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悪役令嬢は召された彼を還せない  作者: 宇和マチカ


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12/35

事情も私の両親も拗れております

お読み頂き有り難う御座います。


  本日も色んな事をお聞きして……気が重いです。

やはり、私は元の世界で死んでしまった事も……覚悟はしておりましたが、ショックで御座いました。

勿論授業に身は入らず、あっという間に放課後で……何時の間にか若君と共に車に乗っていました。

 ルーチンワークで無意識に行えて良かったです。

若君は基本帰宅は渋られませんが、偶に逃げようとするポーズを取られますからね……。意味が分かりません。家が大好きなようでもマナーやしきたりはお嫌いですし………我が儘と言えば我が儘、なのでしょうね。


「あれ?今日も渋い顔やね、不破のおばちゃんは」


 前を行かれる若君が、玄関先で誰かに気付かれたようです。

……あの見覚えのある私と同じ色の頭は……。


「上の若君、お帰りなさいませ。ミズハ、お帰り」


  ゆっくりと振り返ったのは何と母でした。父と別居してからはパートで此方に勤務しているので、時短勤務です。

どうやら帰り支度なので、アパートに帰る所でしょうか。何時もパート職員は裏口から出るのですが、本日裏口に大型の荷物の搬入が有ったそうで時間が掛かっているそうです。本日は特別に玄関を利用して良いとのお達しだそうです。


  そう言えば職員用の連絡網に書いてましたね。裏口を利用しないのでスルーしておりました。


「……ミズハ、私は今から帰るんだけど偶にはお前も一緒に帰る?」

「いえ、若君の御支度が有りますし」

「上の若君は自分で御支度が出来るでしょう。高校生にもなって、何を何処まで介助する必要が有るのかしら」



 母の私と同じ色の赤い目がジロリと若君を見つめました。

……カラーリングだけであまり顔は似ておりません。私の顔は美形だった祖父に似ているそうです。………折角の有難い遺伝の筈ですが、我ながら顔を生かせてはいないと自負しております。


「僕は何でも出来やるけど、不破が煩いやろ」


 お着替えも碌に為さらない方が何を嘯かれるのでしょう。此処でダウトと叫べれば気持ちいいでしょうね……。


「このご時世に高校生に異性の同い年の面倒を見させる自体、おかしな事でしょう。大体働いたからには、ちゃんときっちり給料は発生しているのよね?」

「一応頂いておりますが」

「使う暇あらへんやろね」


  うっ、その通りで御座います。

確かにお給金……と言うか、お小遣いやバイト代の額面に等しいです。そして若君のお世話に奔走していると、外にお出掛けする暇も御座いません。

  幼少の頃は覚えておりませんが、……最早、商店街ですら三和さんとお出掛けしたのが初、くらいの感覚です。

……碌な趣味もなく、懇意な友人関係が築けないのも敗因でしょうか。


「他人に自分の若い娘を仕えさせるのが嫌なのよ」

「おばちゃんの感性は当世風やねえ」

「若君も今時じゃないですよ。おばちゃんは心配です」


  母の物言いは容赦有りません。ハラハラ致します。大旦那様がいらっしゃって、万が一この母の言動をお耳に入れらたりしたら……酷いお咎めを受けるでしょう。若君諸共に、です。

若君も全く動じておられませんが!!

  ひとりアワアワしている私を、ふう、と母はひと目見て溜息を吐き……あ、しまった。始まってしまいます。


「大体私は結婚する気なんて無かったの。父と妹夫婦と産まれたばっかりの甥を見守る暮らしをしていく筈だったのに、妹も妹の旦那も父も亡くなるし、何故かこんな所に来てしまったし……。気が萎えて、あんな幼い娘を同い年の従者にするなんておかしな考えの愚か者に引っかかってしまったけれど。

