相談しよう
「あたしの作るご飯は美味しいで、しょう」
目の前でヒメが両手を組んだ上にアゴを乗せながら問うてくる。
うんうんとライと一緒に首を縦に振りながら、もぐもぐと2人で食べ続けた。
「今日の午後に、ね。すごい音がして、この辺りが揺れたの、よ。鉱山で大きな爆破でもしたのか、な、とも思ったんだけど。違ったわね。あれ、あんた達でしょ」
「「ぶっ」」
ヒメの目力が強い。アイラインも濃い!
口の中身をぶちまけなかった自分を褒めたい。
「空に向かって魔力ぶっぱなしたで、しょ」
「げぎょ!」
私とライは食事途中の姿で固まったのに、盛大にカメチャンが反応してしまった。
「すぐに空を見たら、見ちゃったのよねぇ。たか〜く昇る魔力の塊。山に登ったのはあんた達しかいないし。街の人間ならあんな所じゃなく、他の茂みに採取に行くわよ。あ、た、し、魔力が見えるのよ。それにお兄さん、王宮魔導士でしょ。隠したって無駄よ。あんなの爆発させて、街の人間が気がついたら大事じゃないの?」
私とライは顔を見合わせた。
おかまボイスから重低音の野郎ボイスに変えて、ヒメがささやき続ける。
「面倒なのは嫌だろ。黙っていてやるから、この街のために力を貸してくれないか」
やけに男らしいニヤッとした笑顔でヒメはコテンと首を傾げた。
無言で食べ続けたライと2人、食べ終わる頃には食堂が混んできた。
「後で詳しくお話ししま、しょ」とヒメに言われ、2人と一匹は私の部屋で待つことになった。
ライが夜空を飛んで王都へ帰るのは大変だし、夕方から王都へ向かう乗合い馬車もない。このまま街に泊まることになりそうだ。
部屋ではライによる私への聞き取りが始まった。さっきまでしゃべるのも動くのもおっくうそうだったのに元気になったらしい。自分を助けた私とカメチャンのことを見逃してはくれないようだ。
採取をするためにタンタル山に登っていたこと、スライムを発見して驚いてしまったこと、そんな私のためにカメチャンが魔力放出して結界を張ったことを伝えた。
一通り話し終わると、考え込むライと黙り込む私たちで部屋は無音となったのだった。
――コンコンコン
「お待た、せ」
ヒメは薄めたワインと塩をまぶした揚げた豆を持って現れた。心なしか機嫌が良さそうに見える。
さっそく木製のカップにワインが注がれると話し合いが始まった。
「で、力を貸すってなんだ?」
「うーん。この街って娯楽が少ないのよね。だから、魔力の爆発を誤魔化すためにも、今度は連射で打ち上げてくれないかしら。祝砲ってやつよ。何の祝いにするかはこれから決めるけ、ど」
ライがカメチャンを見る。カメチャンは私を見た。
「王宮魔導士なら連射なんて楽勝でしょ」
「まぁ、出来なくはないが…」
ありがたいことにライは魔力をカメチャンが打ち上げたことは隠して、自分がしたことにするようだ。
「魔力を打ち上げるって花火みたいなもの?」
「「花火って?」」
あらまぁ、この世界に花火ってないのかしら。
「空で火薬が爆発するときに金属が一緒にあると、炎色反応で赤やオレンジや緑の光が光って花のようにみえるのよ。ぱぁーってね。それはきれいなのよ」
「花火なんて見たこと無いな。ちなみにこの国での祝砲は音だけだ。火薬を使うときもあるし、魔力を使うときもある。で、炎色反応って何だ? 聞きたいことはまだあるが……結局、花火ってやつをおまえは出来るのか?」
皆の視線が私に集まる。思わず身を引いてしまう。
「私は花火の専門家では無いから、私が知っているのと丸っきり同じのは出来ないと思う。でも、似たものは出来るんじゃないかなあ。火薬と金属を打ち上げて爆発させるのはライの魔法でできるし、カメチャンが結界を張れば安全でしょ。それでね。花火は夜に見るものなの」
「きゃー、何それ素敵じゃない、のよ。光の花が夜空に見えるんでしょ。やって見せなさいよぉ。火薬と金属は街で用意させるから。お願い~」
ヒメは超乗り気だ。稼げそうとか何とか言っている。隣に座るライは顎に手を当てブツブツとすでに段取りを考え始めている。カメチャンも首を伸ばし、なんかやる気満々だ。
「ほらほら、みんな、カップを持っ、て。とりあえず、花火にかんぱーい」
ヒメにつられて皆でカップを打ち合った。
(炎色反応って、Li赤 Na黄 K紫うんちゃらかんちゃらで、銅が緑だっけ。うろ覚えだわ。後で××ペディアで検索しなくちゃね)
その夜はライも部屋を用意してもらって宿泊することになった。
私は自室で夜中に××ペディアを使って検索して、何とか花火についての知識を得たのだった。温度によって色が変わるとか、花火の玉には火薬と金属を合わせた星が幾つも入っているとかだ。
初めて見る花火なら単色でもこの世界の人は楽しんでくれるでしょ。
色が出そうな金属をチェックしていくと見慣れない名が現れた。
(え? 魔石は虹色に光る?)
魔石ってあのトイレや空調につかわれているものだよね。異世界には私の知らない炎色反応が存在するようだ。5バツさま良い仕事するね。
虹色……七色。一度に七色なのか、段々と変化していくのか。興味深い。気になる。
ぜひヒメに用意してもらおう。
誰もが驚いて楽しめる花火大会になることを祈って、私は眠りについたのだった。




