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悪役令嬢は召された彼を還せない  作者: 宇和マチカ


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34/35

彼と彼女が消えた後先

お読み頂き有り難う御座います。

話としては、ラストですね。

残された人達の話です。

「本場のガサ入れスゲー、としか感想がナッシングだわ」

「……本場のガサ入れって何だよ」

「アメリケンな組織とかがドラマで使ってる番号札使うんだーと」

「此処は日本だろ」

「ははは、日本のガサ入れは時代劇しか見たこと無くてね!」

「極端だな!」


 お隣には元ちゅうにいや、ちょっと黒歴史をこなしてきた1コ下な美少年。ツッコミもこの頃冴え渡ってきたよ!

 そんなお方と一緒だなんて、ゴーカっすね自分!イエイ!

 とちょっと前なら受かれてたかもねー。


 ちょっと前なら、隣には琴子が居たんだよ。何故か女装を強要されるチョー怖いサポートキャラな幼馴染みがね。

 でも今は、殆ど彼、山葵君の側に居るね。何となく。

 きっと私、寂しいのかも。


「まさか潰れるとはダブル」

「言いたいことは分かるけど変だな」

「変則的な倒置法なんだけど、ダメかな」

「だから、僕には通じるけどって言ってるだろう」


 まあ、言葉の通りなんだけどさ。

 スゲーのよ。色々在り過ぎやり過ぎ起こり過ぎ。

 ヒロインである私、轟メアリを置き去りにして、本当に色々と有りました。置き去り蚊帳の外ヒロインです。悲しすぎた。


 ミズハちゃんが、襲われてから。

 彼女が入院する病院に、お父さんが襲撃して何故かお母さんを差したいや斬った?ドス的なモノで、だよ。

 何でんなもんお持ちなの。裏稼業なのかよ銃刀法仕事して仕事!!


 でも、其処まで起こってしまったのに、警察は来なかった。

 その時さ、『あ、此処は安心安全な乙女ゲーの世界でも何でもないんだー!汚いことも平気で起こってる!事故を揉み消した奴らが住まう前と変わらない!』

 って気付いちゃったんだよね。滅茶苦茶遅いよね。

 何と言うか、フィルターに支配されまくってたの私だったんだよ。フィルターの下僕。だから、ノイジーでマイノリティーだったのかも。

 いや今もそんなバカスカ友人は居ないけどね。寧ろ、スズシさん位しか女子な友達いねーかもですよ。でも脱ボッチ!

 スズシさんは、お邪麿ぼったんこと牡丹君の許嫁さんなんだよ。

 あれからずっと、塞ぎ混んでるんだって。


 そう、その、あの日。

 ミズハちゃんの入院が長引いてもいいように、ノート作ってたんだけどさ。良く考えりゃクラス違うから役立たないって居なくなった後に気付いたよ。バカだね。気遣い空回り過ぎだからヒロイン失格するよねそりゃ。


