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アルケミスト・ブレイブ!  作者: KAME
―転生錬金術師と儚き勇者―
29/250

アルケミスト・ブレイブ! 1

 けれど、それでも。




 ならば、どうする。






 フォン、と。光の力場が発生した。

 僕の合い言葉をうけて、魔術陣が起動したのだ。


『術式展開』


 僕が思うに、あの言葉は終わりの宣告ではない。


『魂魄捕縛。霊核保護。身体構造情報取得』


 道半ばで倒れる未熟への嘆き。

 そして、再度送り出すための叱咤だ。


『取得情報入力。ファイル名ソルリディアに上書き開始』


 床に描かれた魔術陣がめまぐるしく変化していく。特殊なインクの重ね書きにより、魔力の流れが魔術陣を順番に起動させていく。

 ヒーリングスライムと同じ方法だ。この部屋の魔術陣は大幅に書き換えさせてもらった。


『記録情報上書き完了』


 二百年前の勇者よ、すまないがおさらばだ。

 僕の愚かな選択を許せ。できる限り責任はとる。


『遺跡装置起動。再現体生成開始』


 ゴウン、と音がして、地下室の壁や天井が発光し始める。エストも黒装束たちも、現象に驚きながらも見守っている。

 任せっきりの素人どもめ。力で脅すだけの愚か者め。君らが馬鹿なおかげで、細工はし放題だった。


 僕は歩き出す。さあ、存分に叛逆させてもらうとしよう。

 まだ見ぬ敵に約束したのだ。

 僕は、世界に挑む者だ。



『ハッキング。対象、神の腕』



 ヴァチィ、と。地下室を稲妻が走った。うっさいゴリ押せ。


 倒れ伏したレティリエの遺体が輝く。尋常ではない浄化の力を発揮する。魔術陣が自動起動し、魔術式を消されないよう、すぐさま結界が起動し包み込んだ。

 ファイアウォールは想定内。ハッカー舐めるな。


 一歩、また一歩と進んでいく。

 神のオモチャで終わってたまるか。

 僕は、神を殺す者だ。



『神の腕の権限限定行使。クラッキング。対象、世界法則』



 ヴァチチィッ、と稲妻が荒れ狂う。壁や天井に当たって破壊をまき散らす。……しかし決して、装置にも魔術陣にも直撃しない。当然僕にもだ。

 鼻歌ものだな。いまさらこの程度で退けるか。


「なんですかこれは……リッド・ゲイルズ! これは正常なのですか!」


 堪らず身をかがめたエストが悲鳴を上げた。僕は一瞥もせず無視する。

 馬鹿か。正常なわけないだろうに。弄くられようとする世界が悲鳴をあげて、歪みを押しとどめようと暴れ回っているんだよ。

 不正アクセスだもんな。これくらいの抵抗は予想してる。ま、こんな調子じゃ、あんまり大した改変はできないだろう。


 問題はない。ちょっと踏み込んで、一線を越えるだけだ。


 さあ、そろそろ僕のチートを使う時だ。

 もったいぶるようなものじゃないけど、くっそ当たり前のことだけど、それでも僕が転生したときから持っているチートを口にしよう。



『我、魂の転生の体現者なり。前例の一つなり』



 僕は、転生現象の存在を知っている。

 記憶はなくとも経験している。

 なら、まったく新しい術式をでっち上げるくらいは、できるさ。



『創世の礎なりし神の腕、その権限をもって世界に命ず。―――転生現象の再現術式を、許容せよ』



 世界の理が、変換する。


『転生術式起動。肉体と魂の接続開始』


 僕は歩きながら外套を外す。

 稲妻が静まる。装置が正常に全工程を完了し、硝子の筒が左右に開く。どろりとした培養液が大量に流れ出して、地下室の床を浸した。


 筒から出て膝をついた裸の少女に、外套をかけてやる。


「―――親父殿よ、良い合作であった」


 一度死に、そして新しい身体に転生した少女……レティリエ・オルエンは呆然とした顔で、僕を見上げていた。


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