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21. 助っ人

 まずはロイがこの城のどこにいるのか探さなくてはいけない。城内は広く人もたくさんいるだろう。シリルにどうやって見つけ出すのか尋ねると、とっておきの方法があると教えてくれた。


『ハル、テーブルから手を放していてください』


 シリルに言われるがままテーブルから手を放し少し離れる。天井からぶら下がる鎖をを引くと、ゆっくりと何かが降りてきた。


『これは水鏡です。この鉢の中に水を浮かべると城内に限りますが、どの部屋でも見ることができます』


 シリスが指さす方向に木桶が置いてありよくやその横には水路があり水が流れていた。冷たい地下水をすくって鉢に水を溜める。


「これで八分目くらいかな…?もっと入れる?」


『いえ、これで見られます!ありがとうございます』


 そう言うと私の両手も一緒に鉢にかざすように言われシリルをまねて手をかざした。


『ロイの事を心の中で思い浮かべていてください』


「わかったわ」



『術者の思い浮かべるものの姿を映せ───』


 懸命にロイのことを考えながら水鏡を見る。シリスが言葉を発すると静まり返っていた水が揺れはじめ、ぼんやりと風景が映し出された。


『この壁は…ロイは今王族の住む区域の一室にいます。ロイの姿が見えましたね!個室を与えられていますし待遇は悪くないですね』


 ロイの姿が水鏡に映ったら!広い部屋中、椅子に座っている。荷物は取り上げられてしまったのか持っていないようだ。部屋の中にはほかに見張りの為か騎士が2名いるので今私達が手を出すことはできなそうだ。


「どうするの?」


『ロイが一人きりになる瞬間を待ちましょう』


 相談しているとロイのいる部屋の扉が開き、別の兵士が部屋に顔を出した。そのままロイは部屋の外に出て行ってしまった。


『話している内容も聞こえるようにしましょう』


 シリルは水鏡に呪文を唱える。



 ・・・



「ここでお待ちください。まもなく国王様がいらっしゃいます」


 ロイは別の部屋に案内された。高価そうな絨毯が敷き詰められた縦に長い部屋だ。ロイの横には二人の騎士がぴったりと付き常にロイの動きを見張っている。


 少しして、騎士が膝をつき頭を下げたと思うと一人の男性が現れた。ロイの前に置かれた立派な椅子に座り騎士を部屋の外に出るよう命令した。騎士はロイの両手を後ろ手に縛ると外に出た。


「久しぶりだね、ロイ」


「久しぶりも何も俺は赤ん坊の頃に会ったきりだ。初めましてと言ってもらいたいね」


「まぁ、そんなに怒るな。君はクリスタに良く似ているね」


「お前が母さんの名を口にするな!母さんの葬式にも来なかったくせに、今更俺を呼び出して父親づらするな!」


 ロイは激しい剣幕で国王に意見する。私達は話の内容にごくりと唾をのみ聞き入る…


「父親づらとは…父親に向かって失礼だね。ロイ、君に拒否権はないんだよ。その血は私のものであるんだからね。君の兄二人が亡くなったことは聞いているかな?外交的にも王子が減ると不便でね…ロイ、君は今日から城で暮らしなさい。第六王子としての責務を果たすのだよ」


「何勝手なことを言ってるんだ!!金だけ渡して母さんを見捨てたくせに!母さんはお前から施された金は一銭も使ってない!俺はお前の子としてなんて育てられてないんだよ」


 国王は自分の言いたいことだけ言い終えるとロイに目も合わさずに立ち上がった。


「少し頭を冷やしなさい。言ったろう?君に拒否権はない」


 言い捨てるとそそくさと部屋を退出してしまった。ロイは再び呼び出された騎士に連れられ元いた部屋に閉じ込められてしまった。




「シリル、ロイは…国王の事を父親だって言ってたわよね?」


『はい…国王はロイの事を第六王子だと言っていましたね』


 一部始終を水鏡で覗いていた私たちは驚いた。


『ロイは現在の国王の隠し子で第六王子だった…という事ですね。魔物の討伐で第三王子と第五王子が亡くなってしまったのでその代わりに王として迎え入れようとしている訳ですね』


「ひっどい!ロイの意見なんてまるで聞いてなかったわね」


 私とシリルは何とかしてロイを助け出したいと思った。だけどやはり部屋の中にまで見張りがいて今すぐには難しそうだ…。ロイの警備が手薄になるまで待つしかないので水鏡でしばらく様子を見ることになった。

 せめてロイに話しかけられたらいいのに…!

