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children life  作者: マリヤ
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レグナの企み

アマユキはコラクナ中の誰もが知る組織だが、その基地が何処に有るのかは、政府とアマユキの構成員以外誰も知らない。


構成員には厳重に口止めをしているのは勿論のこと、基地からの出入りも慎重に行っている。


 それに何より、国民は誰も自分達が生活を営んでいる場所の真下にそんなものが存在しているとは、考えもしないからだ。


アマユキはコラクナの地下の広々したスペースに基地を構えており、女ボスのレグナを頂点として三つの隊に枝分かれしている。


一つ目の隊はジェラ率いる一番隊。


この隊の者の多くが接近戦を得意とする武器型のCLを扱い、大抵国内で事件が起こると、この隊が出て来る。


二つ目の隊はイルヤ率いる二番隊。


この隊の特徴は隊長のイルヤを含め女性が多いことだ。


元からアマユキには戦闘職ということで女性のメンバーが多くないが、二番隊にはその中のほぼ七割がいる。


仕事は主に一番隊の後方支援で遠距離戦が得意なCLやサポート向きのCLを持つ者達が集まっている。


最後に残った三番隊は主に、一番隊や二番隊の手に余ると判断された事件、もしくは公に出来ない政治に影響力を持つ者に干渉する重要な任務を請け負う。


 だが、そんな重要な任務を請け負うのは隊長含め、十代後半から二十代の若者、たったの六人だけだ。


そしてその六人はそれぞれ他の隊の者が誰にも負けないような能力を持っていると同時に、全員癖が強くアマユキの中でも変わり種の隊だった。


彼らは全員がそれぞれ複雑な事情を抱えており、中には裏社会に詳しい者もいる。


そんな彼らだからこそ、わざわざ最も危険な部類の任務を引き受けられると言える。


 そして今、三番隊の隊長であるサンザシは、アマユキの長であるレグナの下へ報告に訪れていた。


「――ということでナズナからの報告は以上です、が……」


「なんだ?」


 歯切れの悪さが気になったのか、レグナの整った顔がこちらに向いた。


「…それが……罪人を確保しようとしたときにそいつが見苦しく命乞いをしてナズナをキレさせたらしくて……」


「キレた?……ナズナがか?」


「はい、なんでも殺されると思ったらしくて、確か…『自分には子どもがいる』だのと、そんな分かりやす過ぎる嘘を吐いたみたいで――」


 途端、レグナは盛大に吹いた。そしてだんだん背中を丸め、椅子の陰にすっぽりと収まるようにして、腹を抱えてケタケタと笑った。


そして――


「そいつ馬鹿だな!もしそれが事実だとしてもそれを言って、はいそうですかと済ます訳無いじゃないか!」


 それには同意する。


その罪人は本当に馬鹿だ。


 しかし今の俺は、せっかくの整った顔を台無しにして大笑いするレグナの方に呆れて、小さくため息をついた。


「ええ、それでナズナに軽く死の恐怖を与えられたみたいです。おかげで取り調べがなかなか終わりませんよ……」


 取り調べの時、ナズナの名が出る度に顔面蒼白になって謝り続けるは哀れな男の姿が眼に浮かぶ。


「まぁ取り調べは本来、私達の仕事じゃない。そのまま上に犯人ごと押し付けてしまいな」


 俺は苦笑して頷いた。


「わかりました。では、失礼します」


「あ、ちょっと待て」


 部屋を出て行こうとした途端、レグナの声がそれを遮った。振り向くと、ニヤリと笑うレグナが椅子から立ち上がり、靴の踵をコツコツと鳴らして近づいて来ていた。

「どうかしましたか?」

「ああ、一つ言い忘れていた、三番隊に一人異動させることになったんだ」

「……どんな奴なんです?」


喜びと驚きとその他の不安でつい反応が遅れてしまった。


 三番隊に新しい顔が増えるのは、随分と久しぶりのことだ。


三番隊に最後に人が増えたのが今から九年も前で、八歳と九歳の少年少女が一人ずつ入隊した。


その二人も今はもう立派に成長して三番隊の重要なメンバーとして活躍している。


「リンネという少女だ。歳は十七。性格も良いし実力も有るんだが、アリアに問題が有ってな……」


「アリアに?」


「ああ、妬みや嫉妬、というか敵意全般を受付づ、力がそういう奴らにまで及ぶんだ……一種の防衛本能だろう。それに彼女のアリアは言霊という防ぎようのないものということもあって、元いた二番隊の、主に女性陣への被害がすごいんだ…」


二番隊と聞いて、サンザシは無性に納得がいった。

性格良し、実力有りとくれば当然、周りからの歪んだ感情がついてまわるだろう。


しかも女性メンバーの多い二番隊なら尚更。


「確かにウチの隊には馬鹿な奴らはいませんが……他にやたら警戒心の強い奴もいますし……」


「まぁ、そこは任務に付ける相手を調節してくれ……ナズナあたりは大丈夫なんじゃないか?」


「ナズナですか?また何で……」


レグナがこういう場面でナズナの名を上げるのは、サンザシからしたら意外なことだった。


ナズナ自身、本来は隊長を任せられるぐらいの度量と実力は持ち合わせているし、仲間からの信頼も厚い。


だが彼女は行動を制限されることを嫌い、ここ数年はアマユキから呼び出しがかからない限り、自由気ままに単独任務を次々とこなして来た。


それにかなりのお人好しで、任務に出たついでに一般人に頼まれた依頼まで引き受けてきたことも一回や二回ではない。


現在の状態を考えれば考える程、ナズナを同行者として新人のリンネに付けるには向いていなかった。


「本人の要望なんだ、それも入隊時からの……」


「入隊時からナズナを?」


「ああ……入隊時にいきなり三番隊に配属してくれと言ってきたときは驚いたが、どういう訳かナズナと知り合いだったらしい。まぁ一度目は却下したが、こうなってしまったら仕方ない。そういうことで頼んだ」


頼むも何も、上司に頭まで下げられてしまっては断りようがない。


「はぁ……わかりました。ナズナを説得しておけば良いんですよね?で、いつ来るんです?そのリンネって子は……」


「3日の午後からだ」


「へぇー、3日の午後……」


 サンザシは繰り返し、ハッとレグナを見た。


「……それって今日ですよね?」


「ああ、そうだ。もう向かっている頃だろうな」


レグナはしれっといってのけた。


やはり訂正。この女性(ひと)は始めから俺にナズナを説得させる気はなかったらしい。


相手が部下だろうが上司だろうが、自分の決めたことは突き通す。


それがこの人の行動理念であることを俺はすっかり忘れてしまっていた。


「……つまり、あなたは俺にナズナを宥め、なおかつリンネとの任務に送り出させたいんですね?」


「流石に理解が早くて助かる。……仕方ないだろう、お前ぐらいしかナズナに言うことを聞かせられる奴がいないんだから……お前ならナズナもなんだかんだ言っても従うだろう?」


俺は今日一番のため息をついて頷いた。


「あーもう、わかりましたよ!やれば良いんでしょ、やれば!」


俺は半分自棄になって怒鳴り、さっさと退室した。

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