3番隊
「ねぇ!!みんなみんなみんな、みん――」
「だぁぁーっ、もう馬鹿。うっさい!!少しは静かにしろよ、ミクリ」
食堂の隅、にぎやかな中の唯一異色を放つ空間にいつも私達は集まっている。
正確には、私達がそこに集まっているからこそ、そこだけ雰囲気がおかしくなっているんだけど、そんなことは私達の誰も気にしない。今日も用事がある一人を除いて全員がそこにいた。
今、私に向かって怒鳴ってきたこの金髪オールバックで厳ついのもその一人。
「ごめんシンラ、でもそれどころじゃないんだって!聞いてよ」
「あ?」
不満そうにシンラは首を傾げたが、私が後ろに連れている子の存在に気付いて顔色が変わった。
すると乱暴に椅子から立ち上がって、丁度私がリンネとの壁になる位置まで近づいて来る。
そして貸した覚えも無いのに、勝手に人の肩を盾にしてリンネを威嚇し始めた。
「誰だ?そいつ」
「・・・・・・今日からウチに来るんだって」
「はぁ!?」
シンラの大げさな声が聞こえたのか、先にテーブルに着いて食事を取っていた他の仲間達も私達に視線を向け始めた。
「どうかしたんですか?」
そう尋ねて来たこの美人で中性的な顔立ちの彼はオウレンという。
「なんかこのガキが今日からウチの隊に来るって言うから・・・・・・」
「リンネね。それも教育係はナズナだってさ」
するとオウレンやシンラは目を見開く。そして目の隅でも、我関せずと食事を頬張っていた影が派手に吹き出すのが見えた。
彼女は激しく咳き込みながらも、何か言いたげな目でリンネを見る。
「なんで私が・・・・・・」
「いくらなんでもナズナはねぇだろ」
「それをシンラが言ったらお終いでしょうよ」
私がシンラに突っ込むと、リンネは笑顔でナズナの質問に答えた。
「局長が、ナズナさんは任務のし過ぎだと言っておられまして、少しペースを落とすついでに、とのことです。因みに伝言で『文句はサンザシに言え』らしいです」
(さっきも思ったけど、この子よく口が回る。それにご愁傷様です、隊長)
私が心の中でこれから大変な事になるであろう上司を憐れんでいる間、ナズナは呆れてリンネを見ていた。けど、少ししたら諦めたように大きなため息を一つ吐いて立ち上がった。
「・・・・・・えっと、リンネだっけ?文句じゃないけどサンザシの所に行こう。多分これからの指示があるはずだから」
「え?」
思いのほか素直に動くナズナに少し驚く。
「はい。分かりましたナズナさん」
自分を置いていくように先を歩くナズナの態度に戸惑う様子もなく、彼女は普段通りといったふうに、先輩の後を追って食堂を後にした。
二人の背中を見送った後、シンラが私を手招きする。
「何?」
「あいつ、ホントに何者だ?」
「だから、二番隊からウチに異動になった子だって」
するとシンラの眉間にくっきり皺が寄る。
「二番隊から来てあの様子じゃ変だろ」
「はぁ?何それ・・・・・・」
シンラの疑り深さは嫌というほど知って慣れているが、これから仲間になる子までそんなふうに疑われるのは正直不愉快だ。
「別に悪い子じゃなかったよ。3番隊を悪く思ってるふうでもなかったし」
「あ、確かに変ですね。それ」
「オウレンまで・・・・・・」
うんざりして呟く。でもオウレンは気にしない。自身が気にしたことを簡単に説明し始める
「だって、彼女ウチに来るんですよ?この隊は他の隊との関わりがほぼ皆無。そのため一部の者達が好き勝手に俺達の噂を流したりしているんです。だから他の者達は普通俺達を恐れたり煙たがったりするでしょう?でも、彼女にはそれが一切なかった」
「あ」
そういえばそうだった。私が三番隊の隊員って気付いてもそんな素振りはなかった。
「それどころか逆に・・・・・・なんか嬉しそうだったっけ」
独り言のように呟くと、シンラが不安そうな顔で言う。
「なぁ、あっさりナズナと行かせちまったけど・・・・・・大丈夫だよな?」
「・・・・・・」
そんなことを言われるとこっちまで不安になってくる。オウレンの方を向くと彼は青い顔をした私達と違い、存外普段通りだ。
彼は私達に苦笑して言った。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。リンネが危険な人物だったならそもそも局長がウチに来させるわけないですし。それに万が一局長の目を掻い潜ったとしても、ナズナは騙せません」
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