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お好み異世界優良物件(家)  作者: 妃 大和


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生まれる?!

 ある日にはライが卵の様子を見るために『乙女の吐息』にやって来た。フードを被ってコソコソしていて誰かと思ったが、卵に魔力を与えに来てくれたのだ。余程たくさん吸われるのか魔力回復ポーション持参だった。


「おや、お忍びかい? 久しぶりに見るね」

「ばばぁも元気そうで何よりだ」


 ライとおとめは知り合いらしい。

 お忍びとは、余計な言葉を聞いてしまった。やっぱりというかライは身分が高いようだ。言葉は汚いけどエラそうだし。

 まー、本人が何も言わないから知らんふりをしていよう。余計な事には首を突っ込まないことが平穏に生活するための知恵ってものだ。

 私のステータスの「運888」ってのは力を持つ人に出会うってのが含まれていると思う。

 この数値を見ると、5バツ様が腰に手を当てハハハと笑っている姿が浮かぶ。

 レイモスにしろマイカレッティにしろおとめにしろ、それなりに有名人で有能だ。そこに大物らしきライが加わった。普通なら知り合うのも難しいと思う。

 彼らの影響力は良くも悪くも大きい。平穏な余生を願うなら、振り回されないように気を付けなければ。



 その後どこに行くときでも基本、私は卵を背負い連れて行った。もちろん魔力遮断のシーツでくるんでいる。

 卵が大きくなることはなかったが、ピンクの模様が以前よりハッキリしてきた気がする。

 ライによると「卵の中身はそこそこ完成している」そうだ。魔力を十分に充填すれば殻を破って出てくるらしい。

 私の魔力が好物だが少量なので、代わりに空気中の魔素を取り込んだり、ライの魔力を吸い取っているが、誰か魔力を持っている人が触ったら吸い取る可能性もある。危険物体なのだ。

【鑑定】すれば何の卵かわかって安心となるが、私はしなかった。ライの様子からそこまでの危険はないと思われたし、何が生まれてくるのか楽しみに待ちたかったからだ。

 どんな魔力を持つ異世界生物が生まれるのだろう。もし危険生物が生まれても育てるのはライだ。私はあくまで生まれるまでの母と言ったところだ。


 今日も我が土地で【整地】作業である。

 平らに慣らした場所に卵は置いた。


「もう1週間も連れ歩いていれば我が子よ我が子。まさか子供二人育て上げてから異世界で卵のお世話をするとは思わなかったわ。はいはい、ここで待っていてね」


 ――ポンポン


「【整地】」


【整地】はスキルだが、少量の魔力を消費する。立ったり膝をついたりで腰が痛くなって疲れると思っていたが、魔力消費での疲れもあったようだった。

 そこに卵に魔力を与えるというのが加わったので、以前より疲労感は増している。

 だから時々初級ポーションを栄養ドリンクのように飲むようになってしまった。その初級ポーションを自分で作るのにかなり魔力を消費するので、つい買ってしまう。


(売っている初級ポーションって青汁がもっと癖あるようなのが多いのよね。自分で作ったほうが効果も高いし、サラッとして飲みやすいんだけど)


「卵ちゃん、さあ、魔力あげるわよ」


 休憩がてら卵に魔力を与えて、続けて買っておいた初級ポーションをちびちびと飲む。


 我が土地もだいぶ平らな部分が増えた。家を建てる場所だけで良いかとも思ったが、それだと荒れ地に建っている風情になってしまうので、お気に入りで残した木以外の場所は全部平らにすることにしたのだ。

 私がめざす家は「自分好みの素敵なおうち」なのだ。


 ――ゴロン


 卵が私の足元に寄ってきた。

 何事?


「よっ、頑張っているな」

「元気にしているな」


 声のした方に振り向けばアリストとレイモスが馬と共にいた。

 私の気配察知スキルは悪意や殺意には敏感で意識していなくても察することができるが、それ以外にはまだまだ疎いのだ。

 どうやら私の様子を見に来たらしい。手土産としてクッキーまで持ってきてくれた。



「わざわざありがとうございます。せっかくのお休みをここに来るのに使わせてしまいすみません」

「いや、大丈夫だ。見回りの一環として来ている」

「それにうわさを聞いたからな。見に来た」


 うわさ?

 足元の卵を見る。うん、これだろうな。すでに背負い始めて1週間経つし。


「やたらデカい卵を持ち歩いている女の子ってミーチェのことだろ。何してんだ?」


 そう言いながらアリストは卵に手を伸ばした。


「触っちゃダメです」

「うぎゃっ」


 私はアリストを突き飛ばしたが、間に合わなかった。

 クニャリとアリストは座り込んだ。

 レイモスが腰の剣に手をかけるのが見える。魔法でなく剣なのが騎士っぽい。


「剣もダメです」


 振り向きざま私はレイモスに体当たりした。突っ込む私をレイモスは難なく抱き止める。

 卵を見れば、ご機嫌な感じで赤く光っていた。


「魔力を吸うってのはうわさになってませんでしたか?」

「……いや」

「んっ? なんか音がする?!」


 二人して耳を澄ます。

 止めたのにレイモスまで卵に向かって手を伸ばし、撫でた。


「ううっ」


 魔力を吸われて気持ち悪そうに口元を押さえているし。だから止めたのよ。

 卵は今度は青く光っている。

 アリストとレイモスの魔力をたくさん吸えたのだろう。満足そうに揺れている。心なしか卵の周りの空気が揺らめいている。

 そしてさっきよりハッキリと中から引っかくような音がした。


「卵に魔力の充填が完了したのかも?!」


 私達はその場で息を止めて卵を見つめた。


 ――ピシッ


 生まれる瞬間は今だ!








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