ね?三度目の正直って、言うでしょう?
お読み頂き有難う御座います。
とある電波による、ある意味ホラー回です。
残酷な描写に自衛くださいませ。
始まりは、小さな神殿だった。屋根は有ったけど、綺麗な飾りも豪華な調度品もない古い神殿。掃除だけはされてるけど、古くてボロボロ。
そんな所で、来る日も来る日も石を運んで、奴隷みたいに働かされた。
衣食住には困らなかったけど、そんなの最低限、当たり前でしょ?
日の沈む前に仕事を終えてる?
当たり前じゃない、こき使うなんて最低よ。
寧ろ、こんな可愛い私を働かせてるんだから、もっとキラキラで可愛い服とか、素敵な小物とか、そうだ、本で見た豪華なお食事がしてみたい。
お城に住んで、素敵な王子様に囲まれて、召使いも沢山で豪華な生活を送るの。
前は、そうだったのに。前は、きっとお姫様だったのよ。そうよ。そうに違いないわ。
こんな、薄汚れた服私に相応しくない。
こんな質素な食事、私が食べるべきじゃない。
私はもっと、キラキラ出来るの。しなきゃいけないの!
「なあ、リミエ。何でお前の分運んでないの」
「私疲れちゃったー。やっといて」
小さいけど、石なんて運んでたら私の綺麗な爪が割れちゃう。
私は他の奴らとは違うの。見なさい、横の汚い女の手なんてボロボロ。笑えちゃう。顔も服も粉だらけで汚いし、みすぼらしい!!
……なのに、何で男に薬なんて貢がせてるの。生意気。
引っ叩いて、薬を池に放り込んでやった。泣いて喚いてたけど、いい気味。不相応なのよ!
「何でお前、彫刻を覚えないの」
「石なんて彫りたくないわ。あんな気味悪い石像も作るのイヤよ」
私に相応しくないって言ってあげてる。なのに皆、私を疎むような目で見るの。
だから思い知らせてやったの。私がお前らと違う、選ばれた人間だってことを。
アイツ等に勿体ない、そこらに有った材料で素晴らしい私の作品を見せてやったら、ぽかんとしていた。
「素敵でしょ?綺麗なもの編むのは得意よ。だから、もっと良いものと交換してよ」
そう、例えば素敵なドレスとか。この前店に並んでいた、綺麗な薄紅のドレスなんて良いわよね。
こんな石を刻むような仕事の癖に貯め込んでるのは知ってるのよ。
私は優しいから、自発的に私にあげたいようにしてあげる。
あんな、端っこで石の粉だらけになってるような汚い子じゃなくて、私の方が良いでしょ?
勿論、私に相応しい人が居ればどうでも良いけれど、今は居ないしね。
「ねえ、こんな高そうなお花飾りにレース、何処から持ってきたの。まさか……」
あれ?何だか、廊下の様子が騒がしい。
「どうして他国の王族の方々を出迎えるの為の飾り籠が足りないんだ!?」
「一体誰が」
「そこの、茶色と薄赤との女が飾りを毟ってたよ」
何なの、この灰色の髪の子供。豪華な服なんか着て生意気!
そんな大したことしてないでしょ。何告げ口してるの!?
「なんてことを。この花は、雨の中山に行って必死で取った花だったのに」
「ああ、こんなに乱暴なことをして!!この飾りは直ぐ壊れてしまうのに!!」
「私が必死で編んだレース飾りもこんな、切れてる!!」
「この籠はお金を出して借りてきたものなのに!!」
「許せない!!」
「もう追い出すべきだ!!こんな奴、同族じゃない!!」
そんなの知らなかった。
何なの、その目。
何で私のことを貶めるのよ。
後退ると、何かにぶつかって、私を見つめる青い目が、目に付いた。
空色の、底知れぬ気味悪い、空虚な目。
「何よ、お前のせいで、皆にそんな目で見られるんだ。
その、ムカつく青い目が……そんな目で見るな!!」
私はカッとなって、見上げていた子供を、突き飛ばした。
そうしたら、あの不気味な石像に当たって、跡形もなく消えてしまった。
「あああああああああ!?」
「で、殿下!!殿下あああああ!!」
何よ、大袈裟な。どうせ隠れてるのよ。
本当に碌な事をしない子供!!
