聖獣出現
お待たせしました。間隔が空いてしまい。いつも申し訳ありません orz
――ガリガリッ、パカッ
――コロン
「げぎょ」
「「「かめぇ?!」」」
私達の前に転がり出た生き物はカメだった。それも焦げ茶がかった緑色をした大きな甲羅にピンク星のような模様が付いているカメだ。ウミガメというよりリクガメといった感じである。
大きさは小型犬くらい。つぶらな真っ黒い瞳が愛らしい。しかし足先にちらっと見えた爪は鋭く尖っていた。
そのカメがモソモソと私に向かって歩いてくる。
「ちょっと待てぇー」
森の奥からライが叫びながら飛び出してきた。
すごい勢いで走って私とカメの間に立ちふさがる。
またいつもと違う魔力を感じてやって来たのだろう。今回は私でさえ何だかモヤモヤしたのが見えたくらいだ。かなりの魔力が発散されたと思う。
「生まれたら俺がもらう約束だったよな」
そう言って近寄ってカメを抱き上げた。
「げぎぇ。げぎょ」
(あ、カメって鳴かないと思ったけど、異世界カメは鳴くんだ)
ライの腕の中でカメが暴れる。私の方に行きたいように見えなくもない。
「おとなしく、し、ろよ」
「これからはライがあなたを育ててくれるからね。口は悪いけどきっといい人よ」
「げぎゅ。げぇぎゅぅ」
口を大きく開けて訴えながら、カメは私に向かい手を伸ばし身もだえた。
押さえるライの額に汗が浮かぶ。
「おいっ。おぁ? お前泣いてんのか?」
確かによく見ればカメの目に涙が見える。
(でもカメの涙って乾燥を防ぐために勝手に出ると思ったけど。異世界カメは違うのかな)
「はぁ、仕方ない。泣くほど、そんなにこいつの側にいたいのか。おい、ミーチェ飼ってもいいぞ。ちゃんと躾けろよ」
「は?」
(うわっ。ライ、誤解している。たぶん泣いているわけじゃないよ)
「私、カメの飼い方なんて知らないんだけど。困る困る。エサもわからないし」
「カメじゃねえ。こいつは聖獣だ。エサは自分で捕ると思うぞ。人に慣れさせて人を襲わないようにしてくれればいい。大きくなれば勝手に巣立っていくさ」
「それに助けてくれたお礼をライに出来なくなるし」
「ちゃんと育ててくれれば、それでチャラにしてやる」
それならいいかと考える隙を突くように、ライは私にカメを押しつけた。
「あ」
つぶらな黒い瞳が私を見つめている。
まあ、いいかと思ってしまった私がここにいた。
聖獣は魔力だまりといわれる場所に卵を産むらしい。しかしその場所は不規則で不安定だった。そこに魔力が無くなってしまえば卵は育つことができなくなる。よって卵のままこの世から消え去ることも多々あるらしい。
今回はたまたま私が引き寄せ、魔力を与え、たまたま孵ったというわけだ。
たまたまねぇ。私、運が良いから。
聖獣の数はとても少なく、生態もまだまだわからないことが多いらしい。
「「聖獣…」」
アリストとレイモスが口をあんぐりと開けて突っ立っていた。
美形のそんな姿はレアである。ほんと、私は運が良い。
こうして私は聖獣カメの飼い主となったのだった。
◇◇◇
「カメチャン!」
私は聖獣カメにカメチャンと名付けた。だって卵の時もたまごちゃんだったし。獣と名がつくとつい昔の映画で見た怪獣ガ○ラを思いつくが、カメチャンはそんな厳つい怪獣ではない。
街中で卵を背負った私も十分注目を集めたが、カメチャンを連れている私も注目の的だ。
カメチャンは何処にでもついてくる。
見た目から歩みが遅いと思われがちだが、カメチャンの移動速度は私がゆっくり歩くのと変わらない。私のカンだがこの子が本気を出せばもっと早いと思う。
カメチャンは雑食だった。何でも食べると言っていい。野菜くずでも雑草も食べてくれる。ミミズや虫も食べる。だから私の土地に一緒に行ってお腹が空けば勝手に食べていた。だから平らになった土地の地表に生えた雑草はきれいに食べられてしまった。
「カメチャンのおかげで雑草はきれいに無くなったわ。さあ、次は井戸掘りよ。開拓スキルでできるはず」
「げぎょ」
化学的に合成された物質で汚染された場所はなさそうなこの世界、掘って出た水が危険ということは無いと思う。飲めるかどうかの判定もきっと開拓スキルで出来るはず。
開拓スキルで出来ると心から信じればスキルは発動する。使い方次第で開拓スキルは高かっただけの働きは十分するお得スキルとなるのだ。
「カメチャン、見て見て」
私は手を広げながら地面の上をタッタと走った。
「この辺からここら辺までが家で、ここはテラスにするの。台所に勝手口をつけて井戸にすぐ行けるようにしたいわよね。台所はこの辺りだから…井戸はここよ。うーん、スキル発動には何て唱えるのが正解かしら?」
首をひねって思案する私の横をカメチャンがノソノソと横切った。そしてここといった場所に行くと地面に向かって口を開ける。
「ぎゅれれれれれれれれれれれれれれれ」
地面に穴が空いた。穴はどんどん深くなっていっているようだった。
最初に少し湿った土が舞ったが、それ以降は穴がどんどん深くなっていく。穴の壁はしっかりと固くなっていた。
カメチャンの口は怪獣ガ○ラのように火は吐かないが、超音波が出ているようだった。
休み休みであったが1時間ほどで穴は掘り終わった。石を投げ入れると遠くでかすかに水音がした。水が出たのだ。