 シリルの研究室は一通りのものがそろっていて生活きできる環境にあった。ベッドやソファはなかったので夜になり私はハンモックを張り寝かせてもらった。




『ハル、ハル!』


 どれくらい寝ただろうか?研究室に窓はないので外の様子は分からない。シリルに揺さぶられて目を覚ました。


「なぁに?朝?」


『いえ、真夜中です!しかしロイの部屋に異変がありました』


 眠たい目を無理やり開いて急いで水鏡を覗くとロイの部屋の中で見張りについていた騎士二名が室内で倒れているのが見えた。そして、白いローブを被った人影がロイの眠っているベッドへ近づく。


「騎士はどうしたの!?」


『急に倒れたんです!このローブの人物が気を失わせるか、眠らせるかの魔法をかけたのかと』



 ・・・



「ロイさん、起きていますか?」


「近づくな!起きてる。お前は…誰だ?俺をどうする気だ」


 ロイは起きていたらしくベッドから飛び上がるとローブの人物との距離を空けて警戒しているようだ。


「こんな真夜中にすいません。しかし、この時間でなければ城の警備が手薄にならなくて…」


 頭に被ったローブをとると美しい金髪の女性が顔を出した。


「私はラインハルトの姉でのサーシャと申します。ロイさん、あなたを助けに来ました」


「ラインハルトの!?なんでっ」


「弟からの手紙で霊樹の話は聞きました。そうしたら今日城に第六王子を招いたと聞いて、お名前が同じだったのでもしやと思い調べたところ同一人物だったので…」




 水鏡ごしに二人の会話を聞き驚いた!まさかラインハルトさんのお姉さんに会えるなんて。


『お二人をこの部屋へ招きましょう!』


 シリルは水鏡から離れると研究室のドアをリズムよく叩く。

 ドアを開けたその先は───ロイが閉じ込められていた部屋に続いていた。



「シリル!?ハル!!どうしてここが」


『お静かに!お二人共、他の騎士に気づかれる前に早くこの扉に入ってください。私の研究室へつなげてあります!』



 再びドアがギイッと重い音を立てて閉まるとロイは驚き目を丸くしていた。


「ここが城の地下!?すごいな」


「あ…あの、あなたがシリル・ウォルシュ様ですね!?私、サーシャと申します!シリル様の事は弟に手紙で聞いています!!あぁ、素晴らしいお方に直接お会いできるなんて光栄です!!!」


 サーシャさんはシリルに両手で握手を求め興奮した様子だ。


「あの、ロイ…ごめんねシリルの魔法でロイと国王の会話を聞いてしまったの。第六王子だって事も…」


「あぁ、聞いていたなら話が早いな。俺はそんなのになるつもりはない。二人と一緒に霊樹まで行くつもりだ、行かせてほしい」


『もちろんロイがそう願うのであれば私達は歓迎します!』


 ロイの話を聞きサーシャさんがローブから手を出すと、その上にはロイの荷物が乗せられていた。


「私は…現在ここで魔導師として働いていますが、国王様のロイさんを第六王子に迎えようという意見には賛成しかねます。もちろん、ロイさんが望んでいるのであれば素晴らしいことですが、望んでいない人に無理に押し付けるなどしてはいけないことだと思っています。

 それに霊樹の事もありますし、ぜひ旅を続けていただきたいと思ってこっそりと荷物をお持ちし外にお連れしようと考えていました。シリル様もご準備されていたようですので逆にお邪魔になってしまってすいません…!」


『とんでもないです。私は今魔力を抑えている身ですので、お助けいただいて感謝しています』


 ロイに荷物を渡すと、ポケットから一通の手紙を差し出した。


「これは、弟へ出そうと思っていた手紙です。私も魔物退治に駆り出されて忙しくてまだ返事を出せずにいたんです。なので、今ここでお伝えさせてください」


 サーシャさんは一度深呼吸をしてからゆっくりと話を続けてくれた。



「私が知る範囲での情報ですが、霊樹は今…枯れかけています。数千年生き続けた樹ですからいつかこの時が来るのは想像できていましたが、新しい芽もでないまま急速に枯れかけているので霊力が弱まり魔物が国内へ入ってきてしまっています。

 国王様も状況は把握しておられ兵力の増加に力を入れています。ロイさんを第六王子として迎えようとしたのも、他国の令嬢と結婚させて同盟国を増やしたいと考えているからです」


『霊樹が枯れかけて弱っている!?』


 シリルは驚いてよろめいた。まさか、霊樹が枯れかけているなんて考えていなかったんだろう。


『何故…今頃になって!!こんなに急に』


 もしもあと50年早かったら…きっとそう考えているんだろう。私も胸が痛む。


「じゃあ今の巫女はどうなるんだ!?」


「おそらく…推測ですが霊樹と最期を共にするのでは…と。国王様が先日霊樹の様子を見に視察に行かれた際に巫女の姿は見当たらなかったそうです」


 ロイは落胆の表情を浮かべ拳を強く握っていた。


「じゃあ、一刻も早く霊樹に向かって巫女の女の子を探さなくちゃ!?」

『サーシャさん、霊樹が枯れてしまったら…その後の結界は…?』


「結界は…私たち魔導師総出で魔法で結界を張れないか研究していますが、国全土となるととてもではないですが魔力が足りないのです」


 私が思っていた以上に問題は大きくなってしまっている。

 霊樹が枯れかけ結界が消滅しそうになっている。巫女の女の子も霊樹と共に消えてしまうかもしれない。


「今すぐにでも霊樹に向けて出発しよう!夜中でも構わない!魔物だって片っ端から片付けてやる!!」


『そうですね、今は考えるよりも体を動かしましょう!』


 ロイがバッグを背負いタガーナイフを装着するとサーシャさんが「お手伝いさせてください!」と声を上げた。




「私の魔法で、皆さんを霊樹までお連れします!」

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