コンクリートもどきとか安易なネーミング多過ぎ
錬金ギルドに行けば対応してくれたのは、以前に会ったハリポテだった。
彼に対するひょろりとした印象は変わらない。
「あー、今日はどうされたのですか?」
「家を建てるときの材料って錬成陣でつくれますか?」
私はこの世界の建物の基礎や壁に使われているコンクリートもどきについても聞いてみた。
「あー、コンクリートもどきですね。作れますよ。ギルドで販売してます。あれは丈夫な外壁材料を探して研究していたときに出来たものなのですよ。ただし、錬成してできたコンクリートもどきの元に水を加えて練らないと現場で使えないんですけどね。あー、もどきって何かって。まだコンクリートとしての完成形ではないのでもどきです。改良の余地がありまして。コンクリートって名前は錬成陣の作成者が夢で見たとかって聞いてます。夢で見て名付けることって錬金術師にはありがちですけどね。やっぱり創造神×××××様の加護ですかねぇ」
(あ、5バツ様、私が元いた世界からネーミング拝借したわよね。安易だわ。私としては名前が覚えやすくて助かるけど)
コンクリートもどきの錬成陣もギルドで売っていた。
「あー、完成した品物を買う方が簡単ですよ。ここでも買えますし、商業ギルドでも買えますよ」
「錬成陣をください。材料そろえて錬成した方が安くあがると思うので」
「そうですかねえ。あー、錬成陣の使い方はおぼえていますよね。基本はきっちり守ってくださいよ」
私はコンクリートもどきの錬成陣代金として金貨1枚を支払った。
かなり手元の現金が少なくなってきている今、かなりの高額出費である。
「あー、それと建物なら仕上げ塗料の錬成陣も販売していますよ」
「仕上げ塗料?」
「あー、知りませんか? 建物の外壁や屋根、床に塗ることで水をはじいたり燃えなくしたりするやつですよ。材料費を安くするために塗らなかったりする場合もありますが、錬金部屋には絶対必要です」
ハリポテは手を握りこみ私に力説する。
仕上げ塗料があるからコンクリートの劣化版のコンクリートもどきを使っても十分家が建てられるようだった。
「んんーっ。ええぃ。仕上げ塗料の錬成陣もください」
「あー、何のタイプのものにいたしますか?」
「とりあえず防水で」
再び金貨1枚の出費である。早いところ採取に行って、換金素材を手に入れなければ。以前に採取した植物も再び茂っているだろう。
錬成陣を起動させるための材料も必要だ。
(しばらく、自分の土地のお世話は出来そうにないな)
そう思いながらも私はスケールの大きなマイハウス制作を楽しんでいた。
◇◇◇
『宿屋 乙女の吐息』の部屋に戻ると、私は錬成陣をよーく眺めた。机はないのでベッドに寝そべってである。
カメチャンは寝ているのか、窓の近くで手足を引っ込めている姿のまま動かない。
丸まった羊皮紙を広げれば、表面が不思議なほど平らで、こすっても落ちないインクで錬成陣は描かれている。
(何かでコーティングされているわね。これも仕上げ塗料ってものの効果かな)
私は謎文字を読み込んでいった。
「ポーションより錬成陣の内枠が多くて複雑ね。ええと、コンクリートもどきを錬成するのに必要な材料は、セメントもどきの石? と石膏。増粘剤に混和剤とアルミニウム……。欄外に、後から水と砂利を加えて混合って説明があるわね。ふーむ。もどきではないコンクリートって出来ないのかしら。こんな時は××ペディアの出番よねっと」
検索である。
「あった。……セメントもどきを高温で焼成するとセメントとなる。……これって錬成陣に高温焼成を書き加えれば出来るんじゃない?」
ついでに材料がどこで手に入るか産地を調べる。
セメントもどきは王都から一番近いタンタル山に採掘場があるようだ。石膏とアルミニウムも採れるようだ。
さらに増粘剤としてネバネバの実。混和剤としてベタベタの実が必要と……ホントに5バツさまのネーミングは安易だわ。
「うーん。材料は採掘しに行けば商業ギルドで買うより断然安くすむわね。山に登りながら実の採取もすれば一石二鳥っと。でも、私に山登りする体力あるかな? とりあえず次に防水の仕上げ塗料の錬成陣を見ようっと。……こっちは樹脂に可塑剤? シリコーンスライム? え、この世界スライムいるの? ってことは魔物がいるってこと? あちゃー、もっとこの世界のこと勉強しなくちゃダメだわ」
5バツさまの様子からこの世界に危険な魔物はいないと思っていたけど、聖獣のカメチャンがいるのだもの、魔獣がいてもおかしくない。
でも身を守るスキルとして攻撃系のものは5バツさま達に勧められなかった。何か他で代用できるということではないだろうか……
「カメチャンのビームばかりを当てには出来ないし。ふむふむ。……あ、あの巨大なアイテムボックスって、最強ボックスになるかも」
部屋が散らかっているときに、ポイポイととりあえず物を入れておく箱のように、魔獣でも盗賊でも収納しておけばいいのだ。中に入れる物として生物禁止とかって聞いていないし。経時変化なしだから仮死状態になるかもしれないけど。
丸太だって根っこだって、私がここと認識した部位がだけが収納できたのだ。視界にさえ入ればきっと収納できる。触るなんていう制限もないようだったし。
むしろ首だけ収納とかしちゃったら、首なし死体が並んじゃう。どんな殺人鬼よ、私。
「私、最強。うん、タンタル山に行っちゃおう!」
私はベッドの上に立ち上がり、拳を突き上げた。




