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23. 恋心の封印されし箱

 急いで手を伸ばしたが届かず目の前でゆっくりと幹が閉じてしまった!


≪面白い!マーガレットは生まれ変わってもお人よしだな。私が簡単に受け渡すと思ったか?せっかくだから我の体が朽ちるまでそこにいるといい!≫


 穴の中に霊樹の笑い声が響く。ロイとシリルの声は阻まれ聞こえない。真っ暗で前も後ろも分からない空間に一人取り残されてしまった。


「どうしよう…!」


 私のバッグにランプや火のつくものは入っておらず周りを照らせそうなものはなにもない。暗所恐怖症ではないけれどこんなところに閉じ込められて冷静になれるはずもない!叫びたくなるのをぐっとこらえる。こだまする霊樹の声に負けてなるものか!と自身を奮い起たせ恐る恐る立ち上がり、出口を開ける方法はないのかと壁に手を這わせた。



『ハル!!』



 突然シリルの声が聞こえ、真っ暗な暗闇の中目の前に黄色い光に包まれたシリルが現れた!シリルの魔法の光で幹の中は昼間のように明るくなる。


『道を開けよ───!!』



 シリルがそう叫ぶと光は集まり霊樹の幹めがけて光はレーザーのように一点に集中してぶつかりメリメリと音を立てて外に続く穴が開いた!


 はっとして明るくなった穴の中で振り返るとピンクゴールドに輝く箱が目に飛び込んできた。

 直感的に分かった!

 鍵と同じ色!これが恋心の封印された箱だ!!

 急いで箱をつかみ胸に抱えるとシリルの手を取った。魔法の力であっという間に目の前の景色がかわり穴の中からロイの隣に移動していた。


「シリル、ありがとう!」


≪小癪な!≫


『ハル、早く鍵を!』


 シリルは体で大きく息をすると苦しそうにしている。『魔力を使いすぎました』と小さくつぶやいた。


「小癪なだと!?お前こそだまし討ちみたいな真似しやがって!マリーはどうした!?」


≪マリーは渡さない!我は何千年も一人でこの国のために身を削り守ってきた!小娘くらい好きにさせろ!≫


 霊樹の声はだんだんと枯れたような痛々しい声になり上手く聞き取ることができない。

 大きな叫び声をあげながら枝を振りかざしロイにバシン!と襲い掛かる。ロイは身軽に枝を避けるが足場が不安定でバランスを崩し両手を地面につく。


 私はその間にも胸から鍵を取り出し鍵穴に差しこみ開けようとする!しかし手は小刻みに震えていてなかなか鍵穴に鍵が入らない。こんな時に、私のバカ!!

 何度か失敗しながらもやっと鍵が入り勢いよく回すとガチャリと音を立てて鍵が開いた───!!


「『ハル、危ない』」


 二人の声が聞こえて慌てて箱から目線を離すと目の前に霊樹の枝が迫っていた!


 逃げなきゃ!そう思ったけれど体が反応するよりも枝は素早く私の目の前に迫り───ダメだ!そう思ったとき目の前にシリルが立ちはだかった。

 アイス・ウルフの時のように風の魔法で私の前に立ちはだかり枝を防いだシリルはそのまま地面に倒れこむ。


「シリル!」


『いいんです、私は気にしないで』


 シリルに駆け寄ろうと箱から手を離した途端、不安定な地面に置かれた箱が転がり蓋が開いた!箱の中からはピンク色の光があふれ一気に私の胸めがけて飛び込んできた!

 体中を光に覆われて何かが一気に私の中に入る。


 光はあっという間に私の体の中に入り込み暖かさと共に頭の中に大量の情報が流れ込んできた。あまりにも多い情報を整理しようと私の体は無意識に一瞬体の動きを止めた。

 そこに一度はシリルが防いでくれた枝が再び私に襲い掛かる!



「!?」


 私の頭の中で『大丈夫よ』そう誰かがつぶやいた。すると誰かが私の体を抱き上げ体が宙に浮いた。


 目の前には紺色のローブに身を包む”誰か”がいた。



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