 そう、ミズハちゃんは居なくなっちゃった。

 琴子と一緒に居なくなっちゃったんだ。

 いや、あの子は琴子でいいのかな。本名すら知らねーの私。


「メアリ、泣くな」

「ないでにゃーっず!」


 ちょっと、我が身が切なくてさ。そんで解体現場の土埃が目に染みただけだよ。


「ずっ、山葵君、ハンカチ持ち歩いてんの凄いね。私鞄にしか入ってない」

「自分で洗濯したから、アイロンがちょっと、難しかったんだ」

「ううん、いい柔軟剤の香りがする。自分でアイロンも凄いよ!」


 ちょっと背が伸びた山葵君は、はにかんでくれた。



 忘れ物を取りに、スズシさんがミズハちゃんが琴子と山茶花坂のお屋敷に入ってったんだって。

 こっそり取ってくるつもりだったらしいよ。

 そりゃそうだよね。追い払われてんだから物ぐらい取りに行かせろって話だよ。


 でもさ。

 何故か、駐車場に車を駐車したスズシさんの元にふたりとも帰ってこなかった。

 慌てたスズシさんは、自分が付いて行かなかった事を後悔して、通報したそう。


 其処で見たのは、何故か大破したお屋敷。

 でっかいハンマーで叩き壊したような、惨状だったんだって。

 不思議なのは、人の手で動かせないようなもの。お庭の大きい石や、松の木なんかが、酷かったんだって。


 生存者は、ゼロ。

 詳しくは教えて貰えなかったけど、多分滅茶苦茶な殺され方をしてたんだろうと思うよ。

 一応前の人生じゃ成人してたよ。

 嫌な奴のザマア展開はウマウマでもさ、グロいのは確かに聞きたくない。

 それに、それどころじゃなかった。


 入っていった筈のふたりは、見付からなかったんだよ。


「何でや、ミズハ!ミズハは!?ミズハ!!何処なんやミズハ!?ミズハーーーーー!」


 牡丹君の慟哭の前に、何を言えたかな。

 あの時、私は無力さに叩きのめされてた。

 何が先の展開知ってる、だよ。

 何にも変えられなかったのにさ。

 うん、今でもトゲがジワジワ残ってるよ。山葵君が必死で慰めてくれたから、何とか立ててる。

 悪夢に飛び起きながらも、自我を保ててるのは、正直彼と、スズシさんのお陰。メンタル惰弱な私に繊細牡丹君は彼等に足を向けて寝られねーんで御座います。


 そして、今。

 山茶花坂の親御さんに、ミズハちゃんのお父さん達の色々悪事がスズシさんのお家によって暴かれた。

 新聞やTVが押し寄せて、素人も押し寄せて。

 一時期女神学園も閉鎖される程に、大混乱。ネットやニュースで連日在ること無いこと散々流れてた。

 まあ、私にはゲームが在るからね!

 ……程程に見てました。

 休校の間に山葵君に布教したら、何故かホラーゲームに嵌まりおったよ。


 ……で、女神学園も叩かれたねー。ボクボク叩かれてたよー。

 とある女生徒が襲われたにも関わらず、放置したこと。彼女が父親から虐待を受けていたのにそれも放置したこと。

 山茶花坂を含め、特定の生徒への過剰な依怙贔屓等々。

 清廉潔白だった学園が何故!?みたいな特集も組まれてたね。いや、学校であのお姉の傍若無人を放置したり私をボッチにした罪もあるからね!何っにも触れられて無かったけどね!ふんっだ!注目とかされたくないし!ぐすん!


