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お好み異世界優良物件(家)  作者: 妃 大和


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みんな大好き超高級蜂蜜

 げんこつ親分ハチの討伐は誰も刺されることもなく、無事に終了した。オメダレダ村民も蜂と蜂の子がたっぷり入った袋を担いで満足そうである。


「オメダレダ村って農産物が主要産物だと思ってました」

「森にある金になるものならについてなら、色々知ってるぜ。なんせオレらは開拓民だからな」


 袋を担いだ1人がガハハと笑った。

(ふむ…)


「開拓民ってことは、森を切り開き、開墾して、畑を作り、家を建てたってことですよね」

「おう、まあな」

「それはすごいです!」


(開拓。良い言葉だわ。もらった!)


「ミーチェ・モーリー、私への報酬は覚えているだろうか」


 空を見上げて両手を握りしめウンウンとうなずく私は、レイモスによって現実へと戻された。

 レイモスの目はお預けを食らっている犬のようである。私を見つめる瞳には、いつまでも引き延ばすと身の安全が保証されないような危うさがあった。


「蜂蜜はちゃんと瓶に入れてから渡しますって。討伐が終わったら速やかに王都へ戻らなくちゃいけませんよね」


 私達はオメダレ林を後にした。

 オメダレダ村に誘われたが、またの機会に来ると返事をして、王都へと帰ったのだった。



 レイモスと別れ、小間物屋へ瓶を買いに行く。もちろん蜂蜜を入れるためだ。

 アイテムボックスに安く買った瓶を入れて、足早に『乙女の吐息』へ戻る。食堂では乙女さんが一人、留守番していた。

 午後の客足が途切れた時間なので、厨房を借りて、瓶の煮沸消毒をする。大きな鍋に湯を沸かして、洗った瓶をグツグツと煮るのだ。雑菌は死滅し、保存性が増すはずである。

 瓶が乾いたことを確認してから、げんこつ親分ハチの蜜をアイテムボックスから300㎖注ぎ込む。

 片手をアイテムボックスに入れて、残った手で瓶を握って、「蜂蜜移動」と唱えるとなぜか溜まっていくのだった。

(どんな原理で蜂蜜がアイテムボックスに入っているのかも分からないし、どうしてこんなやり方で中身の移動ができるのかも分からないけど、便利だわぁ。5バツ様ありがとう)

 手作りの形が均等でない瓶に入った蜂蜜は、透明な黄金色に光っていた。売ればまさに金貨と替わる価値があるのも納得だ。


「さあて、これをお待ちかねのレイモス様に届けますかね」


 厨房にあった小さな瓶にも蜂蜜を入れ、乙女さんにお礼として渡す。

 その足で私は再び騎士団詰め所を訪ねた。待合室にレイモスを呼び出すと、彼はすっ飛んできた。

 平静そうに見えるが、目が何かを期待して笑っている。

(いやあ、若い若い)

 にやけそうな顔を引き締めて、私は「お礼です」と瓶を捧げるようにして手渡した。


「また何か困ったことがあったなら相談してくれ。善処する」

「あー、ではそのうちに繊細な火力操作のできる火魔法の使い手を紹介してください」


 満足そうに瓶を持つレイモスが首をひねる。


「乾燥させて欲しいものがあるので」

「わかった。アリスト殿は知っているな。あの人に伝えておく。日が決まったら連絡して欲しい」


 私はふと思い立ち、待合室を出る直前にレイモスに質問した。


「蜂蜜はどのようにして食べるつもりですか?」

「……なめるつもりだが」


 想像して浮かんだ笑いを私はこらえた。スプーンをなめるレイモス……可愛すぎる。絶対金持ちのおぼっちゃまだと私は確信した。

 下手なことをしゃべらないようにして、私は手をヒラヒラと振り騎士団詰め所を後にした。


 続いてテニレール商会を訪ねる。

 商業ギルドにやや近い、メイン通りに面した場所に建物はあった。勢いのある商会のせいか、身なりの良い人の出入りも、行き交う馬車も多い。赤茶色のレンガの壁と大きな窓が目印の建物だった。


「訪ねてこいとマイカレッティお嬢様には言われたけど。ここも入るのに勇気が要るわね」


 げんこつ親分ハチの蜂蜜は超高級なので、貴族など身分の高い相手に高額で売ってもらおうと思っての訪問である。ギルドに売るより良い値段で買ってくれそうな感じがしたのだ。


 ウロウロしていると扉から出てきた一人が私の方へ歩いてきた。


「ミーチェ・モーリーさんですよね。マイカレッティさま側付きのシュタイン・ラスです。さあ、どうぞお入りください」


 あれよあれよと建物の中へ通され、小部屋へと案内されてしまった。

 どこで情報を仕入れたのか、私がげんこつ親分ハチの蜂蜜を手に入れたことを知っているようである。


「マイカレッティさまの好物であるげんこつ親分ハチの蜂蜜を手に入れたとか」


(あー、ここにもげんこつ親分ハチの蜂蜜好きがいるのね)


 私は無言でカバンから蜂蜜の瓶を一つ取りだした。もちろん、カバンの中にアイテムボックスの取り出し口を出現させたのである。


「買い取りをお願いしたのですが」

「不純物が少ない良い品ですね。持っているのは蜂蜜だけですか?」


 巣蜜ごと手に入れたことも知っているらしいことに私は驚いた。なんて情報収集力を持っているのだろうか。


「巣蜜もありますけど、まだ瓶に入れていないのでここには出せません。蜂や蜂の子はオメダレダの村の人にあげました」

「あげたですか……それはそれは」


 結果、使い道の多い蜂蜜をテニレール商会に売ることになった。

 蜂蜜を入れる瓶はテニレール商会で用意してもらう手はずになっている。

 一瓶約500㎖。手に入れたげんこつ親分ハチの蜂蜜が約110ℓ。200瓶売ることにした。

 めったに手に入らない蜂蜜は一瓶あたり金貨2枚となった。日本円感覚で2万円くらいだろうか。ぼったくっている気がしないでもないが、土地を買うにはお金が必要なのだ。

 再度私は、げんこつ親分ハチ達に冥福と感謝の祈りを捧げたのだった。










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