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アルケミスト・ブレイブ!  作者: KAME
―竜族の山脈―
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Calamities chatting

「おーい、入るぞ王女さんー……って、なんだこりゃ?」


 俺が王女の部屋に入室すると、中には多くの魔族がひしめき合っていた。


「あら? 珍しいわね、魔王。こんなところにまで足を伸ばすだなんて」


 部屋の真ん中で椅子に座っていたネルフィリアが……大勢の魔族に取り囲まれていた人間の王女が、俺に気付いて顔を上げる。

 ごく普通の調子で、怖じもせずに。


「……おう、ちょっと王女さんに用があってな。で、これはいったいどういう騒ぎだ?」

「そんなに騒がしかった?」

「いいや、静かなもんだ。だがこの数の魔族がいて騒ぎになってないのが驚きだ」

「そう。みなさん、とても行儀の良い方ばかりだけれど」


 たしかに王女の言うとおり、部屋には暴れた痕も血の臭いもない。

 訝しげに思ってよくよく見れば、種族は様々だが魔族の中でも比較的頭の回る、喧嘩早くない連中が集まっている。……しかも、なんだか子供が多い。

 マジで、なんだこれ?


「口を挟む無礼をお許しください。ご説明させていただきます」


 そうかしこまって敬礼したのは、邪眼族の青年ルグルガンだ。

 このロムタヒマの統治を任せた爺さんの孫で、先代魔王の実の息子でもある。魔族の中では俺の次に強いだろう男だな。あと褐色銀髪のイケメン。


「ここに集まりしは有志一同。私も含めこのロムタヒマの地で、人界についての無知を恥じ入った者たちにございます。魔族がこれよりいかな道を辿るにしても、まずは知識を得なければなりますまいと考えた我らは、少しでも彼らについて知るために、王女さまに人間たちの物語をご教授いただいていたのです」

「ほう。それは感心な心がけだな。子供らもか?」

「はい。彼らこそは魔族の希望。新しき時代を築き上げていく世代なれば」


 邪眼族って嘘が上手いからイマイチ信用ならんのだよな。まあそれだけ頭がいいってことだけど。


 つまり、こいつらネルフィリアから物語を話してもらってたわけか。紙芝居に群がる昭和の子供みたいだな。

 ……あー、いやでも、たしかに魔族の娯楽レベルはその辺か。


 うん、なるほど。サボってたなコイツら。

 まあいいけど。


「勉強会の邪魔をしてしまったか。俺は急ぎの用じゃない。終わりの時間が分かれば、その後にまた来るが?」

「いいえ。それには及びません。ちょうどキリのよいところでしたので、本日はお開きにしましょう。皆、そういうわけだから、今日は終わりだ。明日もまた、同じ時間に集まってくれ」


 まさか毎日やってるのか?

 解散を命じられた魔族たちが、俺に敬礼して部屋から出ていく。

 あー……子供たちは素直だな。露骨に不満の声を上げたり、邪魔した俺に敵意を向けてくヤツもいる。


 えー、俺、魔王なんだけど。

 なんで捕虜に人気で負けてるの?


「……うちのヤツらがすまないな、大変だろ」


 魔族の全員が部屋を出ていって、王女と二人になってから、俺はそう切り出した。

 魔王は簡単に謝ったりとかしちゃダメなんだけどね。けどアイツらみんな俺の子分だから、迷惑かけてるならやっぱ申し訳ない気分はある。


「そうでもないわ。好きでやっているようなものだし」


 アイツらの世話は大変だと思うけどな。

 まあ虜囚生活の暇つぶしになってるんなら、甘えさせてもらおう。


「それより、用って何? わざわざ足まで運んで」

「ああ。俺ってこの前、お前の侍女に不意打ちで腹刺されたあげく、聖属性流し込まれて内臓丸焦げにされただろ?」

「そうね。そのまま死ねば良かったのに」


 辛辣ぅ。


「あれなんとか治して、やっとマトモにメシ喰えるようになったんだよ」

「半年もあれば治るでしょうね。この世界は魔法もあるし」

「で、最近食べ歩きにハマってるんだわ」

「他にやることなかったの?」


 そんなジト目で見ないでくれ。まるで俺がダメなヤツみたいじゃないか。

 魔界は美味いメシなんかなかったからな。人間界に出てきてせっかくだしいいもん喰うかー、って思ってたときにあんな傷負わされて、半年間もおあずけだったんだ。そりゃ、反動くらいあるさ。


「ただ、こうなるとやっぱり前世の味が懐かしくなってきてな。せっかくだからここらで料理の開発事業に乗り出そうかと思ってよ。まあぶっちゃけ……」


 俺はニヤリと笑む。

 ネルフィリアだって元は日本人だ。捕虜用の味気ない食事には飽き飽きして、美味いメシに飢えているはず。

 なら、現物支給で協力を惜しまないだろう。


「ラーメンが喰いたい。レシピを知らないか?」


 俺の問いかけに転生王女様は眉をひそめ、呆れかえった声で答える。


「食べたこともないわよ。そんなもの」



 ………………なん……だ、と……?


 前章の後書きでも言いましたが、書き貯め分はとっくにありません。KAMEです。


 アルケミスト・ブレイブ第二章、竜族の山脈。いかがでしたでしょうか。

 前回は本当にジジイが目立ちすぎてアレだったので、今回は女性比多めになりました。ただしヒロインはリッドです。


 ところで皆さん、どんなラーメンがお好きでしょうか?

 僕は豚骨ラーメンの麺にキムチをのせて食べるのが好きです。平日キムチ無料の店の常連でして、よく食べます。

 ただラーメンって本当に好みが分かれますよね。そこはわりと流行っている店で、昼時は店外まで行列も見えることもあるのですが、僕の身近な人にはあまり好まれません。十人いれば十色のラーメン道があります。カップヌードルを牛乳でつくると美味しいって本当でしょうか?


 と言うわけで次章、魔王ラーメン回(仮)! お楽しみに!

 ……マジでやるかも?


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