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お好み異世界優良物件(家)  作者: 妃 大和


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15/59

影の立役者は私

 目の前の人の視線を受けて、私は自分の姿を見た。

 ワンピースからブーツまで、ようは頭のてっぺんから足元まで土埃だらけである。たぶん、顔もそうなのだろう。

 レイモスの手が私に向かって伸ばされた。その手が髪をワシワシとなでつけ、袖で頬をゴシゴシとこする。そんなに私汚いか?


「無茶するな」

「してない」

「血だらけだ」


 あー、トゲで引っかいたからね。

 言葉少ないけど、この子私のこと心配しているのよね。うん、分かるよ。昔は私が心配する立場だったから。だから、心配されることは嬉しい。けど、くすぐったい。

 素直になった方が、今後の人間関係においてこじれないことは経験上知っている。


「心配してくれてありがと」


 自分の袖で顔をこすって、エヘンとばかりに笑った。


 足元を見れば、そこそこ大きい蜂がボテボテと落ちている。氷が溶けたのか、小さな水たまりになっている。


「これ、やったのレイモス様?」


 うなずかれた。水色の髪にやや無口でクール。ゲームのキャラで考えれば、典型的水魔法または氷魔法の使い手にしか見えない。リアルにその通りの氷魔法使いだった。

(どうせなら氷魔法を使うところが見たかったな)

 レイモスは私に近づき、服の土埃も払い出した。


「自分でやりますよ」


 私は体をひねり、レイモスの手から逃げ回った。


「お前達、何してるんだ? 遊んでいないで、早く次に行け」


 声をかけながら、落ちている蜂の死骸を焼く人が側にいた。彼が【焼却】と言いながら剣をむけると小さな火が上がって灰になっていく。赤みがかった黒髪の持ち主はやはり火魔法が得意のようだ。同僚さんと思われる。護衛騎士達は魔法と剣の使い手なのだろう。

「あぁ」と返事をしてレイモスはスタスタと行ってしまった。


「おう、俺はアリストだ。あんたがあいつにお世話されているミーチェだろ。人つきあいが苦手なやつがよく世話するもんだ。何かで火魔法が必要なときは俺を呼んでくれ」


 アリストは片手で合図して立ち去った。ちょっと気障ったらしいけど、この人は面倒見が良い奴に違いない。レイモスのいい先輩なのだろう。


 およそ3時間、私達は集められるだけのハイピの実と茎葉を集めたのだった。

 急いで撤収して、王都へと出発する。

 茶色マントのおじさんは大きな袋に入るだけハイピの実を詰めて、護衛騎士一人と共に先に出発した。どれだけの人数の患者を救えるのか分からないが、少しでも早く届けるために。

(間に合いますように)

 私も心から祈った。


 残されたテニレール商隊一行も予定以上のスピードで王都へ向かった。

 街道はどんどん広く、馬車を走らせやすい道となったのは幸いだったと言うべきか。荷馬車に乗る者達は中で跳ねまくっていたのだから。

 手入れされた畑の連なりよりも家が増えてきた頃、王都をグルリと囲む城壁が見えてきた。

 城壁を越えて見える建物の壁の色や屋根の色はサッカエと似ている。三階くらいの四角い建物が多い。その奥に白くて大きいドームが見える。

(サッカエより頑丈そうな門ねぇ)

 さすが王都、出入りする人や馬車もやたら多い。カラフルな髪や見慣れない服を着た人を見ているだけでワクワクしてくる。

 テニレール商隊一行はすんなりと城門を通ることが許可された。有力な商会ってことである。

 途中、私達がもう一カ所の森でもハイピを採取したにもかかわらず、翌日の夕方には当初の予定通りに王都へ到着できたのだ。朝食も昼食も携帯食料という強行軍の結果である。はい、みんな頑張りました。

 私の手や顔に負った傷は、一晩ですっかり治ってしまった。5バツさまが言っていたとおり、私の治癒能力はそこそこ高いようだ。


 今度こそ、商隊の皆とお別れだ。


 ここ城門付近を見る限り、感染症が流行っている地域は他の場所のようだった。ハイピの実の効果は高いので、ものさえ十分にあれば治まることだろう。


「ミーチェ・モーリー、約束の香草や食材の採取分の代金よ。ハイピが実以外も使えるという情報は助かったわ。貴方の情報を元に商品をつくることにしたの。弱い熱で乾燥させたものを殺菌効果のある粉末として売る手はずを整えたわ。その分も上乗せさせてあるわよ」


 マイカレッティは小袋を直に私に押しつけた。たぶんお金が入っている。けっこう重い。

 顎に手を当て、マイカレッティはきれいな顔を私に近づける。

 ドキドキする私は変じゃないと思う。


「……貴方、植物に詳しいただの採取師とは違う気がするのよね。まあ、いいわ。また使えそうな情報があったら、私を訪ねていらしゃい。一番良い形で採用してあげるわよ」

「は、はい」


 違った意味でまたドキドキしてしまった。

 鑑定はレアスキルらしいので、持っていることは知られない方が自分の身を守ることになるはずだけど、疑われているよね。頭良さそうだもん。

 何だかマイカレッティとの距離が近くなってしまった。まあ、あの子かわいいからいいか。


 テニレール商隊一行に挨拶して、私は王都をひとりで歩き出した。

「こういうときの基本は安全な宿屋を探すこと」

 この世界で一人で過ごす夜は初めてだ。

(世話焼きな女将がいて、清潔でご飯がおいしくてにぎやかならもっと良いなあ)

 考えるほど欲が出てくる。中身はおばちゃんだもんね。


 後日、ハイピの実の不足をいち早く解消し、殺菌という考え方を広め、殺菌効果のある粉末を売り出したテニレール商会はその名を一気に高めたのだった。










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