食堂での出会い
アマユキには、多様な設備が備えられた施設がそれぞれ隊の所有スペースに用意されている。
隊員一人一人に用意された自室はもちろん、トレーニングルームやシャワールーム、医務室にサロンなど。アマユキでの生活に困らないよう用意されている。
ただ会議室や図書館、そして食堂はアマユキ内にそれぞれ一か所しかないため、全ての隊がそこを共用で使う。
そのためこの食堂も生活リズムがバラバラな隊員達によって、24時間ごった返す。
もちろん今も例外ではなく、ある者は小競り合いを始め、ある者は人の間で身動きが取れなくなっていたりする。
ちなみに私はどちらでもない。
私の場合、周りの人が勝手に気づいて避けてくれるものだから、ここでその手の苦労したことがない。
まぁ、少し腹立たしいのは、それが好意から来ているものではないということだと思う。
(確かに私はここで一人だけ目立つ白衣を着ているし、髪の毛も銀色だし、所属している隊も変わり者だらけで有名な3番隊ですけど、こんなあからさまに避けられる言われはないでしょ・・・・・・)
心の中でぼやいてみたものの、実際はもうとっくに慣れているし、こんなこと考えても意味がないってことも当然気づいている。
(避けられるだけで実害はないし、勝手に道を開けてくれるから、実際楽なんだよね)
そんなことを考えていると、初めての実害が後ろから来た。
「いっつ・・・・・・」
突然後ろから何かが倒れてきて、私も巻き添えを食らって正面から床にこけてしまったのだ。幸い顔面は打たなかったが、代わりに両膝を床で強打した。
また2番隊からの嫌がらせかと思い睨みながら後ろを振り返ると、そこには予想とは大分印象が違う少女が一人だけしかいない。
「いたたたた・・・・・・」
こちらもさっきの私と大差ない状態だった。
今回は本当に2番隊の仕業ではないらしい。
ストレートの黒髪がとてもきれいで、顔も割と整った子だった。でも、彼女のスカイブルーの瞳からは、お淑やかというよりは溌剌とした感じがする。
「えっと、大丈夫?」
本当は私の方がそう尋ねられる側の気がしながらも、聞いてみる。
「え?あ、ご、ごめんなさい!私気づいて無くて・・・・・・」
「だろうね」
私が苦笑を浮かべると、彼女は気づいたように急いで立ち上がり、まだ床に座り込んだままの私に手を差し伸べてくれた。当然拒否はしない。
「ありがと、助かるよ」
「いえ、元は私の不注意ですから。人を探しながら歩いてたら流されてしまって」
彼女の発言に私は驚いてしまう。
「こんなところで人探ししてるの!?言っちゃ悪いけど、見つからないと思うよ?この中じゃ・・・・・・」
そう言って周りを見回してみる。毎度のことながら、全く人が減りそうにない。
「いえ、大丈夫です。その人特徴ありますから」
少女は特に困った様子もなく告げると、聞いてもいないのにその人物とやらの特徴を次々に並べていく。
(これは遠まわしに手伝えと言ってるの?少なくとも私にはそう聞こえるんだけど・・・・・・)
第一印象は少なからず当たっていたらしい。
特に急いでる訳でもないし、話くらいは聞いてあげよ・・・・・・。
「その人は大抵4,5人のグループで座っていて、そのグループは見つければ一瞬でそれだと分かるほど、雰囲気が違うそうなんです」
「へぇ」
(そんなグループあったっけ・・・・・・)
内心で思っても口には出さない。
「そのせいで、その人達の周りの席は一回り分誰も座らないんですって」
「・・・・・・あれ?」
少し違和感を感じた。
彼女の言うグループに心当たりはないはずなのに、彼女が言う光景は不思議なほど容易に多い浮かぶのだ。
まるで、しょっちゅう見ているかのように。
「それでその人、年中緑色のスプリングコートを着ている変わり者で――」
「ちょ、ちょっと待って。あなた、その人になんの用?それにその偏った情報は誰から聞いたの・・・・・・」
突然私の空気が変わったことに驚いたのだろう。少女は目を見開いてこちらを見ている。
でもそれはほんのわずかな時間で、少女の顔はまた元の人懐っこい笑顔に戻って言った。
「もしかしてあなた、3番隊の隊員さんですか?」
「ええ」
警戒を残したまま、頷く。
私達に取り入ろうと猫を被っている者なら大抵、こんな態度を取ると、顔が引きつったりするものだが、彼女にはそれがなかった。
それどころか、とても嬉しそうな顔をする。
「はは、そんなに警戒しなくてもかみついたりしませんよ。申し遅れました。私は最近2番隊から3番隊へ異動になったリンネと言います。今日からナズナさんという方の元でお世話になることになりました。ちなみにこの情報は全部局長からです」




