プロローグ
目の当たりにしているこの景色が、世間で取り沙汰され始めたのはいつからであろうか。少なくともこの世に命を授かった前からなのは、間違いないだろう。
しかしながらその素晴らしくも普遍的な環境は、何か影響を与えることはなく私を只々見守るだけなのだ。無論それは大学受験に失敗し、首を垂れながら帰路に就いたときも同じであった。携帯越しに両親の無念そうな声を聴こうが、一年の浪人生活を宣告されようが、何も変わらなかった。
私が今更そんなものに目を向けるはずはなく、今日も予備校へと歩みを進めているわけなのだが―
見るに堪えないとはこのことか。憧れの大学生が、青春の3年間を費やしても成ることが叶わなかったあの大学生が、何故私の前で奇行に勤しんでいるのか。普遍的とはなんであったのだ。そうだこの変態を排除しよう、そうすればいつも通りだ。お巡りさん、ここですよ。
「そこの君も参戦してくれないか?」
…激甚災害、天変地異が起きようともお断りだ。何が悲しくてこのような奇人変人に協力をしなければならないのか。
天よ、もし可能であればこいつを引き離して欲しい、若しくは合格通知を。
「鴨川戦争に参戦しようじゃないか!」
それが後に一年間を共に過ごすこととなる、四条の初めての出会いだった。