 琴子の家は、不気味な程に静かだった。

 あの家は、存在してんのかとばっかりに。日常に忙殺されてたら、いつの間にか引っ越していた。

 ……何で琴子に女装を強要したのかの謎は、置き去り。

 それを嗅ぎ付けたマスコミ曰く、虐待の一種だとさ。

 知らない人なのに、知らんがなって事を堂々と言うのに呆れるよねー。……本当に、煙のように居なくなってしまったよ。


「……うう、琴子。ミズハちゃん。ミズハちゃんのお母さんも、どこ行ったのさ」

「あれから、半年か……」


 そう、忽然と消えた人はもうひとり。

 病院で、ミズハちゃんのお母さんも消えた。

 手術を受けて、お医者さんが目を離した一瞬の内に。

 まるで、手品のように。


 嘘臭いにも程がねーのよ?此処は魔法使いは存在しねーってのよ。3と4の世界観じゃないのだよ。

 ……このボヤキも、今では誰も分かりあえない。


「病院も、近々潰れるんだってな」

「そっかあ。……本当に……」


 私達の目の前には、重機でなぎ倒され、崩される校舎。

 一年ちょっと通った学舎は、スキャンダルに飲み込まれ、あっという間に経営破綻に陥り売却されることになった。


 今私と山葵君に牡丹君が通ってるのは、公立の学校。

 牡丹君と山葵君は、山茶花坂の家から籍を抜いて、厚木さんになってる。牡丹君は、18になったらスズシさんと結婚するらしいよ。

 ……山茶花坂でいると危ないから、財産放棄をしたんだって。


「……今でも、山茶花坂の隠された宝物とやらを、親戚共が奪い合ってるらしい」

「そっかあ……」

「殆ど壊れてしまってるのに、何が欲しいんだか」


 大破したお屋敷は、本当に細々したものも壊したんだね……。

 学校も壊れていく。3人で駄弁った中庭も、瓦礫に覆われていく。

 もし、琴子とミズハちゃんがいたらさあ、秋にはどんな話をしたかなあ。


「……」

「メアリ、行こう。甘いものでも食べて帰ろう」


 山葵君は涙をダラダラ流す私の手を握って、引いてくれた。


 私は、山葵君には言ってないことがある。

 ミズハちゃんからお手紙が届いたこと。

 多分、居なくなる前に書かれたものだって、スズシさんから受け取った。


 たった一言だけ。


「貴女の憂いは消えますね」


 ……私はミズハちゃんを掛け替えの無いお友達だと、思っている。優しい彼女が傷付くのはとても辛い。今どうしているのか、本当に気になる。

 でも、心の奥底の恐れている気持ちが、見透かされたんだろうか。

 凝りのように、思い出す度に心をゴリッと押し潰すんだ。

 でも、最近思うんだよ。

 どんな大好きな人にだって気に入らない面があるもん。だから、この形にしきれない恐れごと、ミズハちゃんに会いたい。ビビってるのめっちゃ謝りたい。琴子に冷たい目で見られて小突かれるんだよ。


 だから、ミズハちゃん。何時でも帰ってきてよ。


「役目放棄。悪役令嬢では、還せないもの」

「へえっ!?」


 だ、誰!?


「ど、どうしたんだメアリ!?」

「ちょ、今、幽霊みたいなウィスパーボイスが!」

「……?回りに人は一杯居るけど、誰かの会話じゃないのか?」

「そ、そっかなあ」


 そんな誰かの会話に『悪役令嬢』なんて出るかなあ。そういうラノベを語るオタクの会話?


 でも、どっかで聞いた声……?


「押し付けられて、ラッキーね。くすくす」

「ほわあっ!?」

「メアリ!?」


 狼狽える私の目に映ったのは、背の低いペールブルーの髪の女の子と結構デカイ背のお兄さんのカップルだった。


「……あ、あのカップル焼き芋持ってる。美味しそう」

「あ?え、ああ。それが気になってたのか」


 いやそーじゃねーのよ。

 あれ、でもあの女の子……いや、歳上だな。二十歳過ぎてるけど、妖艶な美少女って雰囲気の……。


 あれ、何処かで。

 そうだよ、あの人たちをもう数年若返らせたら。


「愚かな欲張りは、要らないものを背負いこんで消えた」

「うん?モブバの新メニューかな?」


 ……あれ、あの娘、悪役令嬢日向アリア。そしてあの、隠しキャラの、怪盗先生!?

 まさか、アリアは何か知ってるの!?いやそもそも、何で前作の私達より歳上なのお!?


「待って!!そこのあ……美女&怪盗先生!!」

「ええ!?メアリ!?誰だそれは!?コケるぞ!?」

「うおりゃうおえええ!?」


 いやねえ。

 焦っちゃいかんと言うのがよーく分かったわ!

 ……顔は兎も角、腕の擦り傷ひでー!


「頼むから、メアリだけはもう居なくならないでくれ!!」

「いや山葵君大袈裟!!コケただけだから!!」

「頭打ったミズハが居なくなったんだぞ!?頼むから動くなよ!!」


 ……。

 めっちゃ泣かれた。すみません、トラウマ刺激しやした。


 と、取り敢えず!

 ……山葵君を幸せにしつつ、ミズハちゃんと琴子との再会出来るように、頑張ります!!

 ……しかし、悪役令嬢ってめっちゃ怖いな。アレに関わんの?

 が、頑張るよ!だから、待っててね!

 嫌がらないでよ!!






あの人達のエピローグを次にお送り致します。

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