サンライズ
以前に書いた短編の再構成
単純な内容としては、アウスヴィという敵と戦うミュータントみたいなものです
ゴッドイーターみたいなもんですね
その征服者達の目的は、この星そのものだった。
太陽系の中で最も美しく、水と緑の第四惑星を狙う地球人以外の存在と言うのは人類はよくフィクションで作り出したものだ。ニホンがかつて作り出した国民的ヒーローの銀色の超人達は地球を狙う宇宙人から地球人を護る存在であるし、アメリカの生んだヒーローだって誰もが聞いて知っている存在だ。だが実際に彼らが存在し、攻めて来ればどうなるだろうか?現代兵器では歯が立たず、核兵器を征服者の戦艦に向けて核保有国は打ち上げた。
突然の侵略者はまるでフィクションから飛び出してきたようで、その装備の数々はまるで日本のサブカルチャー文化にありそうな装備を積んでいたという。その中でアメリカは核兵器すらマトモに効かない征服者の兵器に対する抵抗策として、ある提案をする。
「今こそニホンの巨大ロボットを実現させるべきではないか?」
巨大ロボットが侵略者と戦うシチュエーションはハリウッドで映画化されたことはあれど、元は日本がよく作っていた作品に見られる兆候だ。各国は耳を疑った、会議を取り仕切っていて、かつてはイギリスが、その前は中国が中心であった世界を牛耳っているのは他でもないアメリカである。2560年、まだ初夏のことで征服者達が攻撃をはじめて数ヶ月であった。
しかし、他に方法が見つからなかったので世界中が力を合わせて人類の技術の結晶といえる初号機となる『アメリカ・ファースト』を作り出した。カラーリングはアメリカの星条旗をモチーフとしており、主にニホン主導に光線剣とレーザー砲を装備させた。そのときは既に日本は自国のサブカルチャー文化に登場する装備の多くを実現させることが出来ていたし、脳波で操作することの出来るロボットの開発に成功していたのだ。
いよいよ、『アメリカ・ファースト』の初起動実験。東海岸沿いにて行われた模擬戦闘の相手は征服者、通称を『アウスヴィ(OutsiderVisitor、外からの訪問者)』の兵器をモチーフとしたものを戦わせた。日本の誇る銀色の巨人と同じ全長、そして体重をしているのは奇しくも世界中にとっての希望になることを示していたのかもしれない。しかし、現実はそんなに上手く行くことはなかった。『アメリカ・ファースト』を戦線に投入すると、まるでシチュエーションを再現するかのように“クリーチャー”とアウスヴィの電波を察知したところによると彼らの作った生体兵器の呼称らしいものを察知する。もちろん、アウスヴィ本来の呼び方があるのかもしれないが地球人にとって発音できる音としてはこれしかないのだと言う。
『アメリカ・ファースト』の初代パイロットに選ばれたのは、アメリカ軍から志願したマイケル・スミスと日本人で開発責任者でオペレーターの工藤正士郎だった。『アメリカ・ファースト』は突起の多い肉体をした“クリーチャー”を相手に善戦するが、それもエネルギー切れになる長期戦に持ち込まれるまでの話だ。様々なパターンに対応するべく、色んな装備を詰め込んだせいで制限時間が3分間とされてしまっていたせいもあるだろう。これは外付けにケーブルをつけることも叶わず、複座敷にしてようやく3分間ギリギリと言った有様である。
それから何体の『アメリカ・ファースト』の後継機となった、征服者を迎え撃つブラスター・シリーズが生み出されただろうか。日本が生み出した白兵戦特化の特殊金属製の刀を持った『ウルトラ・サムライ』、ヨーロッパ監修の元に作られた『EUドラゴン』など……。数多くのブラスターが生まれ、その度にパイロット共々破壊されるか、アウスヴィに捕獲されもした。
そして疲弊した人類の下に飛来する巨大隕石。
果たして、地球人類はこのまま全滅してしまうのだろうか?
