オメダレ林へ
さっそく朝一で冒険者ギルドへ行って、採取依頼をチェックする。
まだ行ったことのない初心者冒険者向けの王都近郊の林での採取を探すのだ。
今まで行っていたのは子供が小遣い稼ぎでいくような場所だった。そこでさえ錬金ギルドからの品物指定の依頼でそこそこ稼げたのだ。私の期待はもちろん高まる。
「おはようございます。カーネルさん。私、この依頼受けます!」
私は意気揚々と今日も受付に座るカーネルに向かって依頼書を差し出した。
「おはようございます。ミーチェさん。貴方はソロですよね。準備はしっかり出来ているんですか?」
「初級ポーションと避け玉は持ってます」
エヘンとばかりに、胸を張って答える。
「ふむ。あそこ動物出ますよ。避けるだけじゃ冒険者と言えないでしょ。何か武器を持ってますか?」
「は? 私、採取師なんですけど」
「採取でもナイフくらいは使うでしょうに。いつもどうしているんですか?」
「え、手でもぎます。むしったり、ちぎったりもしますけど」
「……丈夫な手なんですね。ナイフでもスコップでも良いですから買ってください。それでなければ許可できません」
仕方ないなと、私は冒険者ギルドの1階隅の小さな何でも屋をのぞいた。
依頼をこなす前に足らない物を買い足したり、帰って来て使ったり壊れたものを補充するためにある店である。なのでそこそこ消耗品は置いてある。
「いらっしゃいまぁせ。何をお探しですか?」
舌っ足らずな話し方をする私と同じくらいの年の女の子が店番をしていた。大きくてまん丸いオレンジ色の目があめ玉のようだ。茶色がかったオレンジの髪は良い色に焼けたパンのようだ。ロールパンのような髪が耳の上に2つ付いている。
「あの、採取師の私でも使える武器になるナイフってあります?」
「はあい、もちろん!」
目の前の彼女はいくつかのナイフを私の前に並べて語り出した。
……止まらない。売り物への愛が溢れた説明には、うなずくしかない。安物であっても利点を必ずあげてくる姿勢は好感が持てる。
「汎用品ですが、ゴムのような蔦にも、固い石にこびりついた苔にも対応出来るこれはいかがですか?」
彼女が手に取ったナイフは、小ぶりでありながら刃は硬く薄い。私でも扱いやすそうだ。
「攻撃するときは敵に切りつけるのではなく、刺すんです。護身用ですね」
そう言いながら彼女はナイフをビュンビュンと振り回す。かなり軽そうである。
「それください。あと火打ち石も」
「はあい。まいどありぃ。私、リイネっていいます。今後もひいきにしてくださいねぇ」
「え、あぁ。よろしく。ミーチェです」
同世代(見た目)のせいか、リイネの私に対するパーソナルスペースは近かった。ニッコリ笑って、手を握りこむようにして品物を手渡してきた。
そんな彼女にドキドキしながら私も笑いかえしたのだった。
この世界にはあいにくとライターのようなの着火させる道具は無かった。火の魔法を使える者も多いので、その方面の道具が発展しなかったようだ。火の魔石を使う方法もあるが、使いこなせる自信が無かった私は火打ち石1択である。
ナイフを手に入れたことでカーネルは依頼を受ける許可を出してくれた。
さっそく屋台で丸いパンを買い、さっき手に入れたナイフで切り込みをいれる。
「おおー、切れる」
違う店で葉野菜と焼いた塩漬け肉を買って挟んだ。サンドイッチもどきの出来上がりである。水筒はまだ買っていない。果物を現地調達して代用しようと思う。お弁当の完成だ。
足早にいつもと違う城門から出て、林へと向かう。足取りは軽い。
皆が通った跡で道が出来ているから、初めて通る道でも迷うことはなさそうだ。
林の近くには郊外で畑仕事をメインとする者たちの村「オメダレダ」があるせいか、ここの林の通称は「オメダレ」である。
オメダレ林に入って、気配察知のスキルを意識的に使う。感じる範囲を自分の周りから、少しずつ遠くへ遠くへと広げていく。動く動物の気配を探る。一度遭遇したことのあるウサギやリスなども意識すれば気配が分かるが、疲れるので放っておく。今、探るのは人間以上の大型の動物と自分に向かって来る素早く動く動物だ。
「うーん、やっぱり今までのところよりはいるね。でも遠いと。ここら辺なら安全かな。【鑑定】」
今度は鑑定スキルを使った。そして目に入る依頼品とお役立ち品をナイフを使って採っていく。
「ナイフ使っていると、自分のレベルがすごく上がった気がするわね。周りに誰も居ないし、久しぶりに見てみようかな。【ステータスオープン】」
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ミーチェ・モーリー
人族 15歳 女性
レベル:4
体力:222 精神:310 魔力:31 運:888
鑑定スキル:Lv.3
錬金スキル:Lv.2
気配察知スキル:Lv.2
浄化スキル:Lv.2
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すべての能力が上がっているのは分かるが、自分のレベルが高いのか低いのか、いまだによく分からない。
他人のステータスをのぞき見るのは、どうにも悪い気がして、未だに詳しく見ることができない。機を見て自分と比べる必要があるとは思っている。
回数をほかのスキルより多く使っているから鑑定スキルが一番高いのだと思うが、まだまだどのスキルも使いこなせている自覚はない。
「とりあえず採取、採取」
薬草といってもいくつか種類はあるし効能も若干違う。状態によって効果も変わる。なので使った薬草によって、同じ初級ポーションでも効き目が違ったりする。
オメダレ林の植生は豊かだった。
私は依頼品と高額でギルドへ売れるものを片っ端からアイテムボックスに入れていったのだった。




