怪力ってありですね
前回からすごく空いてしまいました。それでも待っていてくださった皆さんには感謝しかありません。ありがとうございます。
コンクリートの材料はそろった。
ドロドロに練るのにはどうすれば良いかを考える。
この世界にクルクル回るミキサー車はもちろん無い。だから手で練るしかない。私の非力な腕で出来るのか……不安しかない。
それでも練習がてらの物置建築に着手することにした。
カラッと晴れて気持ち良い朝、私は気分良く冒険者ギルドの何でも屋へと向かった。
「リイネちゃん、定規ってある?」
首を傾げる彼女に今日も問う。
話を聞くと、定規を冒険者は使わないらしい。
「それじゃあ、仕留めた獲物の大きさを測る道具ってあるかな?」
「うーん。はあい、もちろん!」
小走りで店の奥に行って戻ると、彼女の手には所々色がついた細いひもがあった。巻かれていない巻き尺といったところか。
「10メータルでいいかな」
刃物ではないせいかリイネの愛にあふれる説明は無い。
ひもに一番多くある緑色はどうやら10センテメータルおき、茶色は50センテメータルおき、目立つ赤色は1メータルおきに付いているようだ。
微妙に元の世界と単位名が似ている。基準単位も同じような長さなので理解しやすくて助かる。
「ミーチェちゃんはサイズ指定の大物は狩らないよね。こんなもの何に使うの?」
「えへへ、家を建てるのよ」
ますますリイネは首を傾げた。
そこそこ栄えた王都では仕事は分業となっている。この世界でも普通に考えれば家を建てるのは大工だ。採取師の私がすることではない。
巻き尺の他にも木枠を作ったりコンクリートを練るのに必要と思われる道具をいくつか買った。
さらに街中の店で木槌やタライに水桶、自分の背丈くらいある大きな木べらも買う。
かさばるものばかりでとても自分一人では持ちきれない。大容量のアイテムボックスを持っていることが知られてしまうが、背に腹は変えられない。こそこそと、できるだけ隠して収納する。
全部収納できるアイテムボックスさまさまだ。
「こんなものかな」
必要と思われるものを手に入れてマイ土地へとカメチャンと向かう。たくさん買い込んで鼻歌が出そうなくらい気分が良い。
買い物はどこの世界にいても楽しいものだ。テンション上がる。
物置は道路からやや奥まった場所に建てることにした。
巻き尺もどきのひもで測り、地面に印をつける。
再度雑草を取り除き、物置の床となる長方形の部分を少し凹まして【整地】できれいに平らにする。
4畳半よりやや狭いくらいだ。
凹んだ部分の端となる部分にオランデから手に入れた薄い板を立てる。倒れないように木槌で叩いてしっかりと土の中に埋め込んだ。さらに幅を空けて並行になるようにもう一枚板を立てて埋め込む。
この世界に来て初めての本格的な力仕事だ。
「あー、もうだめ。木槌を振りすぎて腕がパンパンだわ。それなのに何だか板、引っ張ったら地面から抜けちゃいそうなのよね。板キレイだから簡単に誰かに持って行かれないくらい埋め込みたいのに」
板に足をかけると予想通りにグラついた。
「わぁ、やっぱり……こういうときは開拓スキルの出番よね。ええと、開拓者は力持ちのはず。力が無くちゃやっていけない。開拓スキルの拡大解釈で【怪力】っと」
私の握り拳よりだいぶ大きい木槌を埋め込んだ板に向かって振り下ろす。
ーーーバゴン
「おっ、良い感じ」
私はバゴンバゴンと板を打ち込んでいった。
もちろん今度は足をかけてもグラつかない。
「次はコンクリートを練る〜。もどきじゃないのよ、はっはぁ〜」
元の世界の鼻歌の混じる私にたいして、時々カメちゃんが「げきょ」と合いの手をいれてくれる。
タライの中にコンクリートと砂利と水を入れて、大きな木べらで私は練った。腕を大きく動かして、上に下に縦に横にまんべんなく練り込んでいく。思ったほど疲れはない。魔力をあまり使わないスキルのようだ。
「もしかして、タライごと持って木枠に流し込めたりしてね」
エイッとタライを持ってみれば……出来てしまった。感心するまもなく、固まる前に木枠の中のコンクリートを平らにならす。後はこのまま乾くのを待つだけだ。
「怪力って使えるわね。こんなことなら花火作りの時に手に入れておけば良かったかな」
井戸から水を汲み、カメチャンと2人、喉をうるおす。
木陰に移動して、私は木の実がたくさん入ったパンと干し肉で昼食をとった。カメチャンは雑草をムシャムシャ食べてくれた。
昼食後は物置の壁となる木材を切りだすことにする。シンプルなログハウスのような壁にするつもりだ。木の再利用はできるし、手作り感まんさいで憧れがある。一択しかない。
アイテムボックスから以前にアリストに乾燥してもらった木材を地面に出す。縦辺と横辺の長さに合わせて印をつけて、必要ない長さを再び収納する。
「思った通り、収納の応用で思った長さにできるわ」
収納には魔力を使わないので、私に疲れもない。ちょうど良い長さとなった木材を物置となる場所の横にまとめて置く。置くのに使うのは【怪力】スキルだ。どんどんこなしていく。
一辺の高さをとりあえず12本として、4辺だから48本分の木材を確保した。
「【収納】して今日の作業は終了っと」
「げぎょ」
気分良く私は『宿屋 乙女の吐息』へと帰宅するのだった。




