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誰が終わりを望むのか

お読み頂き有難う御座います。ミステリーっぽく始まりますが、ジャンルは恋愛です。

  それは、少し日が陰った肌寒い日だった。

 桜はもうとっくに花は終え、代わりに緑の葉っぱが枝に目立ち始めている。

  曇り空のせいか、空で時間が分かりにくい。


  新入生でも無く、卒業生でも無い二年生。

 事情が有っていつも帰る筈の連れはおらず、時間の余った彼女は図書室で本を借り、少し何時もの下校時刻を過ぎた所で昇降口に向かう。

  生徒の殆どは部活や帰宅で出払い、人気の無い昇降口に降り立った。


  湿った空気の冷たさに、少し震えた彼女は下足箱に手を突っ込む。明日は雨になるかしら、と彼女は無意識に手を突っ込み……靴とは違う感触が指に触れ、反射的に引っ込めた。

 紙のような手触りだ。


  恐る恐る下足箱の中を覗くと、中には四つ折りに畳まれた一枚の紙が私の靴の上に載せられていました。

 誰の仕業か。もしや、周りで私の狼狽えた反応を見ている人がいるのか?

  周りを見回しても、ぼやぼやと遠くの音が仄かに煩くも、静まった玄関があるだけ。

 下校時間には少し遅いせいか、誰も居なかった。



  心臓の鼓動が自ずと早まり、口の中が乾いていく。

 誰かに相談したかったのに、誰も居ない。

 いや、相談しなくてもいいから、人の気配があるだけでもいいのに。


  だけど、待てど暮らせども誰も昇降口には降りてこない。

 何時もこの時間帯には、部活終わりの学生たちがひしめき合っているというのに、誰も居ない。

 薄暗がりは静まり返っている。

  彼女は諦めて、紙を広げた。

 其処には……。



「もう我慢が出来ない。俺を終わりに連れて……行ってください。……へ……してくれ。………!」


 ……購買で売っているルーズリーフに掛かれた、綺麗な字。


  短い文。

 でも、とても衝撃的な内容。……そして、不自然な位置の句点。

 不可思議な文章が羅列されていた。


  封筒に入った一般的な手紙形式ではない。

 ……そして、中身は意味不明。

  終わりって、何の事?ひっくり返しても、罫線に沿って書かれた文字しか目に写らない。


「……これは……?普通の手紙じゃないです、よね?」


  どうして私の下足箱に手紙が入っているんでしょう。

 しかも、宛名が無い。

 差出人も無い。

 悪戯?


  一体、誰がこんなことを……?

 どうして、よりによって、この私に?


  しかしこの奇妙な手紙からは、何故か目を逸らせない。

 他の生徒がどやどやとやって来るまで、彼女はまるでその場に縫い付けられたように動くことが出来なかった。


  慌ててその不審な手紙を鞄に突っ込み、下足箱の靴を取り出して昇降口から足早に外へ出た。

 急ぎすぎたせいか、足が縺れる。危うく転倒しかけて踏みとどまる所を、昇降口に近付いてきた女子生徒に見られた。


「………?」


  見られた、だけなのに一瞬睨まれた気がする。

 もう一度視線を向けても女子生徒はもう振り向かず、灰色の髪を翻して昇降口の奥へと消えていった。





次から一人称で御座います。

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