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ゴミ捨てに来ただけですのに

わあ、お読み頂き有り難う御座います!

 ゲームが始まったのが、恐らく今年4月の筈なので、未だ主人公と廊下でニアミスした位なんですけど……。


「大体貴女ねえ!!空っぽ頭野良ブスの癖に選り好みできる立場なんですかオラァ!!」

「ひひひ酷いよおお!!わ、私だって努力してるんだよお!!」

「煩いんですよボケカスクズが!その頭、ちったあ耕してから幼馴染に行けっつったでしょう!?

お花も咲けねえ畑にもなれねえ栄養失調の頭の中身しなさってまあ!!

この草木も生えない不毛地帯脳味噌!!」


 凄く丁寧に喋っている割に、暴言が……聞こえます。

膝丈のスカートから伸びる足が、後者の壁を回し蹴りっている……?のが見えるんですが、え?

……取り敢えず、あの光景は……怖すぎる光景は、一体何なんですか……?


 え?もしや、イジメの現場?そんな、どうしましょう。

え、あの子……ヒロインの、えっと、やっぱり轟メアリですよね。

あの茶色とピンクのグラデーションおさげ頭は……多分、そうです。ぼんやりと覚えている雑誌の絵がそのまま具現化したような可愛い子。


 そして、丁寧な口調で罵りながら彼女の壁ドンではなく、横の壁を足ドン……?兎に角蹴りながら罵ってるのは……サポートキャラの……三和琴子……?

え、サポートキャラがヒロイン苛めてるんですか?

 何故に。

主人公って、サポートキャラと仲良しなんじゃ無かったんですか?


マジックペンを主人公の頬っぺたににグリグリしてますけど……い、蓋付いてるんで、まだこう、ギリギリ……傷害現場じゃないようですが。


「ヒイイ油性は止めてえ!!蓋が取れたら顔に付いちゃううううう!!」

「さあて、水性かもねえ、どっちでしょうねえ」


 わ、悪そうな声……!!

でも……昨日見かけたけましたけれど、あの二人、仲良さげだった……ように見えましたよ?ええ、あまり姿は見えなかったので多分ですけどあの声はあの方々の筈です。

ええと、どうでしたでしょう。廊下ですれ違った時に……。


「ふふっ、もうメアリちゃんったら。人の言う事ちゃあんと聞かないと不慮の事故に陥っちゃいますよ」

「ふ、ふへええ……が、頑張りまっす!」


 ……いや、穏便な会話じゃ無かったから、思わず振り返って二度見したんでしたっけ。

そして、アレ……どう見ても主人公は足の甲を踏まれていた……ような……気がします。

頭が理解を拒否していたのか見て見ぬふりをしてしまったような。


「どうなさいましたのミズハ様」

「い、いえ……耳鳴り?空耳ですかしら」

「まあ、ご気分でも!?」


 とまあ、何故か何時の間にか取り巻きになってる女子生徒と、共に保健室行ったんでしったっけ。

……それにしても、私取り巻き募集してないんですけど……何時の間にああいう女子は存在していたんでしょうね。そして何故私を様付けなさるのか。そして何故キャーキャー登校の度に歓声をあげられますのか。

もしかしてゲーム補正という感じでしょうか………?侍従なのにですか?


「……そこのおっ!!」

「え!?うわぎゃっ!!不破ミズハだ!?」


 叫ばれた声と共に、ぶんっ!!と耳元で風と音が鳴りました。え、何かが顔の横を飛んでいったんですか!?

け、気配を自然に消してしまっていたから不審に思われたようですが、ええ!?


 恐る恐る足元に転がったのは……あ、消しゴムですね。

お花のような、鳥のような形の………赤い消しゴムです。

ああ良かったどう見ても消しゴム……吃驚した………。刃物じゃなくて良かったですが。


 じゃなくてですね!しまった!!

覗き見していたのがバレてしまいました!!

 だ、だってしょうがなくないです!?ゴミ捨てを引き受けました身だったんだから通りますよ!!

其処、ゴミ置き場なんですし!!

え、何故『悪役令嬢』の役割なのに、何でゴミ捨て当番やってるって?手下に押し付けないのって?


 ……多分前の私の本来の性根はそうそう抜けないらしくて、そんな高飛車お嬢様?悪役?的な怖いキャラは無理なんですよ……!!

勿論手下も募集もしておりませんし!


 記憶が戻ったのって、5歳位の時でしたけど。前世の記憶というか、習慣は何故か抜けませんでしたね。

若干歳の割にじじむさかったでしょうか?親に「変な子ねえ」って首を傾げられたものでしたとも!!


「……ひっ……」


 か、体が動きません……。

三和琴子が……三和琴子に睨まれて動けません……!!

この悪役令嬢の私が……ってセレブにお仕えする単なる一般ピープルで御座います!!調子に乗りましたすみません!!

 特殊技能は御座いません!明晰な頭脳も無いです!!欲しいです!!本来は有るものなんですか!?そうでしょうね!

きっと、このふたりと会うってことは今、ゲーム始まってますよね!?

悪役令嬢ってどうやるんですか!?

私はどういう技能持ちなんですか!?


