキャラは、ゲームが始まる前に転入されてこられたんでしたっけ。何でも元々居られた学校が経営破綻したとかで。

えっと、その学校の方々が何人か割り振られて、女神学園へ転入されて来られたんで御座いましたね。噂では編入試験が難しいそうでかなりの努力が必要だとか。轟メアリさんと三和琴子は優秀でいらっしゃいますね。

 ………何故か野良ブス呼ばわりされて罵っておられる関係でらっしゃいましたが。

何処か、何かがおかしいようです。私の知っている乙女ゲームな流れでは御座いません。


「さ、左様で御座いましたでしょうかしらでふみゃっ!?」

「ははっ、変な言い方」


 うう、ひ、酷いです。緊張で舌が凍ってるのに、せせら笑いだなんて!!


「じゃあ名乗っときますかぁ。私の名前は2-Aの三和琴子………」

「ふ、不破ミズハで御座います。クラスは2-Cに在席しております」


 私が頭を下げると、ふわっとした微笑みを向けられました。

な、何なんですか。先程から!!

その微笑み、反則では!?女子生徒に何を言ってるんですかって話ですけど!!

………いえ確かにこの歳まで若君のお世話でてんてこ舞いで!若いのに枯れて喪女気味?何て言われては御座いますが!!


「お前さ、転生者ですよね」

「ごふっ!?」


 一応喫茶店の初体験を経験中、で鼻から紅茶を吹きそうに……いえ、嘘です。ちょっと垂れました。


「うわ汚。大丈夫です?」

「だだだ……大丈夫れござひます」


 ハンカチを高速で出して、鼻に当てて体裁を整えました。自己ベスト更新致しました。

仮にも侍従を名乗るもの。身嗜みに必要な物は粗方持ってます。ですが、体裁を考えてレースのハンカチ……うう、吸い取りが悪う御座います!!


「使ってくださいな」

「あ、はい……有難う御座います」


 三和琴子が渡してきたのは、この喫茶店の壁と同じパステルブルーのハンカチでした。

リンゴと鳥の絵が端っこにプリントされていますね。

か、可愛らしいですね。私の見せかけの女子力より実用的ですし。


「んで、問いに答えてくださいね。お前、此処ゲームの世界だと思ってるクチの転生者ですよね」

「……あの、三和さん……」

「問いに答えろ……ね?」


 何故この人こんなに迫力あるんでしょう!?

さっきから細めた目が笑っておられないんですよ!!

空色の目が怖いです!!


「………」

「………」


 ニコニコニコニコ、と微笑みを絶やさないでいる三和琴子。

父に叱られるよりも迫力と圧力が強すぎるとでも申しましょうか。

一体何故、逆らえない雰囲気なのでしょう。


「……はい、その通りで御座います……」

「ふーん。やっぱそーかそーですか」


 うう、認めてしまいました。

私のお返事に納得されたのか、三和琴子は自分の注文した紅茶と林檎のワッフルを頬張っておられますね。頬を膨らませた姿が可愛らしく……邪気なく見えます。全くそんなことは無かったのですが。

 私が頼んだのは紅茶のみで御座います。何故ならとても喉を通りそうに無いからです。

ですが、林檎チップスと紅茶アイスで飾られたワッフルはとても可愛くて美味しそうですね……。

……後日、時間を作った上で訪れたいと思います。勿論一人で平和な気持ちの上で愛でて食べるので御座います。是非とも平和な息抜きをば!!


 って、そうでは有りませんでした。

三和琴子はそれから全く話をせず、ワッフルに夢中で御座いました。

………えっと、もっとお話が発展するのでは?そういう流れで御座いましたよね?


「……あの」

「あん?」

「それで、貴方は……」

「ああ?言いたいことが有るなら最後まで言えばどうです?答えてやるかどーかは分かんねえですけど」


 い、意地が悪いタイプで御座いましたね……。

いえ、此処まで見ていて善良そうなタイプには、とんと、全く、いかにも!見えませんでしたけれど。


「その、貴女も転生者なんですか?」

「ちゃんと考えました?でなきゃこんな質問すると思います?」


 態々下から上目づかいで睨まないで欲しかったのですが……。い、いたたまれません。ええええ!!我ながらアホな質問をしたと反省してますよ!!恥ずかしくて顔が火照って参りました!!


「……思いません。あの、」

「だよなーハズレ~。転生者はあの野良ブスの方でーす」


 違うんですか!!

しかも、言い方が意地悪で御座いますね!!

ですが、の、野良ブスだなんて。……って、ええ?と、轟メアリさんが!?


「の、野良……で御座いますか?」

「轟メアリだよ。アイツから色々聞いてんの」

「そ、そうなんですか……」


 ……轟メアリさんが転生者……!?……だとしてもよく、この怖い人に詳細を話せましたね……。

この人、今日の会話だけでも滅茶苦茶怖いですけど……!!


「あの女、パッパラパーの不毛地帯なんで」

「……は、はあ」


 のっけから酷いとは思ってはいましたが、散々で御座いますね。


「7歳の時によ、初対面で笑顔で『やったあ!サポートキャラゲット!私大当たり!愛されヒロイン人生だあ!!えへへ!!』とか抜かしやがったんだよ?信じられないですね」

「……へ、へえ」


 そ、そうか。轟メアリさん…………やらかしてしまわれたんですね。

頭がおかしいと思われかねない行動を取っちゃったんで御座いますね……。この、とても怖い子の前で……。

 そして、推測するに、轟メアリさんと三和琴子は、幼馴染のようです。

……情報が足りません!!


