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お好み異世界優良物件(家)  作者: 妃 大和


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タンタル山に行きますよ

すみません。間が開きました。続きを待っていてくださった皆様に感謝です。

 私はタンタル山に行くための準備を着々と進めていった。

 採取を頑張ってお金を増やしたり、タンタル山について更に詳しく情報を集めた。行き方に地形、気候、遭遇しやすい動物に採取できる植物などについてだ。

 元の世界でだって旅行に行く前には雑誌やホームページをみたりして準備したのだから。得られた情報は多いに越したことはない。

 そんな私の様子を見ていれば周りも気がつくってものである。

 いくつかの冒険者のグループが声をかけてきた。


「俺たちもタンタル山の鉱山に行くんだが、雑用係として一緒に行かないか?」


 採取ばかりしている私は護衛をしたり害獣を倒す冒険者としてはあまり役に立たない。いや、全く役に立たない。斧やナイフは持っているだけと胸を張って言えるレベルだ。

 男しかいないグループ……何考えている。危険しか感じない。女性が多く男一人のハーレムグループも一歩譲って許そう。男女混ざった5人組はまだいくらか安心だが、自分がせっせと余計な雑用までしてしまいそうな気がする。

 どんなグループに対しても世話焼きなおばちゃんの血が騒いでしまいそうなのだ。そして彼らは世話される楽チン気分を知ってしまうに違いない。それはいけないってものだ。

 はっきり言って、もうあまり人の世話はしたくない。よく知らない人の世話はもっと避けたい。

 ソロの冒険者である私を気遣っての声かけであるとはわかっているが、丁重にお断りした。


「この王都に来る前にも一人で旅してきたので大丈夫ですよ。採取しがてら観光に行くので。お誘いありがとうございました」


 本当は一人旅なんてこの世界でしたことありませんという言葉は飲み込んでおく。

 へにゃりと笑って私とカメチャンは彼らの前を過ぎるのだ。



 ◇◇◇



 ……土ホコリの舞う道をガタゴトと幌馬車は進んでいく。

 乗り込んで半日もすると遠くにお椀を伏せたような山が見えるだけの景色となった。道の脇は荒れ地が広がっている。地面にへばりつくように少々草が生えていて、たまにツルツルした樹皮を持つ木が立っていた。

 向かっている方面は土地がやせているのか、薄ら寂しい風景が遠くまで広がっていた。

 若い娘が観光に行くというには少々無理があったかもしれない。


 あれから少しして私とカメチャンは王都からタンタル山に向けて出発したのだ。

 乗合い馬車の乗り心地は以前乗ったテニレール商会のものよりかなり落ちる。でもたぶんこれが普通なのだろうと思う。

 鉱山へと向かう同乗者は働き者って感じのいかついおじさんが多め。あとは1組の家族と旅人って感じの人だった。

 鑑定してみたが、悪い人はいなかったので安心して乗っていられた。

 ただカメチャン連れの私は浮いてる…でもちゃんとカメチャンの分も料金は払ったのだから文句は言わせない。カメチャンを抱えるようにして私は馬車の中で座っていた。

 車内で一泊して、2日目の午後にはタンタル山のふもとにある鉱山街タンタールに到着したのだった。


「皆さん、お疲れ様でした。さよならぁ」


 私はピョンと馬車から飛び降り、飛び降りれないカメチャンを抱き下ろした。

 タンタールはほこりっぽくて地味な色味の街だった。辺りには荒っぽい言葉が飛び交っている。しかし、道路は広く、実用的で庶民的な店が多く建ち並ぶ街でもあった。


「さて、おとめさんお勧めの宿屋はどこかなっと」


 背負いカバンからメモ書きを取り出して目を通す。乗合い馬車の停留所からお勧めの宿屋は近いようだ。

 ここタンタールでもカメチャン連れの私は目立つようで、視線を感じる。足早に宿屋へと向かうのだった。


「あった。ここね」


 白い石の壁に蔦がからまった清潔そうな建物だった。地味な色味の街の中でここだけか浮かんで見える。今度はどんな女性が登場するのか楽しみだ。


「こんにちは。今晩泊まりたいのですけど。あ、『乙女の吐息』のおとめさんの紹介で来ました」


「おとめですって!? あらぁ、懐かしいわあ」


 ドアを開け入って声をかければ、背の高い熟女がにこやかに振り返って返事した。

 んっ? 熟女? この人男だよね。思わず店内を見渡す。

(…ここはおかまバーじゃないよね、宿屋だよね)

 はっきりした目鼻立ちをしているところに濃い化粧。ヒゲのそり跡が青々と残っている。一歩間違えれば化け物になりそうな微妙なさじ加減のお顔。さすが、おとめさんのお友達って感じだわ。

 今までおとめさんに紹介された人に外れはなかった。見た目で人を判断してはいけないのはお約束だ。


「ようこそ、『宿屋 熟女のため息』へ。わたしはヒメよ。おとめの同士なの。よろしく、ね」

「ミーチェ・モーリーです。お世話になります」


 ヒメはバチッとウインクをしてきた。よろめきそうになりながらも、私は自分よりずっと大きくてゴツゴツした手と熱い握手をしたのだった。














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