愛玩動物
ペットのチェスを抱いたまま喫茶店に入りカフェモカを頼んだ。良い香りを楽しんだ後、冷めるのを待つため文庫本「チェス」をテーブルに置いたまま手洗いに行ったのだが、これが失敗だった。
戻ってみると、テーブルに置いたペットのしおりがカフェモカに伸びているではないか。ページを開くと中はすでに真っ黒で、文庫本が昨日覚えた小説も読めない。微かに、チョコレートの香りがする。初恋に思うものを感じたが、当然、読書家としては物足りない。作者のイトでもないだろう。
「チェス〜」
ため息まじりにとがめると、ペットの文庫本は一瞬しおりとした。こういうところはとても可愛らしいよなぁ。
おしまい
ふらっと、瀨川です。
他サイトのタイトル企画に出展した旧作品です。瀨川潮♭名義でした。やや改稿しています。
これならペットを抱っこしたままでも入店拒否されないのです!