「ねえ……見・た・ん・で・す・か?」

「ひえ!?」

「ねーえ不破さん。今の、見いたあ?」

 

 私の身長とほぼ変わらない……いえ、少し高い目線の三和琴子は……私の顎、いや頬を片手で抑え、にこりと。

綺麗な目。

 まさに今の春の空のような青い目。

その微笑みに見とれてしまいました。

よく見れば、おとなしげな風貌で、整ったお顔立ちです。


 手にはお花か鳥の形の消しゴムが………5個位有りますよ。好きなんですかね!?でも何故消しゴム!?さっきの顔の側を通った衝撃が思い出されます!!危ないですから!!このひと危険人物ですから!!見とれてる場合じゃ御座いません!!


 でも、さらり、とその灰色の肩までの髪が……彼女が首を傾げると………ハラハラと桜が散って……ふわりと髪に止まりました。

桜をバックに微笑む彼女は、まるで、1枚のスチルのようで。


………ドキン、ズキンズキン。


 え?今の!私の心臓の鼓動ですか?


「不破さん?」


 ……いやいやいや、やってる事ヤンキーの吊し上げと同義ですよね!?

何がスチルですよ正気に返りましょう私!!大体この子、女の子ですよ!!恐怖で拍動も早まりますよ!!そうに違い御座いません!

マジックペンが怖いですし!!消しゴムもです!


「みみみみみ見てません見ておりません見て御座いません!!」

「私があ、メアリちゃんに掌底叩き込んだの、見たんですかあ?」

「え!?横の壁を蹴っただけではなくですか!?」

「やっぱり見たんですねえええ」


 引っかかってしまいました!!

近づけてきた顔が………怖いです!!ああ、目が、こんなに綺麗なのに恐ろしいです!!

こんな、こんな幼稚な手にいいいいい!!私の馬鹿ああああ!!


「チッ、しゃーねえですね。話つけっか」

「おおおお話!?」


 何のお話ですか!?私には話すことなんて御座いませんよ!!と申し上げたいのに口が動きません!!元々口下手な方ですけれど!!口惜しい!!


「おいメアリ。お前もう帰っていいですよ」

「へひっ!?」


 吃驚してピョンって跳ねる人を初めて見ました。不躾にマジマジと見てしまいましたが。

……ええ、お気持ちは、分かります。三和琴子が……物凄く迫力あるからですね……。こんなに儚げでおとなしげなお顔立ちなのに!


「んだァ?未だお話足りねえってことですかぁ?」


 み、三和琴子……こ、こんなキャラクターでした!?

いえ、初代もリメイクもゲームをやっていないので存じ上げませんが!

よく聞けば、お声も何だか男子みたいに低いですし……。

ああ、何故ゲームをやらなかったんでしょう!?せめて設定を予習しておけば!!


「うひひひひひえええええ!!即ガチッと帰りますうううう!!」

「と、轟さん!?」

「ご、ごみんなしゃい……悪役令嬢さんも怖いけど、琴子はもっと怖いのおおおお!!!

恨まないでええええ!!」

「そ、そんな……!?」


 私、恐らく『悪役令嬢』でしょう。

主人公の前に立ち塞がる立場の筈なんでしょう。

ですが、現実は……ヒロインに身代わりにされて、サポートキャラに右手を拘束されてしまいました。

 おかしくありません!?

何でですか!!どうしてでしょう!?

私が一体何をしたって言うんですか!!未だ何もしておりません!!


「……」

「じゃあ、行きましょおっか、不破さん。あ、ゴミ捨てるんでした?手伝いますね。お礼は結構ですよお」


 ……問答無用で我が2-Cのゴミ箱が奪われてしまいました。

どうでも宜しいですが、私のクラスは轟メアリと三和琴子のふたつ隣のクラスです。無関係です。

ええ?……に、逃げたいのに……足が動きません。一応、これでも武術を嗜んで……運動神経が無さすぎて不合格を食らった身では御座いますが!


 それでも、一介の女子生徒である筈の三和琴子は……ゴーゴンか何かなんでしょうか。この世界、ファンタジー能力も有りなんでしょうか。そんな馬鹿な。

剣と魔法とファンタジーは3と4の筈で御座います。そもそも、お恥ずかしながら選べるならばあちらに転生を憧れていた身です。

 それに、一応今まで生きてきましたが、そんな吃驚ファンタジー能力に出会った事御座いませんし……。

あれ、和風ベースの乙女ゲームだった、筈なのに?え、ええと?


「じゃあ不破さんのクラスにゴミ箱返しに行きましょおっか。

帰りに放課後デートですね、恥ずかしいな」

「で、デート……?」


 女子生徒とですか。

しかも悪役令嬢とサポートキャラが仲良さげに、ですか?

……見た事ない光景過ぎます、前代未聞過ぎです。

そんなイベント、無かった筈です。そんな怖すぎるイベント無かったでしょう!?


 ですが、私は三和琴子から逃げ出すことは出来ませんでした。

片手で2-Cのゴミ箱を持ち、片手で私の手を繋ぎ……と言うか本当にがっちりと握ったまま離しませんし……。

細いのに何処からそんな力出るんですか……。

……でも、三和琴子の手、意外に骨ばってますね。何故でしょう。

若君のお手よりは小さいですが。


 いえ、若君に連絡しないと。

……冷やかされそうですね。相手は女子生徒ですのに。



ヒロインと悪役令嬢、ちょっとビビリな展開なようです(そういう問題では)

三和琴子はシリーズのサポートキャラ中、一番気が強くてあくどいです。

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