※※※
そこは、とある研究室のようであった。
薬品の臭いが充満し、その薬の香りは様々な種類が混ざり合って何が何の薬品なのかが分からなくさせていて巨大な試験管の中には赤ん坊がチューブに繋がれて眠っている。白衣の男はボサボサな髪に黒縁眼鏡、さらにはまともに睡眠を取っていないのだろうか、隈が出来ている。
試験管にはパネルがつながれており、そのパネルを男性は操作している。
―――健康状態、オールグリーン。
―――C臓器との適合、異常無し。
「行けるぞ……、行けるぞ……!僕のエインへリアルを証明できる!はは……、はは……。昔見たヒーローをまさか僕が作り出すなんてな……」
男の名は工藤正士郎。
かろうじて『アメリカ・ファースト』の破壊の中で助かるが、マイケル・スミスのみを死なせてしまったせいで本国に帰国後の評判は著しくなかった。かつて工藤が子供の頃に見たヒーロー番組、仮面ライダーを髣髴とさせる工藤の最高傑作の新人類・『エインへリアル』。優秀な学者として学会で名を馳せ、ブラスターを作り出した際に得た名声はとっくの昔に失われ、同時に『エインへリアル』を生み出すのに必要だったC臓器についての論文を学会は笑い飛ばしたばかりか、工藤を負け組みと罵った。
工藤は絶望した。英雄思想の強いアメリカからも工藤を死神とバッシングを浴びせ、工藤に対して好評価をしていた周囲の人間は皆、掌を返したのである。結婚を約束した女性から別れを告げられ、工藤が最後に縋りつくことのできるものは『エインへリアル』しかなかった。時は2580年、西暦が変わったことも知らぬまま、ただただ『エインへリアル』に己の全てを託して研究へと没頭する。そして、試験管に眠るのは工藤が攫ってきた何人目に当たるか分からない母親から攫ってきた新生児、上手く行かなくては処分するが、今回で成功となるだろうと踏んでいるので問題は無い。今更失うものは無いのだ、と開き直った科学者は当初に抱いていた理想と人間性を捨て、狂い果てていた。
そして、
「おぎゃあ!おぎゃあ!」
「はは……、はは……!僕は作ったぞ!僕が生み出した人類の英雄となる存在!アウスヴィに打ち克つ無敵のヒーロー!もう誰も僕を笑わせてたまるものか。この最終戦争を終結させる新人類にして兵士、それがエインへリアル!」
愚かな科学者の元に生まれてしまった、兵士となる予定の赤ん坊は工藤の愛しの女性と同じ黄金色の瞳をしている。髪はC臓器と人間の臓器を取り替えており、その影響もあっておおよそ現実的ではない天然の青色だ。その髪色はアウスヴィと同じもの、そして宿す権能は人類のそれを大きく上回った強力なものとなるだろう。
目には目を、歯には歯を。
剣には銃を、歩兵には戦車を。
軍艦には戦闘機を、一撃必殺には核兵器を。
長い闘争の中で変化しゆく、人間が闘争に使う武器はやがて人類そのものを兵器として改造して行った。工藤の研究室の外はまさに荒廃し罅割れた鋼の大地、不毛の大地は作物が実らず、人工的に作られた食品が横行する。生きている有機生命体といえば未知の植物と異形のバケモノ、それが人類が初めて目にするエインへリアルが降り立つべき大地。
アウスヴィとの戦いにおいて人外に対し、忌避感を刻んだ人類。彼らは自分達が作り出した鉄人形を希望と称するだろう、しかし敵対する相手と同様な自分たちと同じような姿をしているのにもかかわらず、その内包する力のせいでアウスヴィに近しいものを持っているとしたら?
ヒトが生み出した、ヒトであってヒトでない存在。ユダヤ人の伝承に存在する、ユダヤ人が生み出したユダヤ人の守護者とでも言うべきゴーレムは胎児を意味するという。ならば、この北欧神話のオーディンの戦争に使われる私兵とも言うべき存在から名を付けられた者はどうなるだろう?作り出したのは神にあらず、人間である。
生まれたのは無機物にあらず、人間の業を背負って生まれたヒトである。崩壊した文明世界に舞い降りたエインへリアルは創造主によって、その最終戦争を終わらせる黄昏であるように望まれた。創造主は人類最高の頭脳を持っていたが、人類最低の精神を持っていた。信頼を置かれていた人間に、評価をくれた人間が覆したからであろうか?創造主はゆがんだのだろうか?否、そうではない。
それこそが工藤正士郎の本質、業を犯した人間は精神が幼すぎた。まるで後の戦いの皮肉を語るように名付けられた、その男児の赤ん坊の名は――『黄昏』。
決してそうならず、その血脈は脈々と続いて護るべき者とされた人類からも否定されることを知っているはずと言うのに。
工藤正士郎の歪んだ英雄への愛情を、呪いとして受けたのである。
はじまりのエインへリアル
夜明ともいえる日に生まれ、つけられたのはトワイライトというのはなんたる皮肉。