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お好み異世界優良物件(家)  作者: 妃 大和


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王都めぐり 

「宿も決まったし、冒険者ギルドで換金して、街探検するかな」

 私は寝転がっていたベッドからポンと降りて、1階へと向かった。


「食事は5時からできるよ」

「はいはーい」


 子供扱いされているなと思いながら、宿屋を出る。

 道行く人に冒険者ギルドの場所を聞くと、『宿屋 乙女の吐息』から近かった。メイン通りをはさんで反対側にあった。

 サッカエの街にあった冒険者ギルドよりも王都のギルドは、やはり大きかった。四角い大きな灰色の石を積み上げた4階建て建物はいかにも頑丈そうで、無骨な感じがする。出入りする人も多い。


「さあ、入っちゃおう」


 私は大きな灰色の金属の扉を開けた。

 天井が高くてカウンターが並び、壁に依頼が貼ってあるのはお決まりのようだった。でも、カウンターの数も貼ってある依頼の数もずっと多い。お堅い役所のような感じは同じだったが。それでも太い柱の裏は飲食スペースとなっていて、がたいのいい男達がくつろいでいるのが見える。

 私は買い取りカウンターに向かった。

 並んだカウンターにいたのは、前髪を7対3にぴっちり分けた真面目そうな青年だった。やや神経質そうだが仕事はキッチリしてくれそうだった。


「買い取りお願いします」


 身分証のプレートと共に、今回もカバンから換金できそうな物をカウンターに出していく。薬草、何かのピカピカした実、フサフサした羽、鈍く光る石……サッカエで出した糞はもう無い。面倒で個々の詳しい鑑定はしていなかった。


「私はカーネルと申します。お見知りおきを。これらは薬草と火炎樹の実と迷い鳥の羽と鉄石ですね。ふむ、良い状態です。では、換金計算をしますので、お待ちください」


 2階で換金計算をするようだった。それぞれの数を記入した紙と共に木箱で運ばれていく。私は引き替えとなる木札を受け取った。

 待つ間貼り出してある依頼を見る。採取に護衛、討伐依頼。まさにどれも冒険者のお仕事である。


 カウンターで私の番号が呼ばれた。

 カーネルは単価と数を言うと、私に金を渡す。


「ん? 計算間違っていませんか?」


 新人だから誤魔化されたとは思わないけど、大まかに暗算した金額と違いすぎる。これ一つがいくらでいくつあるからと私は説明していく。

 普段の買い物で、レジに並ぶ前にだいたいの金額を把握するのが常だったからね。財布の中身分しか買い物って出来ないから。こうして主婦は大まかな暗算は得意となっていくのだ。

 カーネルの顔色がみるみるうちに青くなって、分け目を乱しながら2階へとすっ飛んでいった。


「も、申し訳ありませんでしたぁ」

「あ、あのちゃんともらえるなら大丈夫ですから」


 小娘に向かって頭を下げ続けないで欲しい。ギルド内で注目は浴びたくない。

 異世界で日本人が計算に強いのはここでも同様だった。

 視線を集め始めていたので(小娘だし、ちょっかい出されたくないし)、正しいお金を受け取ると直ぐにギルドを出た。


「さ、後はどこに行こうかな」


 周りを見れば、白いドームが目に入った。

(あそこに行こう)

 メイン通りは奥に行くと坂になっていた。人の流れに沿って登って行く。

 近づいてドームを眺めれば、どうやって建てられたのか見れば見るほど分からない。雪で作るかまくらの入口に布が垂れ下がったような外観だった。

 周りの人はドームの近くで拝み、布をくぐるときにも拝んでいる。

(宗教的建物かしら?)


「5バツ様がまつられていたりして」


 私も布をくぐった。

 外から見ると丸いのに、中に入ると長方形の部屋だった。一番奥には祭壇がある。天井を見れば明かり取りの窓がレースを編んだような形ではめられている。きれいな形の明かりが床に映っていた。

 ふと思いついて元スマホを見てみると、丸いボタンがほんのり光っている。

 たくさん並んでいる長いすの誰も居ない端に座って、カバンで元スマホを隠してボタンを長押しした。


「その通り」


 いきなり5バツ様の声が聞こえた。


「今日はちゃんと聞こえるんですね」

「信仰心が強い場所は私の力も強いのだよ。だから私に連絡がしたいときは神殿に来ると良い」

「はい。あの、5バツ様のこと、この世界の呼び方した方が良いのでしょうか?」

「貴方が呼ぶ分には5バツ様のままで良いよ。そろそろ終わりだな。話をするときは内容を絞って簡潔にするように」


 いきなり切れた。

 祭壇へと向かう。何体か像が建っている。長い髪の像が5バツ様だろうか。


「色付いていないし、顔がぜんぜん違うけど、髪が長いから、これが5バツ様かな」


 私は頭を下げて、祈った。


「無事に毎日が過ごせますように」


 それから次の目的地、商業ギルドへと足を向けたのだった。







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