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お好み異世界優良物件(家)  作者: 妃 大和


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報酬はアルミニウム鉱石で

 片付けをしてから打ち上げ係の皆で役場前広場に戻った。やり終えた開放感と充実感で帰り道のテンションは高い。笑い声さえたてながら町へと戻ったのだった。

 広場担当だった者たちはすでに宴会をしていた。テーブルの上には酒と食べ物が所狭しと並んでいる。


「キャー、お、つかれさま。うん、うん。花火良かったわぁ。あらっ、あんた達真っ黒でバッチイじゃないのよ。ちょっとキレイにしなさいな」


 そう言うなり、ヒメが私達に浄化の魔法をかけてくれた。

 焦げ臭く(すす)で黒かった姿が元に戻る。これだけきれいなら手づかみで食事をするのも問題なしだ。

 促されるままに私は親父達とヒメのいる場所に陣取った。

 皆が花火を見た興奮を語り合っている。

 老若男女がここぞとばかりに広場に集まっていた。このタンタールの町にこれほどの人がいたことに驚く。

 花火職人となった親父達は家族を前にして誇らしそうだった。


「俺は帰るから。また王都で会おう」


 そう、私の耳元でささやくとライは広場の隅から文字通り姿を消した。酔っているからなのかそれを見て驚くものもいない。

 私はカメチャンと目の前に置かれた飲み物と食べ物をもしゃもしゃと食べていた。労働の後の食事は旨い。


「お疲れさま。どうした? あんまりうれしそうじゃないな」


 気がつけばレイモスが隣に座っていた。彼も仕事は終わったのか、酒がなみなみとつがれたカップと骨付き肉を持っていた。品があるのにグイと飲む姿も肉にかじりつく姿も様になっている。


「うーん。あまりにも花火に喜んでくれたことに驚いています。私の国でも花火を見るときはお祭りだからはしゃぐけど、ここまでの勢いはないですから」

「いや、実際あれはすごかった。誰もが何度でも見たいと思うものだ」

「だから。うーん。この街には娯楽ってものが本当に無かったんだなって思いまして」

「この町は変わるな。そのきっかけをもたらしたことを貴方は誇ればいい」

「誇るほどのことをしたとは思っていませんけど。まあ、私の出番は今日で終わりです。今後はこの町の花火職人達が頑張ってくれるとうれしいですわね」


 お腹がふくれた私とカメチャンは「今日は疲れたから」と早々宿屋へと戻ったのだった。

 大勢の人が私達に声をかけてくれたが、自分がこの世界の人間でないと感覚的に思い知ってしまったのだ。


(やりがいはあったし、ここが異世界だってことは分かりきっていたはず。異質な自分をさみしいと思っちゃこの先やっていけない。この世界の人が私達が打ち上げた花火をあんなに喜んでくれたってことを素直に喜ばなくちゃね)


 その夜は役場前広場で夜更けまで人のざわめきが収まることはなかった。タンタールの町に新たな名物となる祭りが誕生した日であった。


 ◇◇◇


 翌日、遅い朝に私はヒメと報酬についての話をした。「町長と自分で交渉する?」とも聞かれたが、自分に交渉ごとがうまく出来るとは思えない。思っていた以上に提示されたお金の数字に素直にうなずいた。商業ギルド経由で振り込まれるそうだ。高評価に笑みが止まらない。


「で、私が欲しいアルミニウムはもらえるんですよね」

「もちろん。鉱山に話はつけてあるから、後で行ってね。長いこと引き留めることになって悪かったわ。おとめからも早く王都へ返せって催促が来ているのよ。だか、ら、お詫びにここに泊まるときはいつでも半額にしてあげ、る」

「それって、またタンタールに来るっていう前提になってますけど。ヒメのご飯は美味しいから、また食べに来ますね」


「あはは、は」と笑いながらヒメは私を抱きしめた。そこに男女の愛は全くない。あるのは仲間意識だろうか。

 私も固い体だと思いながら抱きしめ返したのだった。



 それから鉱山に行ってアルミニウムをもらいに来たといえば直ぐに事務所の裏手の鉱石置き場へ案内された。

 アルミニウム鉱石が山となっている。好きなだけ持っていって良いと言われてしまった。


「本当にもらって良いんですね」


 私は確認するとアイテムボックスに赤茶色のアルミニウム鉱石をしまい始めた。元の世界ではボーキサイトと呼ばれるアルミニウム鉱石からアルミニウムを取り出すには多大な工程を必要とするが、この世界では魔法または錬金術で容易に取り出せるのだ。加工の技術はまだ発展途上のようだが。

 ここでもアルミニウムは粉末とすると爆発の危険性があるので、鉱石のままで運搬される。

 私は遠慮無くアルミニウム鉱石をアイテムボックスへとしまった。これでコンクリートもどきを錬成することができる。

 私達は山が無くなったのを見てあんぐりと口を開けた事務職員にお礼を言って立ち去ったのだった。


 そして翌日に私は花火職人となった親父達に見送られ、鉱山街タンタールを去ったのだった。



 ◇◇◇


 行き同様に幌馬車で車内1泊して、王都へと私とカメチャンは戻った。

 荒れ地が続く景色から緑の木々と畑が続く景色へと変わる頃には、乾燥気味だった肌も心なしかしっとりしていた。

 約一月ぶりに自分の土地へと戻った私が、ぼうぼうに生える雑草を見るのはあと少し先である。

花火とかコンクリートとかアルミニウムについてはあやふやな知識で書いている部分が多いです。異世界ってことであまり深く突っ込まないでくださるとうれしいです。

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