異世界大工の仕事見学
私はロープの先に持ち手付きの木のコップを結びつけて、カメチャンが掘ってくれた井戸の水を汲んだ。
「【鑑定】」
~~~~~~~~~~~~~~~
きれいな水
細菌やウイルスによる感染なし
有害物質による汚染なし
飲料可能
~~~~~~~~~~~~~~~
「このレベルなら安心してこの井戸の水が飲めるわ。カメチャン、掘ってくれてありがとう。汲むための手押しポンプは買わなくちゃいけないわね。あ、滑車でつるべ式にするのもありよね」
私に魔法は使えない。だから料理とトイレとお風呂用の魔石は絶対に買う。かなりの出費になりそうだけど。
料理には自在に操れる火が必要だし。この世界の優秀トイレには浄化の魔石が。お風呂には入りたいときにすぐに入れたら最高でしょ。
料理に使う水は井戸水を水瓶にためることができそうだけど、風呂分を井戸から汲んで運ぶほどの体力が自分にあるとは思えない。お風呂は大事よ。だからお風呂に水と火の魔石が必要。
井戸水があれば畑を作ったときにタップリ水を撒くこともできる。まあ、多少の労力は必要となるけれど。
「うーん、おいしい。まろやかだわ」
魔法で出した水は元の世界でいう蒸留水のようにくせがない。悪くいえば味気ない。
この井戸水は山で汲んだような味わいのある美味しい水だった。
「さーて、いよいよ、家本体に取りかかりますかね。この世界の家の建て方も知りたいし、おとめさんに大工さんを紹介してもらいましょうか」
◇◇◇
カメチャンを連れて、おとめさんに紹介された大工さんの作業現場へと見学に行った。
見に行くすがら、ゆったり歩くカメチャン。すっかり街のアイドルである。
たぶん聖獣だからではなく、カメチャンはかわいいのである。
この世界にも希少動物をさらおうとする悪い奴がいた…。まだ子供だから簡単にいくと思ったのだろう。しかし、さすがカメチャン! 誘拐者に捕まえられてもたくましい足で地面をしっかり掴んで離さない。鋭いくちばしで悪い奴の服の腕を引きちぎるように噛みつく。それだけでも痛いだろうに、トドメとして超音波ビーム(こうとしか見えない)で吹っ飛ばした。
気配察知スキルで悪い人の接近を知っても、近寄ることを許してしまうことがある私にとってもカメチャンは最強のボディガードであった。
作業現場に着けば、おとめさんが「頑固じじい」と呼ぶ厳つい顔をした親分と3人の子分で店舗を建てていた。手土産として途中で買った煎った豆を渡す。
見学は許可された。
大工の親分の名はガスバス。親分子分ともに威勢の良いかけ声で仕事をしていく。
見ていて気持ちが良い。
木材で建物の大まかな骨組がとられるのは元の世界と同じだ。角材ではなく丸太のままというところが違う。
木を運ぶ彼らの太い上腕筋が良い仕事をしている。
「この世界、地震は少なそうよね」
街並みを見て気づいてはいた。この世界の家は石とレンガ造りが多い。
詳しく鑑定すれば、石やレンガの接着に使われるのは漆喰ってやつだ。消石灰と砂と水を混ぜれば簡単に漆喰となる。どこかの山で石灰岩がとれるのだろう。これも元の世界と同じである。
けれどもコンクリートってものがない。石灰を高温で処理しなければいけないからだろうか。
または錬金で私が知らない素材を作っているのか。
「建物の基礎部分が薄くて浅いわ。地面と接する部分には石が使われる場合もあるのね」
基礎には防水シートも張られていないし、鉄筋コンクリートも採用されていない。鑑定すれば、コンクリートもどきで基礎は出来ていている。
「うぅーん。もどきって何なのよ。要は私の知らない素材ってことよね」
私は、地面からいきなり木の壁や床を持つ家を建てる気は無い。シロアリが大発生しそうだし。長雨で腐りそうだ。ここは元の世界のようなしっかりした基礎部分を作りたい。
私の家の壁と屋根は大量に手に入れた木を使って、ログハウスのようにするつもりだ。でも、そのままではダメであろう。風雨ですぐに朽ちるのでは困るのだ。
元の世界と同じような機能性の高い家を建てたい。そのためには錬金が大いに役立ちそうだ。
(錬金すればいいのよ。そのためには頑張らなくちゃ)
「ありがとうございましたぁ」
私はガスバス達のかけ声に負けない声でお礼を行った。私まで江戸っ子のように威勢良くなった気分だ。
そして勢いのあるままに錬金ギルドへと向かったのだった。