 ああでもミズハ、我が子は可愛いわよ。殆ど身内が消えてしまってしまった甥と3人で一緒に暮らせたらどんなに良いかしら。ああ心配だ、今からでも帰りたい」


  ……長いです。

母の愚痴は毎回内容がコピー&ペーストかと思う位に、同じですし長いです。

兎に角、私にとっての祖父や叔母の家族が大好きなんですよね……。残念ながら私が生まれる前に酷い事件で亡くなってしまったそうなので、顔を合わせた事は御座いません。

  母は今からでも離婚して、私と共に叔母の遺児である私の従兄と暮らしたいんだそうです。金銭的な事情が有って今は叶わないそうで御座います。


「……おい、ミズハ。若君と一体何故こんな玄関で……。……っ!!」


 玄関で騒いでいたのが父の耳に入ったようで、出て来てしまいました。

ですが、思わぬ人物……母が居たのが予想外だったようで、固まってしまいました。

相変わらず母と顔を合わせると顔が赤くなっております。


「ミズハ、丁度『纏め役の不破さん』がいらしたわよ。どうせ休日も碌に取って無いでしょう、帰るわよ」

「えっと……」

「おい!」

「……何ですか?業務は終わらせましたよ、『纏め役の不破さん』。未成年だからって労働基準法を守らせたら?過剰業務を押し付けるつもり?」

「おばちゃん怖。まあええわ、ミズハ、明日な」

「ちょ、ちょっと待て、おい!!あの、えっと!!」


  父が背後で慌てています。娘の私が突っ込むのも野暮でしょうが……父は母にゾッコンでつい冷たく当たってしまうようなんです。子供のようですね。

そして母はそういう気性が大嫌いなそうなんです。大事な人や家族には優しくすべきだろうと言うのが母の主張です。


 どうやら私の祖母に当たる女性がとんでもなく傍若無人で我儘な恐ろしい人だったそうで、母と叔母は召使のように扱われた事も有ったとか。母は叔母や他の姉妹と嫌な辛い思いをさせられてきたようなんです。

 そう言えば……異父姉妹も叔母以外に居るって言っておりましたね。その祖母に当たる女性はどれだけ男性にだらしない方なんでしょう……。お会いしたくは無いものです。

その姉妹とも今は縁遠くなっているそうです。……思い出すと、母の家庭の事情は本当に複雑ですね。愚痴が長いので流しがちでは御座いますが、きちんと把握しておくべきでしょう。

母には頼れる身内が少ないのですから。


  若君の許可も出た事ですし、今日は母のご飯を食べに母のアパートに帰る事に致します。

今帰った所で機嫌最悪な父の面倒を見たくないですし……。明日は学校に直行致しましょうか。

どの道朝早く起きてお屋敷に戻るのを母は許してはくれないでしょう。偶にはのんびりするのも良いかもしれません。父には侍従失格だと怒られそうです。今もきっと怒っているでしょうね。



 母のご飯を食べて、母と並んで布団に入り……アパートの天井を見つめていると、ふと午前中の事を思い出しました。

轟さんが語ってくださった事を。


 ゲームの事、ゲームに関わる事件の事。

……私はその『イベント』に必要な機材を搬入するトラック……女神像が乗っていたトラックに轢かれて亡くなったひとりということでしょうか。そして……この世界に生まれ変わったのでしょう。

『不破ミズハ』として。

以前生きていた記憶が殆ど無いので、定かでは御座いません。

此処で生きて来た記憶が鮮明なので、塗り替えられたんでしょうか。


 転生者は不思議で不自然な事故に巻き込まれた犠牲者……?

………私だけではなく、轟さんも?そして、電波な轟さんのお姉さんも……でしょうか。4回も起こった事故の、どれかに巻き込まれたのでしょうか?


  あれ?

でしたら……全ての事故後である筈の会社の倒産を知っている轟さんは、何時亡くなられて此方に転生をされたんでしょう?

もしや、5回目が有ったと言うことですか?

 死亡時期が違っても、同い年で転生をしたと言う事ですよね。いえ、転生のルールなんて全く存じ上げませんが。


  仮定ばかりで嫌になりますが、記憶も知識も足りません。残念ながら歯痒いことだらけです。

考えても仕方無い事なのかもしれませんが、とても引っ掛かります。

そして、あの4月の謎のお手紙の事も御座います。

もしや、あの下足箱のお手紙は、他にいる転生者から入れられた物でしょうか。


 時が来れば……ゲームが終われば分かるのでしょうか。

轟さんが何方かと心通わせた『エンディング』を迎えられたら。


 ………最初の出会いも結構に結構でしたし、あのテンションには付いていけそうに御座いませんが、悪い方ではないと思います。

攻略情報も御存じでしょうし、あの可愛らしい容姿ですし……真摯に向き合えば……あのテンションに引かない方なら相思相愛も遠くないのでは。

個性的な面々ですから、あのテンションも……個性としてもしかしたらプラスに働くやもしれません。


  ………。

………………。

う、うーーーーん?


  外野の立場で勝手に考えましても、結構難しそうですね。

他のシリーズの出会いは個性的なものも有りましたけれど。2の出会いなんてとっても個性的ですよね。特に椎名君は。あのような出会い………実際起こるとも思えませんけれどね。


  恋愛に関して何かお手伝い出来る事が有れば宜しいのですが、私自身に恋愛経験は皆無です。

それに『悪役令嬢』の私が手助けしたら予定が狂うでしょうか。

  そもそも、私が苛めを行わなければならないイベントが有るのでしょうか。

人を苛めるなんて言語道断ですし、山茶花坂のお家にも迷惑が掛かる行為は出来ませんし。

………どうにか私が轟さんを苛めない恋愛が成就するルート開拓をお願いしたいものです。


 ………三和さんもこのゲームの終わりを願っておられました。

彼の望みは何なのでしょう。

あのノイズに隠された、彼の本当の言葉をお聞き出来るのでしょうか。

 

 不思議です。

いえ、転生した事態が不自然な不思議で……色々絡み合っていて………。

全てを知る必要も御座いませんし、知りたいとも思えませんが………。


 三和さんの、言葉は少し知りたいと思ってしまいます。


何処かの世界で聞いた話のようです。

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