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18. 鍵

 階段は10段ほどで終わりその先には6畳ほどの四角い空間が広がっていた。

 身長160センチの私が立ってギリギリくらいの高さだ。ロイは屈みながら部屋の奥へ移動する。

 部屋の中には石のテーブルが設置してありその上に木箱や鉄の箱、本などが並んでいる。


「この箱のどれかに鍵が入ってるの?」


『おそらく。どの箱に入っているかはわかりませんが国王様が生前大切にしていたものは全てここに収められています』


 ふと、視線を感じて左側の壁を見た。ロイが持つランプの灯りをそちらの壁に向けてもらうと壁際いっぱいに大きな絵画が立てかけられていた。


「これって・・・!」


 絵画には2人の男女が描かれていた。男性は大きな王冠を頭に乗せ赤く長いマントを着用している。隣の女性も小さいながらも宝石がたくさんついた冠を頭に乗せ白いドレスを着て男性の横て椅子に座っている。


『これはお2人のご婚礼をお祝いして描かれた肖像画ですね』


 これがマーガレット姫のお父さんとお母さん…大きく立派な絵画に見とれているとロイが何かに気が付いた。


「ハル、ちょっとこのランプ持って照らしててくれ」


 言いながらランプを手渡すと肖像画に手をかけて動かそうとする。額縁が立派なので絵画は相当重いのか引きずるようにして横にずらすと奥にもう1枚、隠されるようにして置いてある絵画が出てきた。


『姫様!』


 絵画を照らすとシリルが大きな声を出した。

 そこには国王と王妃の肖像画よりも半分ほどの大きさだが、1人の女性が描かれた肖像画が出てきた。


 髪の毛は黄金色に輝き目も鼻も唇も、全てが完璧に整っている美しい女性の絵だ。絵の中では花束を持ち静かに微笑んでいる。


「これがマーガレット姫!?」


「驚いたな・・・ハルは面影があるな」


「え!?」


 ロイは私を絵画の横に並ばせて交互に見比べている。こんな天使のような完璧な女性の面影があるなんて・・・光栄だけれど恐縮してしまう。

 まじまじと見てみるともし、私の髪の毛がマーガレット姫のような黄金色の髪の毛で、まつ毛がバサバサになって…こう、顔の彫りがもう少し深ければマーガレット姫に近づける・・・かも・・・しれない?

 なんて恐れ多いことを考えてしまった。しかし目の色は違えど目の形とこの二重の幅具合いは似ている。


『姫様の肖像画が国王様のお墓に入っているなんて思いもしていませんでした』


「マーガレット姫のお墓はどこにあるの?」


『残念ながら姫様のお墓はありません。海に荼毘されたと聞きました。私は、最後まで・・・姫様のお役に立てませんでした・・・』


 私には悲しそうな声を出すシリルを撫でてあげることしかできない。

 ロイはマーガレット姫の絵画に触れて何かに気づいたようだ。


「シリル、マーガレット姫には酷だがちょっと調べさせてもらうぞ」


 そういうと額縁に沿ってタガーナイフで絵画に切り目を入れ始めた。


「ロイ!?」


『ええっ!?』


 ロイは30センチほど縦に切れ目をいれるとそこから腕を入れ絵の裏面を探り始めた。


「やっぱり!これか!?」


 絵画の裏側に何かあったのか探った腕を引き抜くと手にはピンクゴールドの鍵が握られていた。


「それって、もしかして!」


「こんなところに隠してる鍵だ、これがきっと恋心の箱の鍵じゃないのか?」


 シリルに鍵を手渡すと確認するように促す。


『鍵に・・・マーガレット姫様のお名前と封印された日付が刻印されています。確かにこれです!ロイ、有難うございます!』


「伊達にトレジャーハンターしてないんでな」


 ロイがいなかったらひたすら箱を開けて中を確認していたことだろう。流石としか言えない!

 マーガレット姫の絵画につけてしまった傷は治せないけれど、絵画の位置を元の場所に戻して部屋を後にする。


「ねぇ、シリル・・・ここに置いて行ってもいいかしら?」


 私は自分服のポケットから旅の間持ち歩いていたあるものを取り出した。


『これは…』


「マーガレット姫が幽閉されていた塔に飾られてたサンキャッチャーよ。シリルがマーガレット姫は誰にも看取られずに亡くなった・・・って言っていたからいつかマーガレット姫の所縁のある場所に置いてあげたいなって思って、こっそり持ってきていたの。・・・怒る?」


 いくら生まれ変わる前の自分のものとは言えこの行為は泥棒だ。シリルの気分を害さないか心配になってしまった。


『怒るなんてとんでもありません!それは素晴らしいことです!ぜひ、国王様のお眠りになるこちらにマーガレット姫様の思い出の品を収めてください』


 どこに置こうか考えているとロイが国王様と王妃様の絵画の額縁につけたらいいんじゃないか?と提案してくれたので凹凸のある額縁の中央に掛ける。


 せめて、家族3人で仲良く・・・そんな思いを込めて王の墓を後にした。

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