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お好み異世界優良物件(家)  作者: 妃 大和


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シリコーンスライムの居場所

 城も見たし大豆も発見したしで、物置小屋となる予定のコンクリートの様子を見に行けば固まっているように見えた。でも、土台がしっかりと完全に固まってから壁作業をしたいのでもうしばらく放置とする。

 そして素人の私が三角屋根を造るのは難しいので、丸太を積み上げたままの平な形にするつもりだ。なので完成すればコンテナのような長方形になるはずだ。

 もちろんドアと窓はきちんとつけて、仮の家としても使えるものを目指している。


「さてとカメちゃん、しっかりコンクリートが固まるのを待つ間にシリコーンスライムを捕まえに行こうか」


 防水タイプの仕上げ塗料の錬成陣に使われる主な材料はシリコーンスライムなのだ。

 塗料をコンクリートの基礎や壁に隙間なく塗れば雨風が吹き込むことはない。そして虫も入らない。

 隙間や四方に塗ることで気密性の高い空間となる。元の世界の部屋と同レベルのものとなるのだ。

 その上、物理的にも化学的にもハードな錬金術の作業にも耐えうるらしい。ようは化学実験室ともなるのだ。ハイスペックマイルームになるのだ。

 そこに以前見た空調の魔石を取り付ければ、冷暖房完備の快適空間になるはずだ。



「さてと、シリコーンスライスを検索っと」


 元スマホを取り出し、××ペディアで検索する。

 シリコーンスライムは魔物としてのレベルは低く、大きさは握り拳2つ分程。白に近い灰白色で適度な弾力があり、湿った岩壁を好み引っ付いているらしい。要は弱い魔物ってことだ。

 これくらいのヤツなら私でもなんとかなりそうである。いざとなったらアイテムボックスにしまってしまえばいい。

 魔物生息分布の資料を見るために私とカメちゃんは冒険者ギルドへと向かうのだった。



 カメちゃんと冒険者ギルドの中に入れば、相変わらず視線を集めた。

 日本人得意の無害アピールの笑顔を張り付けて、人の少ない本棚へと足を進める。

 冒険者ギルドにいるのはお約束のように脳筋が多いようで、どの本もきれいだった。

 私が懸命に大きな本のページをめくる姿を見かねたのか、大きな槍を担いだ大柄な男が私に声をかけてきた。


「なんか探し物か?」


 チラリと見上げてコクコクをうなずく私の横に男はかがみ込んだ。

 怖がるとでも思われたのか、似合わない笑顔を浮かべている。怪しさがあふれているが、おじさんのその努力は認めよう。


「シリコーンスライムってどこにたくさんいますか?」

「それなら見習いの奴らがよく知ってるぜ。狩ればアイツらの小遣いになるからな」


 そう言ってギルドの入り口の方に向かっておじさんは顎をしゃくった。


 見れば、他の冒険者の邪魔にならないようにして4人の子供達が立っていた。年は私より少し下の10歳くらいにみえる。そんな幼いうちから冒険者になれることに驚く。

 彼らは見習い冒険者だそうだ。成人前の年端もいかない見習いは怪我や危険を減らすためにグループを作って仕事をこなす場合が多い。

 見習いでもなんでも依頼にはギルド職員が許可を出さないと行けない。

 突出したスキルが無い限り、見習いは他の冒険者の手伝いや簡単な依頼をこなして経験を積み技術を磨くそうだ。スキルが育って職を得る場合もあるが、多くはギルド職員が認めて初めて一人前の冒険者となる。

 見習いをすっ飛ばした採取師である私は苦笑いするしかない。絶対、冒険者になる方が大変だと思う。


「ねぇ、君たち、対価を渡すからシリコーンスライムの狩り場を1つ教えてくれないかな?」


 4人は顔を見合わせ、明らかにジロリと不審者を見る目を向けてきた。

 つい子供相手と思って母親目線で声をかけてしまった。私だって成人前のお子様なのに。これは警戒されても仕方が無い。

 さらにシリコーンスライムは簡単に狩れて単価は安いが、需要は大きい。数多く捕まえれば見習い冒険者にとって大きな収入源となる。簡単には答えてくれない確率は高い。


「私、採取師のミーチェ・モーリーっていうの。私も代わりに皆が知らないモリモリウサギがよく出る場所を教えるわ」


 モリモリウサギは美味しい。でも奴等は森にあるガリガリニンジンが好物で食べてしまうのだ。

 ガリガリニンジンは細くて掘り採るのが大変だけど料理に使えるし薬の原料にもなる。採取師にとって大事な収入源の一つなのだ。

 だから私にとってモリモリウサギは害獣なのだ。それなのに私の力では一時的に追い払うことしかできない。彼らに是非とも狩りをしてもらいたいのだ。


 彼らは再び4人で顔を突き合わせ相談を始めた。

 なんか見ていて微笑ましい。

 幼馴染かな。何でも相談して決めるのかな。うんうん、見守っちゃうよ。


「おう、いいぜ。俺はスオル。一つだけ教えてやる」


 一番背の大きい男の子が私を連れて建物の外へと向かう。

 物陰の少し広くなった地面に棒で地図のような絵を描き始めた。ハッキリ言って地図と呼ぶにはとてもレベルが低い。私も棒を拾って書き足し始めた。


「王都のギルドから一番近い出入り口から少し行くと、初心者向けの林ってこんな感じに広がっているじゃない。あ、上が北ね。それであなたが言う川って、森から入ってこう進んで行くとぶつかるやつでしょ。大きい石って上流に向かうと川をせきとめるようにあるやつよね。うん、確かに石の右奥から滝みたく水が流れ落ちる石壁に行ける。へえ、その壁の左の切れ込んだ窪みにシリコーンスライムがいるのね。うん、わかった」


 私は地面に描いた地図にグリグリと穴を開けながら、頭の中に場所を覚え込んだ。

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