「イラッと来たから、即砂場に蹴り入れてやりましたけど」

「……さ、左様でしたか」


 ……子供の頃から暴力……お転婆さん的なようです。

現場が砂場で良かったと思うことに致します。


「そんで泣かせて話を聞いてみたらよ」

「は、はい」


 泣かせたんですか……。轟メアリさんには悪いですが、その場にいなくて良かったと心底思いました……。


「アイツが男を捕まえるクソくだらない為に、ですよ。

俺の高校生活が犠牲になるって聞いて」

「は、はあ……」


 と言うか、何故か自称が俺に変わられたんですけど……ここ、突っ込んでいい所なんでしょうか?

ボクっ子ならぬ俺っ子なんでしょうか。

いえ、一人称はどうでも宜しいですね。

この、目の前の子の変貌ぶり……恐ろしすぎます。


「腹立ったからもう一度砂場に沈めてやったんですよね」

「……そ、そうですか……」


 最早オウムもビックリな程に、肯定しか出て参りません……。


「なあ、不破ミズハ。

あのクソムカつくポンコツピンクな野良ブスを助ける運命の俺、可哀想だと思いません?

思いますよね?思うに決まってますよねえ?」


 近い!!近い!!何故私に迫り来るんで御座いましょう!?

距離が近い!!い、意外と睫毛長いですし、お顔立ちは繊細ですが少し男の子みたいな……?

 って、ヒイイ要らん事気付いていてしまいました!!

変な錯覚は止めてくださいませ私の脳内!!


「あああの、は、はい?」

「どうせならお前の『悪役令嬢』とか言う意味判らん立場で、アイツを苛め倒す立場が良かった……」


 ええ!?私が轟メアリさんを苛めると思われているんですか!?

そ、そりゃ立場的にそう……なるんですが、今の時点でそんな気は全く御座いませんし、出来ないと魂に刻まれましたが!?

 そして、貴女が苛め……いえ、申せませんね!!


「あ、あの……私、別に轟さんを苛める気は全く……」

「ああ?」

「ひっ!!」


 な、何で睨まれるんですか!?

こここ声が怖いです!!


「お前、そんな縦ロールの癖して主人公苛めねえとか『ゲームの世界観』とやら舐めてんです?」

「こここコレは山茶花坂の奥方様の御趣味なだけで、私はこんな重たい頭嫌なんです!!」

 

 そうなんですよ!!

やっぱりミズハちゃんはガチなお嬢様ルックが可愛いの!だから縦ロールで!!とか意味の解らない理由で縦ロールなんですよ!!御命令に背くわけには行きませんから、切りたいのに切れないんです!!

 これもゲームの強制力かと思って我慢してますけど!!ゲーム期間が終わったら切りたいんですよ!!

と言うか談判するのも辞さない所存で、切りますから!!


「ふーん」

「ひゃ」


 じ、ジロジロ見ないで欲しいです。喧嘩売られてるみたいな気しかしません!!買いませんから、そのくっつきそうな姿勢戻してください!!


「ちょっと頭こっちに」

「は、はい?」

「あー、いーです。横に座ります」

「はい!?」


 私が心からビビっているのにも関わらず、三和琴子は移動してきたんですが!!

隣に!座られたのですか!!何故!!


「ひぃ!?」

「縦ロールって意外と脆いんですね。もっとガッチガチに固めてんのかと思ったんですけど」


 に、に……握りつぶされた!!

縦ロールの一部が……三和琴子の手の中で……バラバラ崩れていくのをボンヤリと眺めていました。

………私の髪を結ってくれている、奥方様御付きの君の成果が崩れてます……。

い、い、いや、何故に!?


「御免ね、ミズハちゃん。ちょっと興味津々だったから触っちゃったんですよお」

「きょ、興味、津々………!?」


 私の崩された白い髪が、三和琴子の手、手の中に!!

本人はさらさらしてんなーと仰ってますが!!そ、それにな、名前!お、お呼び捨てを!!


「バネみたいに粉々にしても直るのかと」

「バネは粉々になったら戻りません!!」

「突っ込み出来るほどちょっとは和みました?」


「な、和む訳御座いません!!」


 だって目の奥が笑っていないんですよ!!

さっきは春のようだった空色が……寒々とした冬の空のような色に見えます!!瞳が怖いですこの方!!


「そんで、お前は誰狙い?バカ大王?ナルシスト関白?シンバル大名?ムッツリ瓦版屋?」


 何なんでしょう、そのラインナップは!!

三輪琴子の瞳に、あんぐりと口を開けた私が映っています!!ま、マヌケな表情ですが、構っておれません!


「滅茶苦茶突っ込みとう御座いますが!?ちょっと待ってください!!」

「はー?どれ?」

「全部ですよ!おおきみって何です!?大名が何でシンバル!?え、それに、関白ときて、瓦版屋って!!

なんでそんないきなり身分が下で長屋に住んでそうなんですか!?江戸時代入ってるんですか!?」


 時代物でしたっけ!?普通の学園もの乙女ゲームじゃなかったでした!?いえ、現代ベースの筈で御座いますよね!?時代錯誤な物言いとしきたりは若君の口調と山茶花坂のお家だけで充分で御座います!!


「ツッコミ長ー。誰も何も野良ブスがそう言いやがったんですよ?」


 真剣にどんなゲームだか、僅かな情報も頭から消えそうで御座います!!!!

助けてくださいませ!!誰か!!どなたか!!お願いですので攻略本を頂けませんか!!


 因みにナルシスト関白と評されたのは我らが若君の弟君、山茶花坂山葵様で御座いました。

………確かにこの頃よくお鏡をご覧になってるお姿を遠目より拝見致しますが、あのお年頃なら未だ宜しいのではありませんかしら。


 ………しかし、何故関白との渾名が……?

兄である若君共々少し浮世離れされてますが、その辺でしょうか。かの旧家には長い歴史の中で関白やってそうですが。




攻略対象の二つ名が変?仕様で御座います。


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