「……成程、最後の欠片は、お前だったのか」
「で、殿下!!申し訳御座いません!!我々の監督不足で」
何?周りの奴ら、平伏して情けない。
……。
何、この綺麗なひとは。
「何て私に相応しいの、貴方」
「リミエ!?お前、この方を何方だと!!」
見たことの無いキラキラした金髪に、薄い茶色の瞳は凍りついたように澄み切っている。
傷一つない白い頬は透き通って、まるで夢の中の王子様。
私は、沸き立つ気持ちを抑えられずに彼に近寄った。
のに、誰かが私を床に押さえつけられる。
「離して!!」
「不敬だぞ!!この方は」
「私を迎えに来てくれたんでしょう!?」
「ジェン!!あぁあぁぁ!!」
「……」
は?何その横の女。ババアじゃん。ああ、あのガキの母親?
しょうがないじゃん、いなくなったもんは。ウザいなあ。
何でそんな女を抱いてるの?王子様、こっち来てよ。
あ、私を探してたのね。見つからないから、そのババアに子供を産ませたんだ。
御免ね、でも、私が見つかったんだからそんな女も子供も要らないよね?
「王子様の名前を教えて……ぐもがっ!?」
これ何!?
口の中に、湧き出てきた何かが私の視界を奪って。
何これ、草?土?
まさか、神殿が落ちてきたの?本当にボロいんだから。
でも私には王子様が居るもんね。ほら、退きなさいよそこの女。
あれ?何で、石像が迫ってくるの?危ないじゃない。早く、助けてよ。何で、こんなに沢山。え、嫌だわ、怖い!怖い!!怖い!!!
それが、1つ目の終わり。
2つ目は全然、違うところだった。
パパは、顔は良くないけどゲーム会社の社長。暮らしは前よりは少しマシかな。
ママは勉強しろとか、お手伝いしろとか口煩くて好きじゃない。お金有るんだから、節約とか言ってケチ臭い。本当に卑しい。本当にみみっちいのよ。
可愛くて好きな服や、欲しい物に溢れて、楽しかった。
パパの会社は、乙女ゲームでブームになった会社なの。だから、本当に儲かったみたい。後で知って、私にもっと物を買ってくれれば良かったのにって思ったわ。
勿論、ミエコはちゃんとゲームをやってあげたわ。
あんな小汚いオッサンやオバサン達が考えてる割には面白かった。私が行くと、何故か中に入れてくれないの。可愛い私を妬んでいるんだわ。
ちょっと、声を掛けたり、散らかしたり、物を持って帰るから?心が狭いわ。
パパの会社のものは、私のものじゃない。私のものをどうしようが勝手でしょ。何言ってるのか訳解らない。クビにして貰わなきゃ。
中学生になる頃に、会社に入れなくなってしまった。
ちょっと、倉庫に転がってたグッズを貰っただけなのに、本当にケチ。
腹が立つ時は作画の人間から貰って来た、私の王子様を眺める。
私が好きな、王子様。
キラキラした理想の金色の髪の王子様、ショーン王子。本当に彼は完璧。私に相応しい格好良さなの。
他のシリーズも面白かったし、他社のゲームもやったけど、彼が一番よね。
……あれ?ショーン王子様って、何処かで見たことあるかも?
私と彼は、運命なのかもね。ゲームの中に入れちゃったりして。
二十歳の誕生日。盛大にお祝いして欲しいのに、何だか家がゴチャゴチャしてる。
ママは何をしてるの?パパが死んじゃったって。
あっ、そう。
仕方ないんじゃない?
「リメイク?イベント?」
外部の手を借りると安くなるんですって。権利?それって高く売れるの?
素敵。パパが居なくなってから、碌に買い物も出来ないの。ママはご飯も作ってくれなくなった。
家は荒れ放題。全部、パパとママが無能だから。
会社は私が引き継いであげたから、ちゃんとお金を稼いでよね。
え、外部の人が仕事しない?
それ私に関係ある?ちゃんとアンタ達がやったら?
雇ってあげてるんだから、当然よね?
え、事故?あっ、そう。役立たずの運転手ね。外注でしょ?私関係ないから。
ショーン王子様の等身大フィギュアを作ったの。
え、版権?そんなの私の会社だから私のでしょ?え、会社のもの?イベントに出すから、返せ?
