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お好み異世界優良物件(家)  作者: 妃 大和


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食べ物採取

 借りたブランケットはどんな動物の毛で織られた分からなかったが、私が知る毛布と変わりなく暖かかった。

 馬車の固い床でも意外とよく眠れた私は、周りからかすかに聞こえた物音で夜明けと共に起き出した。下働きの朝は早い。

 朝食作りに向かう人達に断りを入れ、私は辺りの茂みで草や葉を採取した。

 採ったものを鑑定して、カバンに入っていたスカーフのような布で包む。

 料理に使えそうな美味しいものを集め、料理長の元へと持って行った。


「おっ、香草を採ってきたのか」


 無発酵のパンをこねていた手を止め、他の男性に指示を出すと料理長は私がいる方へやって来た。朝は焼きたてのパンが食べられそうだ。

 料理長は私が持つ包みから草葉を手に取り、鼻に近づけ、くんと匂いを嗅ぐ。


「これは上等だ。昨日の夜よりもっとうまいもの食わせてやるぞ」


 ニカッと笑って、料理長は鼻歌交じりに私の持って来た草葉を大きなボウルのようなものに入れなおし、持って行ってしまった。


「美味しい料理になるならいくらでも採ってきますよ」


 料理長の背に向かい私は声を掛ける。

 片手を挙げることで料理長は返事をしていた。


 昨晩のちぎった葉を入れただけのスープより、料理長の作った香草入りスープは格段に美味しかった。


 ◇◇◇


 キャンプと思えば多少不自由な行軍も楽しいものだった。

 ゴム製のタイヤがついていない荷馬車は容赦なく跳ねたが、何の魔法かお尻が痛くなることはない。

 初めて食べる料理の具で顔が引きつることはあったけど、美味しければ私にとってなんの問題も無かった。たとえ何かの尻尾や水かきのついた指が入っていてもである。


 この世界について知りたかったが、誰かしらが近くに居るので、元スマホで検索する時間はなかなかとれなかった。誰も似たようなものなんか持っていないのに、使う勇気はさすがに無い。

 ただでさえ知らないことばかりで、「すごい田舎から来たもので」と何でも聞いているばかりである。すごく怪しいと自分でも思うのだ。若い娘の笑顔最強とばかりに、笑って場を離れるおばさん根性に自分であきれてきたところでもあった。


 ツンツン娘のマイカレッティと護衛達はいつも気を張っているように見えた。何か大事なものを運んでいるようだった。

 でも、下働きは言われたことをするだけ。優秀な護衛さまのおかげで、自分の仕事に励むだけでよかった。

 私は下働きの一人として指示されたことをするほかに、商会一行が止まる度に辺りの散策をして食べられるものを採取した。味気ない携帯食や乾燥食料ばかり食べるのに耐えられなかったからだ。

 舌の肥えたおばちゃんは食に対してワガママなのである。それにこの世界の動植物は新鮮なほど味が濃くて美味しい。それが保存食となると技術が確立していないのか、味が落ちるのだった。


 散策に行くときにはいつの間にかレイモスがついてくるようになっていた。移動中、私は荷馬車の中でボケッとしているだけだが、彼は違う。休憩を取らなくて良いのかと聞いたが、「辺りを警戒するのも仕事のひとつ」と返答された。

 うーん、出来る子なのはわかった。若いから元気なのねと割り切る。二人で行けばたくさん持てるし。


「あ、果物見つけた。レイモス様、赤いのだけもいでください」


 様をつけながらも、手伝いはさせる私。ちびっ子なので高い所は届かないんですよ。もちろん私も手の届く範囲のりんごもどきをもいでいく。

 料理長は優秀なので、散策で手に入れた食べられるものを持って行けば、何かしら使ってくれる。小ぶりだが、たくさん成っているので、今日の夕食には新鮮なデザートが食べられそうだ。

 赤味がやや薄いものを手に取り、【鑑定】をかける。……熟し足りないようだ。どの位足りないのか興味を持った私は袖でキュキュッと拭くとガブリとかじった。


「うわぁ、だめだわ」


 私の(ひたい)にシワが寄る。

 レイモスは私の方を向くと、スッと私の手からりんごもどきを抜き取った。

 ――サクッ


「充分いけるが」


 むぅ、どうせ私の舌はワガママですよ。


 二晩野営をし、森を抜けると、一本道の続く先に中世の街のような茶色い建物がたくさん並んでいるのが見えた。

 堅物水色髪騎士とのやりとりにも慣れてきた頃、テニレール商隊はサッカエの街へと到着したのだった。





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