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お好み異世界優良物件(家)  作者: 妃 大和


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抽出は錬成陣で

「おとめさん、ただいまです」

「げぎょ」


 そこそこ慣れ親しんだ王都の『宿屋 乙女の吐息』に戻れば、以前泊まっていた部屋に再び泊まることができた。あの可愛らしい部屋はやはり泊まる人を選ぶようで空いていたのだ。慣れた部屋に泊まれることは単純に安心をもたらしてくれる。

 おとめにお土産としてタンタル山で採取した料理に使えそうなハーブを渡す。残念ながらタンタールは完全なる鉱山街で名物といった菓子が存在しなかったのだ。でも、花火で有名になって観光客が増えれば名物お菓子もきっと生まれると思う。


「やけに長く行ってると思ったら、予定以外に一仕事していたみたいだね。それもかなり大掛かりな」

「そうなんですよ。目的のものもちゃんと手に入れたから良いですけど、ヒメにはたいへんお世話になりました。頑張っちゃったから、しばらくゆっくりしたいと思ってます」

「……そういくと良いがね」


 最後におとめが言った言葉ははっきり聞こえず、私は首を傾げたのだった。



 ◇◇◇



 翌日、日が高くサンサンと輝く昼まで私はたっぷりと睡眠をとった。いくらでも惰眠をむさぼれる体に若さを感じてしまう。以前の年を重ねた体だった時の私は寝ていたくても寝ていられなかったからだ。

 眠気より空腹を強く感じて起き出す。昼食を食べる客で混む食堂が空く頃にやっと朝食を兼ねた昼食をとった。


「カレンさん、今日も美味しい食事をありがとうございます」


 私は日替わり定食のシンプルな焼き魚を味わっていた。フォークで魚から骨を外すのは難しい。マイ箸を作ろうかと思うのも仕方ないことだと思うこの頃である。

 外した骨を指でつまんでカメチャンの口の前に差し出せば、パクンと咥えてバリバリと食べてしまった。そのくらいには私に慣れ親しんでいる。


「ほれ」


 目の前におとめがチラシのようなものを置いた。この王都にも新聞があったようだ。

 新聞とはいっても毎日は発行されない。紙は高価なので、王族の結婚式とか絵になった時に見栄え良く飾れるような記事の時にしか発行されないらしい。

 これを私に見せたということは、おとめは私がタンタールで何をしていたかしっかり把握していたようだ。

 白黒の印刷の中には夜空に花開く花火の絵があった。下側に花火の美しさをたたえる言葉が並んでいる。


「わぁ、上手ねぇ。凄くキレイに描けてるわあ。あの場にこんな絵が描ける絵師がいたのね」


 こんな絵が王都にあふれているならタンタールの町もあっという間に花火が見られる観光地として有名になりそうだった。


「おとめさん、あと数ヶ月もすれば、きっと国のあちこちで花火が打ち上げられますよ。王都は建物が多くて安全な広い場所が無いからむずかしいだろうけど、ぜひ、見てくださいね」


 今度は見る側で花火を楽しみたいと私は思ったのだった。



 ◇◇◇



 カメチャンと共に錬金ギルドへと向かう。アルミニウム鉱石からアルミニウムを抽出する錬成陣を作成するためである。

 なぜか採取のスキルでアルミニウムを取り出すとかたまりとなってしまうのだ。セメントもどきに混ぜるには粉末でないと困る。花火作りの時にライが錬成陣を使って、鉱石から金属粉末にして取り出すのを見ていた。ちゃんと覚えている私エラいと自分で自分を褒めておく。

 途中、商業ギルドによってちゃんと花火の指導料が振り込まれているかを確認したが、ちゃんと記録されていた。これでしばらく採取しないで、我が家建設に励める。

 この世界はナチュラル志向で、元の世界と比べて文明が一見遅れているように見えるが、意外と同レベルかそれ以上のものも多い。柔軟な思考を持つ5バツさまが良いと思ったものをあちこちの世界から取り入れているからだ。

 石油化学の代わりに魔素エネルギーによる魔法と錬金術を中心に産業が発展している。それぞれに長所があり、一概に比較は出来ないが、私的にはこの世界は十分に『あり』と思っている。


 錬成ギルドに行けばいつものようにハリポテが対応してくれた。

 鉱石から目的の鉱物を抽出するための錬成陣を作ると言えば、防水の仕上げ塗料が塗られた布と書き付けるための専用のペンとインクを買わされた。これがこすっても落ちないインクなのだろう。作成のポイントまで教えてくれる。何だかんだと彼は面倒見がいい。

 何かあっても外部へ影響が少ない錬成部屋を借りて、私は錬成陣を書き始めた。


「中心の円に鉱石を置くから、そこそこ大きくして。高温焼成で純度を高めると。これって何語なんだろうね。変な形だわ。でも私は読めるし書けちゃうっと。あ、アルミ以外はいらないから焼ききって。………完成したときに触れるように温度は下げておこうっと。取りだしたアルミの粉末は危険物だから中心の円からは飛び出さないように」


 床に置いた布を見直す。


「うーん。ライのを少し変えちゃったのよね。指示文の意味は矛盾していないっと。合成よりは難しくないから私のレベルでも大丈夫だと思うんだけど。魔力を通してみるか。【定着】」


 布に書かれた紫色のインクがパチッとピンク色に光って、黒色となって残った。


「うわっ。魔力持っていかれたわ。………じゃあ、試してみますか」

「げぎょ」


 完成した錬成陣の中心円の中にアルミニウム鉱石を1つ置く。


「【発動】」


 赤茶色の石が消え、シューシューと煙を上がったかと思うと灰色の粉が残っていた。これがアルミニウムである。


「うー、だるっ。でも完成!」

「げぎょ」

「【鑑定】 うん、出来てる出来てる」


 私はそそくさとアルミニウム粉をアイテムボックスにしまった。たぶんアイテムボックスの中では爆発出来ない。そんな気がする。安全第一である。

 続けて魔力回復ポーションを取り出して飲む。これでコンクリートもどきが作れると思うとだるさも吹っ飛ぶってものだ。

 花火作りも充実していたのだが、少しずつマイホーム完成に近づいていると実感出来ることがとてもうれしかった。

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