嫌よ。ふざけないで!!返して!返せ!!
また事故?また?また?
人が消えた?7人?トラックが横転?
それがどうしたの?そんな事よりイベントでしょ。
沢山お金を集めて、あのフィギュアより良いものを作るの。
辞める?借金って、何?
今までのツケを払う時って、どういうこと。
ストーカー容疑?事故隠蔽?両親殺害容疑!?
犯罪?どうして、皆、私をそんな蔑んだ目で見るの!?
マスコミが、知らない人達が追いかけて来る。
知らない。
パパが死んで煩いからママに黙ってもらっただけ。ちょっと紐の力を入れたら、舌を出して、醜かったのは、覚えてる。
何時の間にか、居なくなったけど。
華奢なバックストラップのゴールドのヒールは、自慢だった。
でも、走れない。捕まっちゃう。
靴を脱ぎ捨てて、たまりかねて逃げ込んだのは、私のコレクションを保管している倉庫。
何でこんなにミエコは惨めな事になったの?
高いコスメもドロドロの汗まみれ。可愛いハイブランドのスーツだって汚れてて。
これは、悪い夢。
そう、悪い夢よ。
また、違う世界に行かなきゃ。
だって、前は上手く行かなかったから、今度こそ。
あれ?これ、何で、こんな怖い顔の……女神像?
私のフィギュアは?
一杯注文を言って、まるで生きてるような、ショーン王子様は?本当の人のように造らせた、私だけの王子様は?
女神像って、私、あんな醜いもの造らせてない。
あんな趣味の悪い、もの。だから最新作のリメイクでは排除させたかったのに。
だって、私がルールだもの。
どうして、女神像がこんなに倉庫一杯に?
誰がこんな事を?息苦しい。
ごとり。ごとり。ごごっ。
あれ、どうして?
また、ごりっ、て。
壁際に、無かったのに。
「おい、轟エミリ」
目の前には、枯葉色の髪のウザいオッサン。顔はまあまあ悪くないけど名前何だっけ?モブの名前って無駄だよねー。
コイツ、奥さんに付きまといすぎて逃げられてやんの。キモイよねー!だから、凄ーくチョロかった。ちょーっと色々優しくしてやったら、お勤め先の子供を売るくらい何でもないみたい。悪い奴だよねー。
そう、私は轟エミリ。
メアリじゃなくて女神様に愛される、真のヒロインなんだよ。
あれは、夢だよね。今の役に立つ、夢。
そう、あんなの、エミリに相応しくないもん。
「此処が牡丹様の部屋だ。上手くやれよ」
春コートの下にはね、素敵な下着を着てるの。男の子が悩殺されちゃうの。ふふっ。
エミリの魅力で、体から隠しキャラを落としてあげる。その為に他の奴と寝て来てあげたんだから、エミリ優しいよね!
他の攻略対象は、その後で我慢することにして。イベントもこなしたかったのになあ。ちょっと会いに行っただけで、大袈裟なんだもん。
ホントは、3の世界に行きたかったのになあ。
でも、エミリはいい子だから、次はきっと3の世界の主人公になれるよね。
あれ?次?
エミリ、色々忙しくて疲れちゃったのかなあ。
悪役令嬢が仕事しないから、色々やっちゃったけど、仕方無いよね。
あの子が悪いんだもの。
「ぼーたんくんっ!」
……あれ?
このお部屋、家具も何にもない。
牡丹くんも、居ない。
何で?
部屋間違えた!?
あれ?
何か違和感感じるけど、何かな。
庭にでっかい石の像が、2つある。暗くて分かんないんだけど。
「ちょっと!オッサン!!牡丹くん居ないんだけど!!
「何だと!?」
何処行ったのかな?
もう、折角ヒロインと結ばれる運命なのに。
私が選んであげたんだから。
それにしても、庭が煩いなあ。
何で、石が擦れるような音がするんだろ。
あ、もしかして、3回目の転移?転生?
良いよ、この世界もウザいから行ってあげる。
「不破、何なんだその女は!?」
「何なのその下品な女!?不法侵入!?」
誰なのこのオッサンオバサン。
キンキン声で煩いったら無いわよ。
あれ?
何で私、押さえつけられてるの?
おかしいよ。
早く、転生を。
ねえ、まだ?
エミリの元々の身分が明かされましたね。




