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【8】等価交換は平等です

 ウサキチが茂みに隠れたのを確認してその場を後にした。

 目的地に近づくにつれて、騒ぎになっているのが分かる。

 何か所かに煙も上がっているようだ。


「ゴロはうまくやってますね」


 しめしめと人気のない野営の隅っこにあったパーツエイドの乗り物にコッソリ入ろうとする。


「あ、カギが閉まってる」


 開かなかった。ロックが掛かっているようだ。

 大事なものが入っているなら当然か。

 ションボリしながら近くの明かりが無いテントに忍び込み、暗い中を確認しようと目を凝らす。

 木箱や袋が山積みになっているのが見えてきた。


「お、倉庫のようです。幸先がいい」


 探っていくと袋にリンゴが入っていた。


「3つくらい持っていきましょう。後は武器があれば…お」


 小刀らしきものを2本見つけた。

 小さいが、無いよりましだろう。


「切れ味は…え?」


 鞘から抜いてみる。

 と、鞘より数倍長い刀身が出てきた。

 地味に淡く光っている。


「これはもしやビーム…いや、触れるし音もしませんね。パーツエイドでしょうか」


 光っている以外は、普通の剣と見た目は変わらない。

 2本目も抜いてみたが、全く同じだった。


「よし、貰っていこう」


 一つはクロがくれた袋の中に、もう一つはベルトに目立たない様にさした。

 鞘にしまえば小さいし、上の服をかぶせれば一見分からない。


「あ、もう一本剣が…これは普通ですね」


 何の変哲もない、一本の剣だった。


「他は…と」


 誰かが近づいてくる足音と気配がした。

 慌てて、その剣を使ってテントを裂き、入り口とは反対側から脱出する。

 出てすぐに誰かが入ってくる音がする。危なかった。


 次はどこにしようか、と周りを見て気づく。

 ほぼ火が消えている。叫び声や怒鳴り声も少ない。混乱が治まってきつつあるようだ。

 予想したよりずっと早かった。

 悪党どもめ、意外にやるな。

 炎が消えたおかげで野営地は暗い。こっそり逃げるには大丈夫そうだが、これ以上ウロウロしてたら見つかってしまうだろう。


「よし、帰ろう」


 貰える物は頂き、僕の用事は済んだ。

 ウサキチには悪いが、これ以上は何をやっても掴まった二人を助けれる気がしない。

 薄情かもしれないが仕方ない。ここの人達を倒すほどの力は僕に無いのだから。


「さらば、まだ見ぬスレイドさんとフィーツさん。あわよくば別の誰かに助けられますように」


 何となく手を合わせて合掌した後、早足で森の中に戻ろうとする。

 が、前方に人がいるのが見えた。

 暗闇でまだ僕が部外者だと気づいていないようだが、このまま近づけばバレる。

 Uターンして、別の方向から逃げようとしたがそちらからも人影が見えた。

 まずい。このままでは見つかってしまう。


「どこか隠れる場所は…お」


 例の乗り物の一つのドアが開きっぱなしな事に気づく。

 丁度いい、あそこに入って人が通り過ぎるまで待とう。

 急ぐあまりに中は確認はせず、内側からドアを閉めた。。


「ハァ…っ」


 ドアにもたれ掛り、ほっと胸をなでおろす。

 中を確認しようと顔を上げると、目の前の男と目が合った。

 捕まる、と思ったがすぐ杞憂だと気づく。


「こんばんは。慌ててる様子だけど、大丈夫かい?」

「いや、縛られている人に大丈夫かどうか聞かれても」


 ピンチなのは貴方の方でしょ、と言いたくなる。

 白髪に、のほほんとした感じ。明かりが小さくて目の色まで見えないが

 鎖で縛られているのを見るとウサキチが言ったフィーツに間違いないだろう。

 たまたま隠れる為に入った乗り物にいるとは、運がいいのか悪いのか。

 …このまま乗り物ごとお持ち帰りできないかな。

 運転席辺りを確認するが、やっぱり操縦方法がわからない。

 内部が明るいからエンジンはついてるみたいだけど。


「この乗り物を操縦できたりしますか?」

 

 フィーツへ向き直って聞いてみる。

 

「無理だよ、やったことない」

 

 首を横に振られた。

 運転免許無しか。諦めるしかなさどうだ。

 乗り物入手は今度にしよう。


サクッとフィーツだけ解放して帰るか。

鎖を解こうとフィーツに近づいたが、南京錠の鍵がついていた。素手では外せなさそうだ。

鍵はどこだろうと見渡して、足元に置かれた物に気づく。


「こんな所に食べ物が」

「あぁ、それね。可愛い女の子が持ってきてくれたよ。縛られてて食べれないけど」


 縛ってある人間の前に美味しそうなスープとパンが乗ったトレイ。


「とてつもない嫌がらせですね」


けしからん。食べ物の恨みほど恐ろしい物は無いのに。


「すぐ片付けますね」

「え? あ、うん」


 モグモグと食べ始めた僕を見て、フィーツは苦笑している。


「スープは温かいうちに食べないと美味しくありません」

「そうだね」


 程よい温度のスープを飲んでいく。

 薄味だが、あっさりして美味しい。

 さっきの少女が作ったのか。料理上手だ。


「お腹空いてたんだね」

「お肉だけじゃ、食べた気にならなかったんです」

「へぇ」


 目の前で美味しそうに食べるているが

 フィーツは怒ったりなどせず、穏やかな表情で僕を見ていた。

 けど、その頬には殴られたような痣があった。服も所々汚れている。

 こんなに酷い目にあって、落ち着いていられるとは…菩薩様の生まれ変わりかもしれない。


 パンを頬張りながら、周りを確認する。

 薄暗くてよく見えないが、乗り物の後方は檻になっているようだ。

 音はしないので、誰も居ないのか。

 スレイドとやらは別の場所かもしれない。


「食べ終わったらでいいんだけど、あそこの鍵を取ってくれないかな?」


 壁際を見ながら、フィーツが言った。

 近づいてみると、小さな鍵束が掛けられていた。

 鎖につけられた南京錠の鍵なのだろう。

 手に取って元の場所に戻る。


「ありがとう、助かったよ」

「何かと交換してくれますか」

「あぁ。ポケットに飴玉があるからどうぞ」


 ちょっと失礼、とポケットを探る。

 丸い飴玉が入った包みが3つ出てきた。

 全部取り出して、変わりに鍵束を入れる。


「あぁー…ごめんね。言い方が悪かった。できれば、ポケットにじゃなくて」

「ちゃんと交換しました」

「そうだね。けど、ほら、飴玉は三つだったしお願いだから」

「あ、そうですね」


 言われてゴソゴソとポケットから鍵束を取り出す。

 フィーツはホッと息を吐いた。


「飴玉三つなので、鍵三つと交換ですね」


 束から鍵を三つ外してポケットに戻した。


「……」


 どうしたらいいのか分からない顔になっている。

 静かになったので黙々とパンを食べ、スープも飲み干す。

 さて、そろそろ帰らないと逃げれなくなってしまう。


「んじゃ、冗談は終わりにしましょう」

「あ、冗談だったんだね。良かった」


 アハハ、と乾いた笑いが響いた。

 僕もつられて笑うが、フィーツさんは怒ってもいいと思うの。


「今、カギを外しますね」


 ポケットの鍵も取り出して、南京錠を外そうとする。

 どの鍵だろう。


「たしか、一番小さいカギだよ。見てたか―…!」


 急に言葉が途切れて、どうしたのかと顔を上げた瞬間、ドアが勢いよく開かれた。


書き溜めていたのを見直し中、次の投稿は未定です。


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