第五章 反乱
やがて、女王様のもとを1人、また1人と菓子職人や建築士たちが辞めていきました。女王様は必死に止めましたが無駄でした。また家臣たちでさえも女王様のもとから去っていったのです。家臣たちは国民たちが同志も武器も集め、反乱の機会を今か今かと狙っていることを知っていました。そして、それを女王様に知らせた家臣は誰1人としていなかったのです。
女王様は家臣たちの裏切りにも、国民が自分を恨んでいることも全く知りませんでした。ただ幼いころ少年と交わした約束を守ることで頭がいっぱいだったのです。次々と女王様のもとから人が去っていくなか、たった1人女王様の傍を離れない男がいました。
男は女王様と同じくらいの年の新米の菓子職人でした。男は顔が良いわけでも、菓子職人としても一流の腕を持っているわけでもありませんでした。
「お前はなぜ」
ある日女王様は男に問いました。
「なぜ私のもとから離れない?私の進める無謀な計画に嫌気がささないのか」
男は答えました。
「嫌気などございません。それに私は何があっても女王様のもとを離れたりはしません。女王様と私の2人だけでもお菓子の城を完成させましょう」
男はそう答えると一礼して部屋をでていきました。女王様はひどく胸騒ぎがしました。男がなぜあのようなことを言ったのか分かりませんでしたし、何より男とは初めて会った気がしなかったのです。(……もしかして)
女王様の頭に1つの可能性が浮かびましたが、
そんなわけないだろうとすぐに打ち消してしまいました。