高額スキルをお買い上げ
レベルの数値、訂正しました orz
まだ見たこともないけど、金貨がたくさん手に入ることとなって私の気分は浮ついていた。
(札じゃないのよ。金貨よ金貨)
すでに陽は傾き、私の影は長くなっている。遠くの山に太陽が姿を隠すのも時間の問題だ。
この世界の太陽は地球と同じく一つで、裸眼でジッと見るのが厳しいくらいキラキラしているのは同じである。
「おとめさん、帰りました。夕ご飯お願いします」
「カウンターにお座り。水もいるかい? カレンがなんか話したいそうだよ」
カレンはおとめの娘の名である。可憐……ぶれない乙女チックネーミングセンスだ。
私はおとなしく指示された場所に座って、目の前に並べられた夕食を食べた。
尖った歯が櫛のように並んでいる魚の煮物がとても美味しい。醤油のような味噌のようなつゆで煮込んである。ほんのり甘みがあって、ミントのような爽やかさもある、和洋が合わさった味であった。付け合わせの青菜炒めにはにんにくのような香りと共に絶妙のシャキシャキ感がある。
この世界の食事はほぼ私の舌に合っている。
今晩の食事で不満があるとすればただ一点、ご飯が欲しい。酸味のあるパンも悪くは無いが、せめてビール、この世界でのエールが飲みたい。
異世界あるある、どこかにご飯文化があると信じるしかない。まだ未成年の私は出された水を飲んだ。
「あ、あ、ミーチェちゃん! あ、あれ、あれ。あれってあれよね。今日の夕食に少し使ってみたのよ-。やっぱり良い味出るわよねー」
カレンは厨房の奥から、お玉と共にげんこつ親分ハチの蜂蜜の入った小瓶を持って現れた。
彼女のおとめと似た魔除けの面のようなギョロッとした目が細められ、大きな口がニコッと弧を描いている。鼻息も荒く近づいたカレンから、少しのけぞった私を誰もとがめられないだろう。
「あー、私、採取師なんですよ。今回、げんこつ親分ハチを見つけたんです。瓶詰めするために厨房を借りたので、蜂蜜はお礼です。これからも時々厨房を借りることがあると思いますので、よろしくお願いします」
「こんなおすそ分けがあるなら、むしろ大歓迎よ! ねぇ、お母さん」
「あぁ、あぁ」
たいそう喜んでくれたようで、よかったよかった。
(食事も美味しくなるし、食材のおすそ分けはこれからもしようかな)
誰かと関わり合うことで、少しずつ私もこの世界に馴染んでいくような気がする。
こんな私でも、夜、自室で一人になると元の世界に残した親や子供達のことを思い出し、この世界で異質な自分はやっていけるか不安になるのだ。
それでも元気な体は一晩グッスリと眠れば、健康な体に健全な精神が宿るとばかりにスッキリしてしまう。
(何とかなるよね)
自分に向かって私は語るのだった。
◇◇◇
翌日、5バツ様と会話するためにオシャルハ神殿へと向かう。
今朝、こっそり巣蜜をアイテムボックスから取りだして、今日の朝食に添えてみた。歯ごたえのある丸いパンをちぎり、巣蜜と一緒に食べたのだ。グニュと噛むと、ジュワーとしみ出す蜂蜜のおかげで朝から私は幸せだった。皆がげんこつ親分ハチの蜂蜜を欲しがる理由が分かった気がした。甘いのはもちろん、幸せの香りとはこの事だろうと納得の美味しさだった。
そんな私の足は軽やかに神殿へと向かった。
白いドームの入口の布をくぐり、祭壇のある部屋へと入る。
以前同様に隅にある長いすに座り、カバンで隠した元スマホの通話ボタンを長押しした。
「5バツ様、おはようございます。買いたいスキルが決まりました。開拓スキルです」
「開拓ねえ」
「一つ一つ欲しいスキルを買っていったらキリが無いから、ひっくるめての開拓スキルです。良い考えでしょ」
「大ざっぱになるから、個々の能力値はあまり上がらないよ」
「家を建てられるだけの能力があればいいんです」
「……何か企んでる? まあ、いいか。じゃあ3000万円で」
「高っ」
「要らない?」
「もう、それでいいですよ。払います」
私の頭の上の方から「まいどありい」という5バツ様の声が聞こえたような気がした。そして通話ボタンは緑色に戻っていた。
私は元スマホを持ったまま長いすから立ち上がり、見えないけど5バツ様に向かってペコリと頭を下げた。
続いて壁に向かい、そっと唱える。
「【ステータスオープン】」
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ミーチェ・モーリー
人族 15歳 女性
レベル:3
体力:233 精神:320 魔力:31 運:888
鑑定スキル:Lv.4
錬金スキル:Lv.2
気配察知スキル:Lv.3
浄化スキル:Lv.3
開拓スキル:Lv.1
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(あっ、増えた増えた。スキルは使っていればレベルが上がるみたいね。錬金スキルも使わなくちゃ上がらないかぁ。開拓スキルの3000万の出費は痛いけど、恵比寿様が貯金を増やしておいてくれて助かったわ。元を取るためにも開拓ってことでいっぱい使わなくちゃ勿体ないわよね)
「さあ、今日も一日頑張って働きますか」
私は大きく伸びをしてオシャルハ神殿を後にしたのだった。
5バツ様の機嫌が良いのか、やけに空が青くキラキラしていた。




