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お好み異世界優良物件(家)  作者: 妃 大和


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常連客の親父達

 ヒメの作った夕食を遅い時間に食べる。やることはまだまだたくさんある。

 私たちの周りに座っているのは酒を楽しむごつい親父ばかりだ。

『宿屋 熟女のため息』に宿泊して早2週間。お互いに慣れるのは当たり前だろう。いつのまにか世間話をするくらいの間柄になっていた。私の中身はおばちゃんである。酔っ払い相手でも話はもちろん対応も出来る。

 ざわついた食堂で今日もライといつものように花火玉について語り合いながら、鶏肉をつついた。


「おい、花火玉って幾つ作るんだ?」


 ライの質問はもっともなものだ。

 元の世界で花火大会と言えば何万発も打ち上げるのが当たり前だった、しかしこの世界では前例がない花火の打ち上げである。それに加えて、材料も作るための人手も足りない。


「うーん、目標100発かな」

「はぁ!? 宿屋の部屋で作る量じゃないぞ」


 かなり少なめに答えたのだがライ的には多かったようだ。ため息が聞こえる。

 100発でさえ私とライだけで作るとなるとかなり時間がかかる。そろそろもっと多くの人手と広い部屋がが必要だ。


「ライ、この花火の作り方を登録をしようと思うの。そうすれば作れる人も増えるだろうし、さらに改良してもっとすごい花火を作る人も出てくると思うのよね。どこに登録すればいいかな?」


 ライがうんうんと激しくうなずく。彼もだいぶお疲れのようだ。

 無料で作り方を教えてしまうといい加減な方法で作ってしまうかもしれない。火薬を使うのでそれは避けたいのだ。それにお金になるなら有り難い。宿泊代は安くしてもらっているが、採取に行けないので手持ちのお金が減るばかりなのだ。

 ハイピの情報もテニレール商会に買ってもらえたし、錬成陣を買うことが出来る世界だ。特許のような登録制度もありそうな気がする。

 今回はテニレール商会に情報を売らないでもっと多くの人に花火を知ってもらいたい。

 ヒメの食堂の常連客には、ケガや加齢で鉱山で働けなくなった者も多い。街の雑務をこなすことで小銭を稼いで夜はヒメの食堂でひととき楽しむのだ。鉱山にいた者なら火薬の扱いにもそこそこ慣れているだろうし、怖さも知っているはず。彼らなら優秀な花火作りの職人になれるはずだ。だからこの街の人たちに花火の作り方を知ってもらいたいと思う。

 ライのように複数魔法が使える人やカメチャンのような結界魔法が使える人はまれだ。しかし、花火の打ち上げには火と風の魔法が使える人がいればいい。安全確保のために水の魔法も必要かな。人数がそろえば何とかなると思う。


 私はヒメにも相談してみた。


「何よ、それ。良いこと考えたわね。うぅーん、タンタールの名物になるし、新しい産業になるわ」


 ヒメは「あんた、えらい」とか言って、私の頭をグリグリなでてきた。首がもげそうな強い力だ。

 鉱山街でありながら、薄汚れた感じでやや活気にかけるタンタールの街が元気になるのはうれしい限り。そのくらいにはこの街にも愛着が出てきている。

 花火大会が定期的に開催されるようになれば、人も客ももっと集まるだろう。



 翌日、ルーチンとなった花火玉を作りが一段落した頃、タンタール町長のもとへヒメによって連れて行かれた。

 私を心配したライも一緒である。彼にも王都へ戻ってする仕事があるだろうが、そこは好意に甘えておくことにした。見知らぬ偉い人を相手するには味方が多いにこしたことはないのだ。


 案内された町役場の一室には、町長と一緒に王都の商業ギルドのハウエルがいた。

 いかにも偉そうな町長とやりあえる気は全くしない。けれどハウエルがいるなら悪いようにはならないと思う。


「新しい技術の申請とお聞きしましたが、ミーチェさんが関わっていたのですね」


 ニッコリと微笑むハウエルに対して緊張してしまう。

 花火は商業ギルドの管轄となり、新たな技術は書面化された。ライがいてくれたので作業はすんなり進んで助かった。難しいことは人任せだ。

 火薬が金属と合わさることで色々な色に変わること、それを利用して色とりどりに輝く光を打ち上げることはやはりこの世界にない技術だった。


「花火という名で登録しておきますね。内容の公開と技術使用料はいくらに設定しますか?」

「私とライが登録するのは基本の事柄です。応用してもっと良いものを作って広めて欲しいので安くていいです。それでも誰でもすぐ簡単にって訳にはいかないと思います。あ、この街の人でこれを覚えたいっていう人がいたら一緒に作業したいんですけど、町長さんどなたかいませんか?」

「ヒメの知り合いに良いやつがいるそうだ。ヒメに任せる。花火とやら、楽しみにしているぞ」


 何気にヒメは大物だった。やはりおとめの知り合いだ。彼女も何気に顔が広い人だった。


 ヒメは街の郊外の小屋に人と花火作りの材料を集めた。見たことのある常連客が多い。親父ばかりだった。顔がいつもよりこわばっているのは未知のことをするせいだろう。誰だって慎重になる。


「あんた達、お金払ってここに来たんだから、ちゃんと花火の作り方を覚えなさい、ね。おい、火薬を使うんだから気合いいれろよ」


 ヒメの声が後半低くなった。立ち並ぶ皆の顔が一気にキリリとした真剣なものになる。


「今晩、タンタル山で花火を実際に打ち上げて見せますね」

「あーん、あたしも見たいのにぃ。食堂今晩は休みにしちゃおうかしら……」


 今回も街からは見えない斜面で打ち上げた。

 たった3発で小さい花火だったのに親父達は十分驚いてくれた。口をポカンと開けて、漫画のようなリアクションをしてくれた。その後には目をキラキラさせて「これを自分たちが作るのか」と騒いでいる。


「ライは初めて見たときにあまり驚いてなかったよね」

「そんなことない。すげー、驚いた」

「げぎょ」


 花火を見た流れで皆して『熟女のため息』に戻り夕食をとったが、食べ終わってもまだ皆騒いでいる。

 結局、ヒメも食堂を休みとして一緒に来たのだ。


「もう、みんな、明日からすることがたくさんあるのよ。今日は早く帰って寝なさい、ね」

「「「おぉー」」」


 食堂に拳を突き上げた親父達の低音ボイスが響き渡った。悪くない。

 これなら花火玉100発もそれほどの時間をかけないで用意が出来そうであった。



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