花火玉を作ろう
冒険者ほどではないとはいえ、声が大きくて見た目の怖い中年男性のことをなんと呼ぶのが一般的だろうか。おじさん、おっさん、おっちゃん……私てきには親父が一番しっくりくる。
見た目はともかく中身は純情な男達なので、おばちゃんな私は気兼ねなく話が出来る。
そんな親父達と共に私は小屋で花火作りを始めた。
「皆さんには2日間で作り方を覚えてもらいます。覚えたら皆で花火玉を100発作ります。作った花火玉は町長に買い取ってもらうことになりました。代金は作業に関わった全員で均等にわけます。なので頑張ってください」
花火を見たヒメが町長に「先行投資よ」と説得して100発分の買い取りを約束させてきた。花火大会の日も10日後に決定した。もう後にはひけない。やるしかない。
ヒメも宿屋の仕事以上に、花火大会の準備に力を入れ始めた。大会についてはヒメにお任せである。
「あら、みんなお弁当持ちなのね」
私とライは屋台で買ったものを昼食に食べるが、親父達は皆、質素であるが弁当持参だった。この小屋の周りには屋台はない。
「あー、新しい仕事始めるってんで、うちのやつと言い争いになったんだが、ちゃんと弁当は作ってくれたんだ」
一番若いダダムが答えた。半分以上がうんうんとうなずいている。
(バリバリ働いていた頃より稼ぎがないのにそこそこお金払ったしね。言い争いくらい起こるわよねぇ)
先の知れない花火という未知のものにお金を払って仕事を得たのだ。家族は心配だろう。この親父達がうまく言葉で伝えられるとは思えない。説得できたとも思えない。
それでも持ってきた弁当からは愛を感じる。彼らが言葉に出来なくても伝わるものがあったと思いたい。
「帰ったらちゃんと「美味しかった」ってお礼を言いなさいよ。だんまりはダメだからね」
伝わるものがあっただけではダメなのだ。言葉に出してこそ伝わるものもある。特に感謝の気持ちは言葉に出すべきものなのだ。
ケガや年で一人前として働けなくなった親父達。家族の前では以前のように偉そうにしているのかも知れない。でも彼らだって自分のふがいなさを感じているからヒメの食堂で遅くまで安酒を飲んで帰宅をするのだ。
そんな彼らを見守り続けた家族が弁当という形でさらに見守っているのだ。家族だって言葉が返ってきたらうれしいはず。
……あー、思い出しちゃったな。私が何してもヤツからお礼の言葉は無かったし、当たり前の事とされちゃったんだよね。
彼らのためにも絶対に失敗は出来ないと私は花火大会の成功を誓うのだった。
親父達に教えるのには、紙すきの原料となる植物の見分け方から始まり、紙のすき方、乾燥までで一日かかった。翌日はライを中心に金属の粉砕方法、火薬と金属の調合、星の作成、星を詰めて花火玉の作成までとなった。
魔法に錬金術と使えるものは何でも使う。
「へえ、コウゾから紙ができるのか」
「ちょっと強度が弱いけど、花火玉を作るにはちょうど良いの。まあ、今後機会があったらこの和紙で色々作ってみるといいわ」
風魔法の使い手が一番重宝した。どの作業でもきちんと乾燥していなくては花火玉はきれいに爆発できない。金属粉をより分けたり均等に混ぜるのには土魔法が役立った。
しかし、星にするために火薬と金属粉を丸めたり、星を和紙の碗に詰めたりという手作業も、碗を合わせて丸い玉にして和紙を外側に貼り付けるのも親父達は上手だった。
2日間で一通り覚えた後、いつの間にか個々に得意な分野で作業分担している。
「手先が器用なのねえ。私よりきれいな球になってる」
「へへん」
ダダムが火薬で黒くなった手で鼻の下をこする。見事な髭ができた。
私はコウゾをとりに行きがてら食べられる植物を採取した。その野草を使ってヒメに教わっただしの取り方でスープを作る。最終的には私オリジナルの味付けだ。
「同じ釜の飯を食べると仲良くなれるって言うじゃない」
「なんか、おまえ、時々ババァみたいなことを言うよな」
「「「がはは」」」
ライが突っ込んでくるが気にしない。だって見た目より精神年齢がいっているのは本当のことだし。実際、一緒に食べて初めより仲良くなっているし。
花火大会の2日前に何とか花火玉100個を作り終えた私達だった。




